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完結編

完結編です。

よろしくお願いいたします

彼と彼女のハッピーエンド

愛で感動(完結編(完全版))


ザザッ……ザー、ザザッザー


「私は必ず探し出して見せる。助けられるはずの可能性を……」


ザザッ……ザー、ザザッザー


………………

…………

……


俺は女、高校生だ。

そしてこいつは男、保育園からの腐れ縁で、いわゆる幼馴染みだな。

男女間に友情は生まれるかという話をよく聞くが、俺たちの間には友情はあると思う。

いや、むしろ俺たちは親友だ。

だから……いきなりこんなこと言われても困る。


「ずっと好きだったんだ。俺と、付き合ってくれないか?」


ある日の放課後、クラスメイトの男2に桜の木の下に呼ばれた俺は、そこで告白された。

俺は口調も男っぽいし、どちらかというと女子からモテるタイプだったんだが、男性からの告白は初めてだった。


「す、すこし、考えさせて……」


そう言って思わず逃げるように立ち去ってしまった。


「お、男ッ! は、話が……あるんだ」


その日の帰り道、いつも通り男と二人で帰る。

そこで俺は、男に告白されたことを話した。


「……って事があってな。俺はどうすれば良いと思う?」


「俺が知るかよ。女の好きにすれば良いじゃん? 男2の事は、嫌いではないんだろ? なら、とりあえず付き合ってみてから判断するのも、ありだと思うぞ?」


(何でそんなつれない態度なんだよ……。俺のことなんてどうでいいのか?)

俺はその言葉に、想像以上にショックをうけていた。

男とは付き合ってはいないが、親友だと呼べる関係だと思っていたし、こんなにつれないとは思わなかった。


「お、男は、俺が誰かとつ、付き合っても……いい、のか?」


その言葉を口に出すと、何故か心が痛くなった。


「んー……別に? 女の自由だろ? 俺たちは親友だけど、恋人ではないんだし。そういうのには口出さないよ」


(あ、親友だと思ってくれてたんだ……少し嬉しいな。でも……)

親友と言われて嬉しいはずなのに、何故か心の痛みはとれない。

これは、何故だろう? 今の俺にはわからなかった。


………………

…………

……



明けて翌日。

俺はとりあえずのお試しとして、男2と付き合ってみることにした。

もともと男2は嫌いじゃないし、男ほど親しくはないけども、付き合いやすい相手だったからだ。

(まぁ、男も付き合ってみると良いって言ってたし。お試しなら良いよね?)

何故かまた心が痛んだが、気のせいだと思い、これから始まる新しい毎日を楽しもうと意気込んだ。


「ってことで、男。すまないけど、これからは一緒に帰れないや。ごめんな?」


付き合い始めたのだから、男2以外とあまりにも親しくするのはやめた方が良いだろう。

そう思った俺は、男にそう伝え、男2と帰ることにした。


「あー……付き合ってみることにしたのか。なら俺はいないほうが良いな。これからは少し距離をおくよ」


(ズキッ)

俺が伝えたことに対する、当たり前の反応なはずなのに、何故か涙が出てきた。


「女……? 泣いてるのか? 俺、何か悪いこと言ったか?」


「ご、ごめん。違うの。なんか勝手に出てきちゃって……。ごめん、ごめんね?」


「いや、むしろ俺が悪かったのか? なら謝るけど……」


「い、いいの、なんでもないの。気にしないでっ」


「そう……か? なら良いのだが」


この涙は何故だろう? 男は何も悪くないのに。


「女ー、帰ろーぜー? ってどうしたんだよ? 泣いてるじゃん。男になにかされたのか?」


「ち、違うの。そういうのじゃないの。ただの思い出し泣き……みたいな?」


「……なら、良いけどよ。まぁとにかく帰ろうぜ。二人でな?」


「わ、わかった。……それじゃ、男。また明日ね」


俺はそのまま男2と帰ることにした。


「女、明日って暇か? 休みだし、デートしようぜ」


「で、デート!? 早すぎない……かな? 付き合ってすぐなて……」


「そうか? 普通だと思うけど? ……まぁ、無理にとは言わないが」


(普通なら良い……よね? デートってしたことないし。お試しなんだし、色々試さないとだよね)


