【BK】
国は正式に【BK商品】を推奨していく為、環境整備と法的整備と意識改革を、
着々と進めていた。
ある程度は事前に、『才覚首相』が正式な発表前から、自ら水面下で動き回り、議論を何年も重ね、普及に向けた環境整備や法的整備は、既に推し進めていた。
『あの年』
国の全てが今までとは一変して、彼の名の下に、新しく創り変えられていき
次々と新しい法律が公布され施行され出して
国民の需要と供給に応えられるような大量に生産できる工場を各地へ建設した。
こうして安定的・安価・手軽に購入できようになり、より一層と認知度が一気に高まる。
国からは国民へと、専用アプリが入った携帯端末を支給し出して
『国の法律』も国民ならば、誰でも何処でも自由に確認できるよう開示され
そして中には、【BK専用のアプリ】も入っており
自分の姿を、ゲームの『アバターみたく』表示され、その他にも様々な便利機能やアプリが搭載され、詰め込まれていた。
技術開発をした『才覚首相』は
独自開発した技術と商品で起業し、企業を国営化としてから
首相と社長に、国営の技術研究所長の業務を兼任した。
次第に環境が整うと
正式に商品として国が推奨する事で、国民に、彼の思想と商品が普及していた。
【BK】には
マイナンバー同様、一つ一つへと特殊な技術で「製造番号」が刻印されている事でその所有者情報は、国により完全に情報統制がなされ、国民はある程度、管理され出した。
今や日本国民の殆どが、装着し始めた【BK】は
iPS細胞の研究が進み、各個人の皮膚細胞からiPS細胞と遺伝子情報を取り出す技術その細胞を培養する技術に、遺伝子操作技術を組み合わせる事で、独自の開発から商品化が実現して完成した。
いわゆる『人工皮膚のような人の皮』であり、自らの身体を覆う様に「被る事」で装着する【完全個人対応の専用商品】である。
『才覚首相』の国営企業が
一括して管理・開発・研究・販売・保障までを担当しており
『装着希望者』は、自らの細胞の一部を
企業が開発した市販の簡易キット又は、掛かりつけの病院で採取し
どちらの場合でも、専用の証明書を同封した後、近くの国営工場まで送付するよう指示して、皮膚細胞と遺伝子情報の提供を求めていた。
送られてきた皮膚細胞から、iPS細胞を作製し培養して、その過程で遺伝子情報を取り出し、遺伝子操作を施してから商品化する。
首相の就任後以降、度々テレビや携帯端末の画面上から
「この商品の売りは、自分の細胞からできたモノである為に、副作用や拒絶反応が起こりにくく、年齢・性別を問わず誰でも安心・安全に活用できる点です。」と、国営の普及CM・商品説明の放送が流れて
「ですが、この点につきまして
本商品は各個人専用となります故に、絶対他人の【BK】を装着しないで下さい。
複雑な技術を用いて操作を施している分
命に関わる重大な危機が起こり得る可能性が、非常に高いです。」との使用上の注意喚起を呼びかけ
「これは、独自に行った事前研究調査の結果から言えます。
しかし
きちんと用法・要領を理解した上で正しく利用すれば、とても便利な商品です。」
首相は
警告をしつつも、安全であると断言し、国民へ自ら語っていた。
そして
首相は国民へと普及する為、国の政策の一環として
「自らの意思で装着を望むのならば、国民には『装着の自由』があります。
原則として、自己判断の自己責任ではありますが
国が装着の後押しとして
希望者へと無償で安全性が高く丈夫な簡易版『BK』を試供品として配布します。
商品への絶対的な自信があるので、これは自信の現れであります。」と希望者が実際の商品を手にして、装着する機会を設けていた。
一度手にさえすれば
その後は次第に商品へ魅了され、自ら求めて更に先へと手を伸ばす確信があった。
すると
誰でも人体に何も影響がなく安心・安全に理想の姿を手に入れられるようになり
人々は
自らが少なからず抱いていた「コンプレックス」を解消できる夢の商品の虜となる
しかしその裏側では
企業は、更なる商品の開発・研究・品質向上等を進めていく為
【BK】を装着している国民から、密かに、実験データとして情報を収集し解析し、今後の研究開発へと、役立てていた。
国民は、国にとって、「実験動物」のような扱いとなっていた。
企業が開発する【BK商品】は、年々技術が向上し、後にシリーズ化された。
