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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

VR長時間プレイで彼女が出してくれません。

ゾンビゲーム好きな人って一定数居ますよね?

目玉がダラリと垂れているゾンビ。

頭の中が縦半分見えているゾンビ。

俺に飛びかかってくるゾンビ。


たくさんのゾンビをただただ早く倒した。

15分間のエンディングに会いたいから。


+++++


近年、仮想現実のゲームばかりになっている。

裸でVRカプセルマシンに入ると、そこではファンタジーな冒険も美女との恋愛も思うがまま。

それは広まるだろうというものだ。


ちなみに、VRマシンに入ると全てがマシンに管理される。

排泄や食事や筋肉の衰え等の懸念事項はなくなった。

注射での栄養を取れるし、排泄はしてる感じがしないが確かにして排出されてるらしい。

筋肉はマシンの中で動いているからオーケーだ。


あっ、動かないゲームはマシンが、プレイヤーに分からないように運動させてるらしい。


そして、どうしてこんな事を考えているかと言うと。



「いつ出してもらえるんだろう」

「ギシュアァァァ」


パン!!


襲ってくるゾンビを打ち倒した。

のんきに独り言も言えやしない。


お気に入りのゲーム、『ダークフルゾンビネス』に閉じこめられた。

犯人は彼女だ。


絶え間なく襲ってくるゾンビを次々に打ちながら考える。


ゲームをしてる俺が嫌いだった彼女。


「ゲームと私、どっちが大事なの?」


って言われた。


もちろん、ゲー………彼女だ。

でなきゃ同棲とかしない。

タレ目がちの顔が、にこーって笑うと周りが花が咲いたみたいに可愛い。

手を繋いで買い物行くと、手が柔らかくて落ちつくような落ちつかないような。

とにかく、好きって事だよ。


そんな考えの合間にも、手が腐って骨が見えてるゾンビを打つ。


このゲームはゾンビだけしかいない。

人形ゾンビ、ネズミや犬のゾンビ、昆虫のゾンビ。

動いたのが視界に見えた瞬間に打つのがコツだ。



まあ、恐怖系のゲームは連続プレイ時間が決まっている。

そう、だからこそ1日きっちり2時間しかやっていない。夕飯後に2時間しかやってないから、大丈夫だと思ったんだけど。

それを彼女に言ったら、「はぁ?!」って言って黙ったっけ。



ついさっきは珍しく、


「ゲームしなよ。いつもゲーム嫌がってごめんね」


って、押し込むようにVRマシンに入れられた。

俺の好きな笑顔でにこーって。

てっきり考えを彼女の方が改めてくれたと思ったのに。


……そろそろ2時間は過ぎたと思うのだけれど。

このゲーム時計表示がないから分からない。


そんな事を考えてたら、ミスをしてゲームオーバーになり最初に戻った。

知能ゾンビが煙幕を投げてくる所は気を抜いちゃダメだ。


+++++


多分、2時間どころか1日以上経ったと思う。

細切れながらもゲームの中で寝た。

ゾンビの攻撃で体にダメージ通知の衝撃を味わいながらもだ。

絶え間なくゾンビの叫び声とダメージの衝撃が来るからよく眠れたとは言えない。


そろそろVRマシンから直接警察に通報が入るはずだ。

長時間の違法プレイとプレイヤーの不調は通報対象だから。

だから大丈夫。

通報しないVRマシンはなかなか手に入らない。

彼女が手に入れられるわけがない。

ゲーム嫌いな彼女が、そんなレアなVRマシンを手に入れられる訳がないんだ。



だけど、そのはずだけど。

俺は何だか嫌な予感を感じていた。


ちなみに、この考えの間にも警察官がゾンビになったヤツを打っている。

警棒と拳銃で攻撃してくる。

攻撃をかわしつつハンドガンで応戦する。


無限の弾数があるハンドガンは撃ちまくれるからありがたい。


ハンドガンを取り落としたら、敵の警棒や拳銃を奪って応戦する。

結構動きが俊敏で厄介だ。

何でゲームのゾンビって動きが早いんだろう。

筋肉のリミットが外れているからだろうか。


もうかれこれこのゲームは2周した。