「うん、わかった。明日の何時にどこ集合?」


「お、良かった。なら明日の朝10時に、○○駅の南口に集合で」


「わかった」


こうして俺は、初めてのデートをすることになった。


………………

…………

……


それからの日々は、すごく楽しいというわけではなく、かといってつまらなくもなかった。

デートはそれなりに楽しかったし、お試しとしては十分なくらいだ。

毎週土日はどちからがデートの日で、毎回違うところに連れてってくれた。

遊園地も行ったし、水族館も行ったし、展覧会や、○○タワーにも行った。


「って感じでね? 楽しかったよ。今度男とも行ってみる?」


「楽しそうではあるが、まずいと思うからやめとくよ。女は今、男2と付き合ってるんだからさ?」


「えー? お試しなだけで、付き合ってる訳じゃないよー?」


「まわりから見れば、完全に付き合ってるよ。見せつけられるこっちの身になってみろ」


「そんなことないよー?」


「いい加減はっきりさせろよ! そんな話を俺にするな! お前は俺とじゃなくて、男2と付き合ってんだろうがッ!!」


「ッ!?」


(何故だろう? やっぱり心が痛い。男2とはこんなことないのに……)


「いいよ、わかったよ。そんなに言うなら、男2と、本とに付き合っちゃうよ! 男なんか知らないんだからッ!!」


俺はその言葉を捨て台詞に、男の部屋を飛び出す。

(なんなんだよ、なんなんだよこれ!? 何でこんなに心が痛いんだッ!?)

俺は今、それなり幸せな生活をできてるはずだ。

男とは今日は喧嘩別れ見たいになってしまったが、明日になれば、元通りなはずだ。

(こんな気持ちになるのも、男のせいだ。俺は男のこと好きなのに……)


「ってそうか……。私、男のことが好きなんだ……。そうデートだったんだ」


久しぶりに使った、私という言葉。

昔は俺じゃなくて、私と言っていたのだ。

中学に上がった頃、男が姉御肌の女性が好きだと聞いてから、俺を使い始めた。


「そうだ。私は昔から……」


(男のことが、好きだったんだ……)


「なら、ハッキリさせないとね。男にも男2にも……」


………………

…………

……


明けた翌日の日曜日。

私は男2と待ち合わせて、男2に別れを伝えようと駅前にいた。


「ごめん、待った? 急に呼び出すからさ。そんなに俺と会いたかったの?」


「いえ、今日は伝えなきゃいけないことができたので。急ではありましたが、呼び出させてもらいました」


私はそう言うと、少し歩きましょうと、街へ向かう。


「まてよー」


と言って男2がついてきてくれる。

どこで話すのが良いだろうか? やはり公園とかだろうか?


「大事な話なので、落ち着いたところが良いのですが……。どこかありますかね?」


「おっ、なら良いところを知ってるよ。ついてきてくれ」


そう言うと男2は、私の腕をつかんで走り出す。


「とうちゃーくってな」


そして連れてこられたのは、ホテルの前だった。


「女ちゃんさ、ようやく決心してくれたのな? 俺嬉しいよー」


「何を、いっているのです? 私は今日、あなたに別れたいと伝えようと……」


「早く入ろうぜッ! 今日はたっぷりと思い出を作るんだ!!」


そう言って腕を掴んだままホテルに入ろうとする。


「いや、やめてッ! はなしてッ!! 男……助けて、助けて男ッ!!」


「何してんだよ!!」


その声とともに、男が現れて男2を殴り飛ばす。


「嫌がってる女に、無理矢理せまってんじゃねーよ!! この三下がッ!!」


「お、男!? なんでここに!!」


「たまたま近くを通りかかってな。そしたら嫌がる女を連れ込もうとしてるじゃねぇか。見過ごせるわけねーだろッ!!」


「お、お前には関係ないだろッ!? 俺は今日、女から大事な話があるって言われて。これからここで初めてをもらえるんだと……」


「てめぇなんぞに女の初めては奪わせねぇッ!! 女がお試しだって言うから我慢してたが、もう我慢ならねぇ……。女は俺のものだッ!! 誰にも渡したりしねぇッ!! わかったらさっさとイネやこのモブがッ!!」


「ひっ、ひぃっ」


男の言葉に恐れをなしたのか、男2は逃げていった。


「さてと、女。大丈夫だったか? すまんな、遅くなっちまって」


「う、ううん、でも……どうして?」


(どうしてここに? さっきの言葉はどうして?)