年々と基本性能が向上して
耐久性は勿論の事、装着者の配慮、身体へのフィット性や伸縮性から身体機能補助防水・防火・防弾・防刃・防塵・防寒・通気性と、あらゆる面の性能が追加され、装着者の命を守る『防護服』のような機能まで備えて、あらゆるクオリティーが、向上していた。
・オプションの機能を追加する人
・毎年新しいモノへ買い換える人
・気分で見た目を変える人が増えて
いつの間にか見た目の作り変えも含め、手軽に楽しめるファッションと化して
国民はより安全で、より快適で、より安定して、より安価なモノを求め、企業はなるべく、その期待に沿って応えられるよう努力してきた。
最初は一部の限られた人間から、普及し始めたが
徐々に国民全員へと広まり出すと、装着には年齢制限が設けられた。
子どもには両親の許可が必要として、許可を得てから装着が認められていた。
施行された『BK商品に関する法律【BK保護法】』の中には
『装着者の過去の姿の話や詮索はしない。
他者に本当の姿を見せない、本当の姿を見ない。』との法律が生まれ、その法を犯した違反者には、重い刑罰が科せられた。
場合によっては、商品とその使用権を強制的に剥奪された。
更に
子どもの頃の極端な法律として
「産まれたばかりの子どもは、産まれた時の姿を身内にしか見せてはいけない。」との原則があった。
ただし
医療に携わる従事者は例外とされていたが
その分医療従事者の秘密性が高まって、監視を強化されていたけれど
給与は他の職種に比べて格段に高く、国の方針からあらゆる技術職の給与は
他職種に比べて遥かに賃金が高く、保障が手厚かった。
しかし
技術が必要である為、規制や試験など就くのも就いた後も何かと苦労が多かった。
【BK】装着後は
皆今までと違い、まるで人が変わったように、明るくなって
今までの過去の姿に関する事を全て捨て去り、新しい人生を歩みだして謳歌した。
【BK保護法】が
爆発的な普及の後押しともなり全国民へと商品は浸透して、今では生活の必需品となっていた。
装着者から見れば
手軽に仮装やコスプレ感覚を楽しんでいるような『華やかな世界』に見えていた。
数年経った今の世界で、【BK】の販売は、まだ国内だけであった。
【BK】が社会的に普及し始めた事で、容姿による性別の判断が付かなくなり、人は望んだ姿を手に入れられ、変身願望が容易に叶い、誰にでもなれるようになった。
すると
天然モノと【BK】装着者が混在する
そんな『理想』を『現実』にして、表面上を偽りに包まれた世の中で
その偽りの姿が、いつの間に本当の姿とされる【楽園の世界】となっていた。
世の中へ普及するにつれて、日常生活に定着し
自分を外の世界から護ってくれるような、身体の一部として認識され、今では必要不可欠となり、依存していく者が増え始め、日常生活の中において、既に無くてはならない存在となっていた。
【BK】が国民に普及し始めてから、一部の噂として
長年【BK】を装着し続けると、じわじわと皮膚から侵食していき、いつしか皮膚と結合して体組織を改変し、『偽りの姿が本当の身体』になると憶測が流れていたが国はこの件に関しては触れず、何もコメントせずに【無言の沈黙】を貫いた。
国民の変化は生活だけではなく、外見が変わった事によって
人間に対する『国民の意識』が変わり始めていた。
外見を磨く事が減り、代わって内面を磨こうとする風潮が高まり出していた。
国内に限ってだったが
社会的に消え始めた職業やモノ、逆に一般的となり始めた職業やモノが増えて、
望んだ肉体が手に入った為、望みのままに綺麗な姿のまま、自らの人生に終わりを迎えられた。
ただし基本は、あくまでも【皮】に過ぎない為
性能の限度を超えた極度の外傷には『消失』する。
人々は『カゴ』を失い、隠された『ホンシン』をさらけ出す。
しかし日常的な生活を送る上で、まずそのような場面に出くわす事は無い為、
ほぼ問題はなかった。
時代だけではなく
人類もまた『転換期』に差し掛かり、新たな次元へと進みだす。
販売から数年が過ぎた世界の『社会の裏側・楽園世界のすぐ裏』では
様々な陰謀渦が巻く、表裏一体の世界へ誘おうと
あくなき欲望や刺激を求める者達が、国内の某所で「あるゲーム」を行っていた。
それこそが『BKゲーム』。
そして
今まさに、このゲームへ突如として巻き込まれた男女が居た。