もうゾンビの顔は飽きてきた。

ゾンビのグチャグチャな顔ばかりだ。

1日2時間だから面白かったんだ。


彼女の顔が見たい。

彼女の気が済んで出してもらったら、うんと彼女に優しくしよう。

もうゲームはやらないよ、って言おう。

ふふ、そうしたらきっと俺の好きな笑顔になるに違いない。


+++++


白い空間の中で黒文字が流れる。

ゾンビの叫び声は聞こえない。


開発者の名前や監督や音楽スタッフ等の名前が流れていく。

目の前をサラサラと明朝体が流れていく。


エンディングロールだ。

10〜8時間のプレイ後に流れる。


何回もみた。

美しい白と黒の世界。

俺は落ち着いて深呼吸をする。


この何もないエンディングロールだけが救いだ。

長い事で有名なエンディングロールだ。


15分間も白と黒の世界が続くから、前ならすぐにスキップスイッチを押していた。

今はずっとここにいたいのに、もうすぐ終わる。

かれこれ2〜3日、ゾンビゲームをやっている。


エンディングロールが終わって、またスタート位置に強制的に戻される。


ああ、またゾンビの群れが襲ってくる。


「ギジュアグァアア」


頭蓋骨が露出してるゾンビを、ヘッドショットで一回で倒した。

振り向きざまに飛びかかってきた犬ゾンビを横薙ぎに銃身で殴って倒す。


途中、ハンドガンを取り落とすイベントがあって棒や民家の包丁で応戦する時が面倒だ。

ハンドガンを取り落とすイベントは時々あって厄介だ。


何でゾンビの顔ばかり、何でゾンビの声ばかり。

ここに入れた人が憎い憎い憎い。

彼女のやつ、ここを出たら殴ってやる。


+++++


ここに入って二週間が経った。

自分は意外と冷静で心も壊れてない。


動くものをすぐに倒して、エンディングロールで休憩を事務的に繰り返している。

後は、戦いながら何秒かの隙間で眠る方法も編み出した。

ゾンビも顔がグチャグチャなのも慣れた。


彼女にも憎しみは湧いてこない。


考えたけど、1日に2時間も夕食後にゲームしてたのはまずかった。

出してもらったら謝ろう。

もっと2人の時間を大切にしよう。

夜景の綺麗なレストランに連れてってプロポーズしよう。

愛してる。

結婚してくれ、って言おう。

給料3ヶ月分のダイヤモンドの指輪も買おう。


俺はその事を考えて薄く微笑んでいた。


ただただもう手は反射でゾンビを倒し続けていた。


+++++


一ヶ月が経った。


ゲームが故障したのかエンディングロールがなくなった。

無限のハンドガンがなくなった。

銃関係はどれも弾数に限りがある。


後は排泄のイベントが増えた。

物陰でテンポよく済ませている。


食事もしないと空腹通知がして、実際に腹が減る。


ゲームの難易度は下がったが。

ゾンビが皆、動きが甘くなって飛びかかって来ない。

群れを倒すと結構隙間時間も長い。


ああ、後は警察官ゾンビがやたら多い。

倒した後、服装をちらっと見ると皆パリッとした警察官の制服だ。


後、自衛隊ゾンビもいる。

ヘッドショットで倒してるから顔はグチャグチャだ。

ゾンビは頭が弱点だからね。

体は皆腐ってない。

新鮮なゾンビだな。


皆、何故か動きが遅い。

故障だな。


煙幕やショットガン、マシンガンを打ってくるが照準の合わせが甘くて避けられる。


あっ、ちなみに市街地ステージに来ると、何故か銃火器を使って来ない事を発見した。

意味が分からない。

難易度が優し過ぎる。


それにしても、エンディングロールが来ないままだ。


うーん、彼女はいつゲームから出してくれるのかなぁ。

結婚したいのに。


ああそうそう、何日か前に彼女の声を出すゾンビがいた。

動いた瞬間に、近くにあった果物ナイフで倒したから大丈夫だった。

危なかった。

人の記憶から大切なものを読み込んで騙してくる系の知能ゾンビだったんだな。

ゾンビゲームではそういうエグいイベントは結構ある。


いつまでこのゲーム続くのかなぁ。

彼女出してくれないかなぁ。

お読み頂き、誠にありがとうございます。

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