「あー……聞きたいことや、言いたいことは色々あるだろうが、とりあえず俺の部屋に行こうぜ。そこで話をしよう」


「……わかった」


………………

…………

……


「さてと、どこから話したものか……」


「男は私のこと好き……なの?」


「いきなりそこからか!? いや、態度でわかってると思ってたよ。俺がお前を好きってことはな……」


「気づくわけがないよ。いつもそっけなくてさ。私はただの友情だと思ってた……」


「……はずかしかったしな。それに、お前はあぁいう関係を求めてると思ってたから」


「それは……たしかにそうだけども」


「女はさ、俺のこと好き……か?」


「好き……だよ。気づいたのは昨日だけどね」


「俺もお前が好きだ。お前が男2とお試しで付き合って言ったときは、めっちゃ悔しかったし悲しかった。でもお試しだからまだ許せた」


「だって男が言ったんじゃん。お試しで付き合ってみろって」


「言いはしたが、まさか本当にやるとは思ってなかったんだよ」


「それは……ごめんなさい?」


「いや、いいよ。俺も悪かったし。それに今こうして、女と先に進めたし」


「先って?」


「言わなきゃダメ……か?」


「ちゃんと伝えて。言葉にしないと、また今回みたいになるよ?」


「わかった。…………女のことが好きです。俺と付き合ってください」


「……喜んで」


こうして私は、男と付き合い始めた。

男との日々は、以前と変わらず、けれど以前よりも楽しくなった。

これからもずっと、こんな日々をおくれると良いな……。


ザザッ……ザー、ザザッザー


………………

…………

……


「これが本来の一番正しい歴史……か。私は必要ないな。次へ行くとしよう……」


ザザッ……ザー、ザザッザー


………………

…………

……


俺は女、高校生だ。

そしてこいつは男、保育園からの腐れ縁で、いわゆる幼馴染みだな。

男女間に友情は生まれるかという話をよく聞くが、俺たちの間には友情はあると思う。

いや、むしろ俺たちは親友だ。

だから……いきなりこんなこと言われても困る。


「ずっと好きだったんだ。俺と、付き合ってくれないか?」


ある日の放課後、クラスメイトの男2に桜の木の下に呼ばれた俺は、そこで告白された。

俺は口調も男っぽいし、どちらかというと女子からモテるタイプだったんだが、男性からの告白は初めてだった。


「す、すこし、考えさせて……」


そう言って思わず逃げるように立ち去ってしまった。


「お、男ッ! は、話が……あるんだ」


その日の帰り道、いつも通り男と二人で帰る。

そこで俺は、男に告白されたことを話した。


「……って事があってな。俺はどうすれば良いと思う?」


「俺が知るかよ。女の好きにすれば良いじゃん? 男2の事は、嫌いではないんだろ? なら、とりあえず付き合ってみてから判断するのも、ありだと思うぞ?」


(何でそんなつれない態度なんだよ……。俺のことなんてどうでいいのか?)

俺はその言葉に、想像以上にショックをうけていた。

男とは付き合ってはいないが、親友だと呼べる関係だと思っていたし、こんなにつれないとは思わなかった。


「お、男は、俺が誰かとつ、付き合っても……いい、のか?」


その言葉を口に出すと、何故か心が痛くなった。


「んー……別に? 女の自由だろ? 俺たちは親友だけど、恋人ではないんだし。そういうのには口出さないよ」


(あ、親友だと思ってくれてたんだ……少し嬉しいな。でも……)

親友と言われて嬉しいはずなのに、何故か心の痛みはとれない。

これは、何故だろう? 今の俺にはわからなかった。


………………

…………

……



明けて翌日。

俺はとりあえずのお試しとして、男2と付き合ってみることにした。

もともと男2は嫌いじゃないし、男ほど親しくはないけども、付き合いやすい相手だったからだ。

(まぁ、男も付き合ってみると良いって言ってたし。お試しなら良いよね?)

何故かまた心が痛んだが、気のせいだと思い、これから始まる新しい毎日を楽しもうと意気込んだ。


「ってことで、男。すまないけど、これからは一緒に帰れないや。ごめんな?」


付き合い始めたのだから、男2以外とあまりにも親しくするのはやめた方が良いだろう。

そう思った俺は、男にそう伝え、男2と帰ることにした。


「あー……付き合ってみることにしたのか。なら俺はいないほうが良いな。これからは少し距離をおくよ」


(ズキッ)

俺が伝えたことに対する、当たり前の反応なはずなのに、何故か涙が出てきた。


「女……? 泣いてるのか? 俺、何か悪いこと言ったか?」


「ご、ごめん。違うの。なんか勝手に出てきちゃって……。ごめん、ごめんね?」


「いや、むしろ俺が悪かったのか? なら謝るけど……」


「い、いいの、なんでもないの。気にしないでっ」


「そう……か? なら良いのだが」


この涙は何故だろう? 男は何も悪くないのに。


「女ー、帰ろーぜー? ってどうしたんだよ? 泣いてるじゃん。男になにかされたのか?」


「ち、違うの。そういうのじゃないの。ただの思い出し泣き……みたいな?」


「……なら、良いけどよ。まぁとにかく帰ろうぜ。二人でな?」


「わ、わかった。……それじゃ、男。また明日ね」


俺はそのまま男2と帰ることにした。


「女、明日って暇か? 休みだし、デートしようぜ」


「で、デート!? 早すぎない……かな? 付き合ってすぐなて……」


「そうか? 普通だと思うけど? ……まぁ、無理にとは言わないが」


(普通なら良い……よね? デートってしたことないし。お試しなんだし、色々試さないとだよね)


