ゆっくりと 堕ちて 墜ちて
少女だった私にさよならを告げて。
16歳 予感がした時は すでに貴方へ堕ちていた
夢中で背中を追いかけた
挨拶をひとつするたびに 目が合うたびに
心臓は破裂と再生を繰り返して
声を掛けられただけで 手がほんの少し触れただけで
もっと ずっと 好きになる
貴方の瞳に私だけが映った瞬間 私は舞い上がり
ついでに神様にありがとうのキスをする
神様なら ノーカウントでしょ?
18歳 世界から祝福されたはずの恋は 墜ちていく
ぐっと近くなった貴方に ずっと夢見ていた貴方に
膨れ上がる純情を持て余して
貴方の視線に 貴方の触れる手に 熱が灯るたびに
思春期の潔癖とほんの少しの好奇心の狭間で揺られて
追いつけない私に ゆっくりでいいよ
そう言った貴方を 否定して それは簡単に壊れた
私が砕いたはずなのに 性懲りもなくその欠片をかき集めるのも私だった
大切に仕舞いこんだ貴方に
夏になれば激情に駆られ
冬になれば神聖な祈りを捧げるように
私の中で貴方は巡り 季節が巡る
誰かの手に縋り付いてしまえば
誰かの温かさを求めれば
貴方への想いが嘘になってしまう
私の恋はあんなにも綺麗だったのに
どうして?
夢から醒めたように 引き出しを開けてみれば
宝物だったはずの貴方はすっかり色を失い
思い出だけでは生きていけないのだと知った
頑なだった私は やがて優しい繭に守られ さなぎとなり
貴方が知っている少女の殻を脱ぎ捨てて
愛でられながら ゆっくりと 羽をひろげ
いま 蝶になる