「うん、わかった。明日の何時にどこ集合?」


「お、良かった。なら明日の朝10時に、○○駅の南口に集合で」


「わかった」


こうして俺は、初めてのデートをすることになった。


………………

…………

……


それからの日々は、すごく楽しいというわけではなく、かといってつまらなくもなかった。

デートはそれなりに楽しかったし、お試しとしては十分なくらいだ。

毎週土日はどちからがデートの日で、毎回違うところに連れてってくれた。

遊園地も行ったし、水族館も行ったし、展覧会や、○○タワーにも行った。


「って感じでね? 楽しかったよ。今度男とも行ってみる?」


「楽しそうではあるが、まずいと思うからやめとくよ。女は今、男2と付き合ってるんだからさ?」


「えー? お試しなだけで、付き合ってる訳じゃないよー?」


「まわりから見れば、完全に付き合ってるよ。見せつけられるこっちの身になってみろ」


「そんなことないよー?」


「いい加減はっきりさせろよ! そんな話を俺にするな! お前は俺とじゃなくて、男2と付き合ってんだろうがッ!!」


「ッ!?」


(何故だろう? やっぱり心が痛い。男2とはこんなことないのに……)


「いいよ、わかったよ。そんなに言うなら、男2と、本とに付き合っちゃうよ! 男なんか知らないんだからッ!!」


俺はその言葉を捨て台詞に、男の部屋を飛び出す。

(なんなんだよ、なんなんだよこれ!? 何でこんなに心が痛いんだッ!?)

俺は今、それなり幸せな生活をできてるはずだ。

男とは今日は喧嘩別れ見たいになってしまったが、明日になれば、元通りなはずだ。

(こんな気持ちになるのも、男のせいだ。俺は男のこと好きなのに……)


「ってそうか……。私、男のことが好きなんだ……。そうデートだったんだ」


久しぶりに使った、私という言葉。

昔は俺じゃなくて、私と言っていたのだ。

中学に上がった頃、男が姉御肌の女性が好きだと聞いてから、俺を使い始めた。


「そうだ。私は昔から……」


(男のことが、好きだったんだ……)


「なら、ハッキリさせないとね。男にも男2にも……」


………………

…………

……


明けた翌日の日曜日。

私は男2と待ち合わせて、男2に別れを伝えようと駅前にいた。


「ごめん、待った? 急に呼び出すからさ。そんなに俺と会いたかったの?」


「いえ、今日は伝えなきゃいけないことができたので。急ではありましたが、呼び出させてもらいました」


私はそう言うと、少し歩きましょうと、街へ向かう。


「まてよー」


と言って男2がついてきてくれる。

どこで話すのが良いだろうか? やはり公園とかだろうか?


「大事な話なので、落ち着いたところが良いのですが……。どこかありますかね?」


「おっ、なら良いところを知ってるよ。ついてきてくれ」


そう言うと男2は、私の腕をつかんで走り出す。


「とうちゃーくってな」


そして連れてこられたのは、ホテルの前だった。


「女ちゃんさ、ようやく決心してくれたのな? 俺嬉しいよー」


「何を、いっているのです? 私は今日、あなたに別れたいと伝えようと……」


「早く入ろうぜッ! 今日はたっぷりと思い出を作るんだ!!」


そう言って腕を掴んだままホテルに入ろうとする。


「いや、やめてッ! はなしてッ!! 男……助けて、助けて男ッ!!」


「何してんだよ!!」


その声とともに、男が現れて男2を殴り飛ばす。


「嫌がってる女に、無理矢理せまってんじゃねーよ!! この三下がッ!!」


「お、男!? なんでここに!!」


「たまたま近くを通りかかってな。そしたら嫌がる女を連れ込もうとしてるじゃねぇか。見過ごせるわけねーだろッ!!」


「お、お前には関係ないだろッ!? 俺は今日、女から大事な話があるって言われて。これからここで初めてをもらえるんだと……」


「てめぇなんぞに女の初めては奪わせねぇッ!! 女がお試しだって言うから我慢してたが、もう我慢ならねぇ……。女は俺のものだッ!! 誰にも渡したりしねぇッ!! わかったらさっさとイネやこのモブがッ!!」


「ひっ、ひぃっ」


男の言葉に恐れをなしたのか、男2は逃げていった。


「さてと、女。大丈夫だったか? すまんな、遅くなっちまって」


「う、ううん、でも……どうして?」


(どうしてここに? さっきの言葉はどうして?)


「あー……聞きたいことや、言いたいことは色々あるだろうが、とりあえず歩きながらにしようぜ。俺の部屋で、ちゃんと話をしよう」


「……わかった」


………………

…………

……


「さてと、どこから話したものか……」


「男は私のこと好き……なの?」


「いきなりそこからか!? いや、態度でわかって危ねぇッ!!」


「ッ!?」


突然横からトラックが突っ込んできて、私をかばって男が突き飛ばされる。


「男!? 男……おとこぉぉぉッ!!」


「だいじょ……うぶだ。とりあえず、きゅうきゅうしゃ……を」


「男? わ、わかった。今すぐに呼ぶから!!」


「………………」


「はやく……はやくきてッ! 男を助けてッ!!」


私はなんとかパニックになりそうな心を押さえ込み、救急車を待つ。


「男なら大丈夫……だよね? 私、信じてるから。……ぜったいぜったい、信じてるからッ!!」


当然、答えは返ってこない。

けれど私には、男が笑ったように見えた。


………………

…………

……


「あれからもう、一月たつんだね」


「………………」


「私はさ、やっぱり男が好きだよ。……いや違うな、大好きだよ。愛してる」


「………………」


「男も私の事好き……って思って良いよね? じゃなきゃあんな事しないよね?」


「………………」


「ほら、もう紅葉がきれいだよ。寒くなってきたし、そろそろ冬が近いね……」


「………………」


「いいかげん、帰ってきてよ。私と話してよ。男がいないと私……私ッ!」


「………………」


あの事故によって、男は意識不明になった。

今は近くの一番大きな病院に入院している。

私は毎日学校が終わるとここに来て、男に話しかける。

お医者さんは原因不明だっていっており、意識が戻るかはわからないそうだ。

……でも私は信じてる。

男は必ず帰ってきてくれるって。


「だって私、ちゃんと好きって言われてないもん……」


「………………」


あの時男は助けに来てくれたけど、それはただの幼馴染みとしてなのか、それとも私が好きだからなのか。

私は好きだからだと信じてる。

けど……。


「ちゃんと言葉で伝えてくれないと、わかんないよ……。男は私の事好き? それともただ幼馴染みとして見過ごせなかっただけ?」


「………………」


「……私待ってるから。男が私に、ちゃんと言葉で伝えてくれるのを待ってるから……」


「………………」


「女さーん、面会終了でーす」


「あ、はーい。……それじゃ、男。また明日ね?」


「………………」


………………

…………

……


「何だかんだで、もう半年近くなるんだね。梅がきれいだよ」


「………………」


「あー……お花見したいなぁ。男と二人で、お花見デート。二人なら、どんな所でも楽しいよね?」


「………………」


「こたえてよ……。はやく帰ってきてよ……男!」


「………………」


「もう来月から私は、三年生だよ? 男と違う学年になっちゃうんだよ!?」


「………………」


「なにか言ってよ……。私、寂しいよ……」


「………………」


「女さーん、面会終了の時間ですよー」


「わかり……ました。それじゃ、今日は帰るね? また明日」


「………………」


………………

…………

……


「もう夏だね。セミがうるさいよ。男と海水浴とか、プールとか行きたいよね」


「………………」


「山に行くのも良いかもね? キャンプとか、家族全員でさ?」


「………………」


「男はどっちが良い? やっぱり海やプール? 私の水着が見たいんでしょ?」


「………………」


「男のえっちー。でも……男にだったら、いい……よ?」


「………………」


「さすがに病室で水着は無理だからさ? はやく帰ってきてよ。この夏は、一度しか無いんだよ?」


「………………」


「女さん、面会終了の時間です」


「はい。後をよろしくお願いします……」


「それが仕事ですから」


「それじゃ、男。また明日ね」


「………………」


「では、失礼します……」


………………

…………

……


「今日何の日か覚えてる? 私と男の誕生日だよ?」


「………………」


「今年の誕生日プレゼントは、なんだと思う?」


「………………」


「男は毎年、私に欲しいものを聞いてくれたよね?」


「私は……さ、手作りクッキーとかだったけど、男はちゃんとバイトして買ってくれたよね……」


「………………」


「私、考えたの。私が今一番ほしくて、同時に男にも喜んでもらえるものって何かな? ってさ」


「………………」


「男……わたし、ね? 私の初めてをあげようと思うの……」


「………………」


「私の初めての……好きって伝えるキス」


「………………」


「私は王子様じゃないし、男もお姫様じゃないけど……」


「………………」


「いいかげん、目を覚ましなさいよ……ん」


私はそのまま男にキスをする。

こんなことで目覚めるわけがないってわかってる。

そんなおとぎ話のようなキセキは、物語の中だけだ。

でも…………。


「ん…………。はぁ……、やっぱり目覚めない……か」


「………………」


「わかってたよ。わかってたけど……」 


私は涙をこらえる。

必死に我慢しないと、このまま崩れ落ちてしまいそうだ。


「男……おとこぉ。おと、こぉ……」


嗚咽をもらしながら、私は泣く。

もうあの事故から一年近くたつのだ。


「………………」


「………………」


「……おとこぉ、おとこぉッ!!」


「………………おん、な?」


「……ッ!?」


「……ないて、いる……のか?」


「男!? 男ッ!?」


「泣くな……よ、大丈夫だって、いった……だろ?」


「うんっ! うんッ!!」


「あれ? ここ、って……どこ、だ?」


「○○病院、だよっ。あれからもう……一年、たつんだからっ」


「そう……なの、か。……待たせちまった、な?」


「男のバカっ! 大好きっ! 愛してるッ!!」


「あー……さき、いわれちまった……な。俺も……俺も、女が、好き……だよ。あいして、る」


「男っ! 男ッ!!」


「ははは、女は、甘えん坊……だな」


「うんっ! うんっ!!」


「これからは……いや、これからも、ずっと……一緒だ」


「…………うんっ!!」


………………

…………

……


「これがお父さんとお母さんの馴れ初めよ。良い話でしょ?」


「うんっ! 感動したっ! おとぎ話みたいっ!!」


「そうでしょう? いつか子供も、お母さんにとってのお父さんのような人に、出会えると良いね?」


「うんっ!!」


ザザッ……ザー、ザザッザー


………………

…………

……


「これは正しい歴史からはずれているが、私の手は必要ないな。私の経験したものより良くなっている。……次へ行くとしよう」


ザザッ……ザー、ザザッザー


………………

…………

……


俺は女、高校生だ。

そしてこいつは男、保育園からの腐れ縁で、いわゆる幼馴染みだな。

男女間に友情は生まれるかという話をよく聞くが、俺たちの間には友情はあると思う。

いや、むしろ俺たちは親友だ。

だから……いきなりこんなこと言われても困る。


「ずっと好きだったんだ。俺と、付き合ってくれないか?」


ある日の放課後、クラスメイトの男2に桜の木の下に呼ばれた俺は、そこで告白された。

俺は口調も男っぽいし、どちらかというと女子からモテるタイプだったんだが、男性からの告白は初めてだった。


「す、すこし、考えさせてて」


そう言って思わず逃げるように立ち去ってしまった。


「お、男ッ! は、話が……あるんだ」


その日の帰り道、いつも通り男と二人で帰る。

そこで俺は、男に告白されたことを話した。


「……って事があってな。俺はどうすれば良いと思う?」


「俺が知るかよ。女の好きにすれば良いじゃん? 男2の事は、嫌いではないんだろ? なら、とりあえず付き合ってみてから判断するのも、ありだと思うぞ?」


(何でそんなつれない態度なんだよ……。俺のことなんてどうでいいのか?)

俺はその言葉に、想像以上にショックをうけていた。

男とは付き合ってはいないが、親友だと呼べる関係だと思っていたし、こんなにつれないとは思わなかった。


「お、男は、俺が誰かとつ付き合っても……いい、のか?」


その言葉を口に出すと、何故か心が痛くなった。


「んー……別に? 女の自由だろ? 俺たちは親友だけど、恋人ではないんだし。そういうのには口出さないよ」


(あ、親友だと思ってくれてたんだ……少し嬉しいな。でも……)

親友と言われて嬉しいはずなのに、何故か心の痛みはとれない。

これは、何故だろう? 今の俺にはわからなかった。


………………

…………

……



明けて翌日。

俺はとりあえずのお試しとして、男2と付き合ってみることにした。

もともと男2は嫌いじゃないし、男ほど親しくはないけども、付き合いやすい相手だったからだ。

(まぁ、男も付き合ってみると良いって言ってたし。お試しなら良いよね?)

何故かまた心が痛んだが、気のせいだと思い、これから始まる新しい毎日を楽しもうと意気込んだ。


「ってことで、男。すまないけど、これからは一緒に帰れないや。ごめんな?」


付き合い始めたのだから、男2以外とあまりにも親しくするのはやめた方が良いだろう。

そう思った俺は、男にそう伝え、男2と帰ることにした。


「あー……付き合ってみることにしたのか。なら俺はいないほうが良いな。これからは少し距離をおくよ」


(ズキッ)

俺が伝えたことに対する、当たり前の反応なはずなのに、何故か涙が出てきた。


「女……? 泣いてるのか? 俺、何か悪いこと言ったか?」


「ご、ごめん。違うの。なんか勝手に出てきちゃって……。ごめん、ごめんね?」


「いや、むしろ俺が悪かったのか? なら謝るけど……」


「い、いいの、なんでもないの。気にしないでっ」


「そう……か? なら良いのだが」


この涙は何故だろう? 男は何も悪くないのに。


「女ー、帰ろーぜー? ってどうしたんだよ? 泣いてるじゃん。男になにかされたのか?」


「ち、違うの。そういうのじゃないの。ただの思い出し泣き……みたいな?」


「……なら、良いけどよ。まぁとにかく帰ろうぜ。二人でな?」


「わ、わかった。……それじゃ、男。また明日ね」


俺はそのまま男2と帰ることにした。


「女、明日って暇か? 休みだし、デートしようぜ」


「で、デート!? 早すぎない……かな? 付き合ってすぐなて……」


「そうか? 普通だと思うけど? ……まぁ、無理にとは言わないが」


(普通なら良い……よね? デートってしたことないし。お試しなんだし、色々試さないとだよね)


「うん、わかった。明日の何時にどこ集合?」


「お、良かった。なら明日の朝10時に、○○駅の南口に集合で」


「わかった」


こうして俺は、初めてのデートをすることになった。


………………

…………

……


それからの日々は、すごく楽しいというわけではなく、かといってつまらなくもなかった。

デートはそれなりに楽しかったし、お試しとしては十分なくらいだ。

毎週土日はどちからがデートの日で、毎回違うところに連れてってくれた。

遊園地も行ったし、水族館も行ったし、展覧会や、○○タワーにも行った。


「って感じでね? 楽しかったよ。今度男とも行ってみる?」


「楽しそうではあるが、まずいと思うからやめとくよ。女は今、男2と付き合ってるんだからさ?」


「えー? お試しなだけで、付き合ってる訳じゃないよー?」


「まわりから見れば、完全に付き合ってるよ。見せつけられるこっちの身になってみろ」


「そんなことないよー?」


「いい加減はっきりさせろよ! そんな話を俺にするな! お前は俺とじゃなくて、男2と付き合ってんだろうがッ!!」


「ッ!?」


(何故だろう? やっぱり心が痛い。男2とはこんなことないのに……)


「いいよ、わかったよ。そんなに言うなら、男2と、本とに付き合っちゃうよ! 男なんか知らないんだからッ!!」


俺はその言葉を捨て台詞に、男の部屋を飛び出す。

(なんなんだよ、なんなんだよこれ!? 何でこんなに心が痛いんだッ!?)

俺は今、それなり幸せな生活をできてるはずだ。

男とは今日は喧嘩別れ見たいになってしまったが、明日になれば、元通りなはずだ。

(こんな気持ちになるのも、男のせいだ。俺は男のこと好きなのに……)


「ってそうか……。私、男のことが好きなんだ……。そうデートだったんだ」


久しぶりに使った、私という言葉。

昔は俺じゃなくて、私と言っていたのだ。

中学に上がった頃、男が姉御肌の女性が好きだと聞いてから、俺を使い始めた。


「そうだ。私は昔から……」


(男のことが、好きだったんだ……)


「なら、ハッキリさせないとね。男にも男2にも……」


………………

…………

……


明けた翌日の日曜日。

私は男2と待ち合わせて、男2に別れを伝えようと駅前にいた。


「ごめん、待った? 急に呼び出すからさ。そんなに俺と会いたかったの?」


「いえ、今日は伝えなきゃいけないことができたので。急ではありましたが、呼び出させてもらいました」


私はそう言うと、少し歩きましょうと、街へ向かう。


「まてよー」


と言って男2がついてきてくれる。

どこで話すのが良いだろうか? やはり公園とかだろうか?


「大事な話なので、落ち着いたところが良いのですが……。どこかありますかね?」


「おっ、なら良いところを知ってるよ。ついてきてくれ」


そう言うと男2は、私の腕をつかんで走り出す。


「とうちゃーくってな」


そして連れてこられたのは、ホテルの前だった。


「女ちゃんさ、ようやく決心してくれたのな? 俺嬉しいよー」


「何を、いっているのです? 私は今日、あなたに別れたいと伝えようと……」


「早く入ろうぜッ! 今日はたっぷりと思い出を作るんだ!!」


そう言って腕を掴んだままホテルに入ろうとする。


「いや、やめてッ! はなしてッ!! 男……助けて、助けて男ッ!!」


「何してんだよ!!」


その声とともに、男が現れて男2を殴り飛ばす。


「嫌がってる女に、無理矢理せまってんじゃねーよ!! この三下がッ!!」


「お、男!? なんでここに!!」


「たまたま近くを通りかかってな。そしたら嫌がる女を連れ込もうとしてるじゃねぇか。見過ごせるわけねーだろッ!!」


「お、お前には関係ないだろッ!? 俺は今日、女から大事な話があるって言われて。これからここで初めてをもらえるんだと……」


「てめぇなんぞに女の初めては奪わせねぇッ!! 女がお試しだって言うから我慢してたが、もう我慢ならねぇ……。女は俺のものだッ!! 誰にも渡したりしねぇッ!! わかったらさっさとイネやこのモブがッ!!」


「ひっ、ひぃっ」


男の言葉に恐れをなしたのか、男2は逃げていった。


「さてと、女。大丈夫だったか? すまんな、遅くなっちまって」


「う、ううん、でも……どうして?」


(どうしてここに? さっきの言葉はどうして?)


「あー……聞きたいことや、言いたいことは色々あるだろうが、とりあえず歩きながらにしようぜ。俺の部屋で、ちゃんと話をしよう」


「……わかった」


………………

…………

……


「さてと、どこから話したものか……」


「男は私のこと好き……なの?」


「いきなりそこからか!? いや、態度でわかって、いや……ちゃんと言うよ。俺はお前の事が……ってあぶねぇッ!!」


瞬間、なぜか歩道に突っ込んできたトラックと私の間に、男の体が入ると同時に私は突き飛ばされる。


「男ッ!? 男ッ!!」


「女……。俺は、お前の……ことが、す……」


「男ーーーッ!!」


………………

…………

……


人っていうのは、案外簡単に死んでしまうものらしい。

私の目の前でトラックにひかれた男は、そのまま帰らぬ人となった。

私を庇って死んだ男……。

最後に私に向かって何かを伝えようとしていた……気がする。

けど、それはもうわからない。

なぜなら男はもう、この世にいないんだから……。


「私、男の事が好きだったんだよ……? なんで死んじゃうのよ……? 帰ってきて、私にちゃんとこたえてよッ!!」


あの時、男は私を助けに来てくれた。

そして何かを話そうとしてくれていた。


「女さん、これ……男の日記なんだけど、女さんの事が書いてあるみたいだったから……読んであげてもらえる?」


「男のお母さん……。わかりました。読んでみます……」


………………

…………

……


○月×日

今日から女が男2と付き合い始めた。マジムカつく。

確かに俺は、あいつにお試しでやってみればとは言ったが、まさか本当にやるとは思ってなかった。

これは俺のせいなんだろうか……? けどまぁ、女のことだし。

すぐに飽きて戻ってきてくれるだろう。


○月○日

女は俺に、男2と楽しくデートした話を聞かせてくる。

なんだよ……嬉しそうに話しやがって。俺と遊んでた時よりも、男2とのデートの方が楽しいのかよ……。

マジでムカつく。

俺はこんなに女が好きなのに……。

こんなことなら、さっさと告白すればよかった。

高校卒業してからなんて、古い考え捨てちまえば良かったぜ。

……あーあ、どうにかして別れさせられないかな?

……しばらくは見守るしかないか。


×月×日

そろそろ女が付き合いはじめて一月がたつ。

あいかわらず俺に楽しそうに報告してくる。

いっそのこと告白してみるか? ……いや、今したって女を混乱させるだけだ。

チャンスを待つことにしよう……。


×月○日

そろそろ限界になってきた。

女が男2の話をするのを、笑顔で聞いて、反応する……。

これは一種の地獄だな。

今日は少し強く当たってしまった。

けどこれも女が…………いや、女は悪くない。すべては俺に勇気がなかったからだ。

どうにかして、女が別れないかな……? いや、だめだ。

俺は女が幸せならそれで…………



□月×日

今日とうとう女に怒鳴ってしまった。

女のあんな顔は、久しぶりに見た。

俺が……泣かせたんだ。

明日ちゃんと謝らなくちゃな……。

それで今こそ、ちゃんと女に告白するんだ。


………………

…………

……


「男……おとこぉぉぉ」


日記をすべて読んだ私は、思わず声を出して泣いてしまった。

さんざん涙は出尽くして、既にかれたと思っていたが、涙はちゃんと出るらしい。


「私も……わたじも、男の事が好きだったよ。好きだったんだよぉぉぉ」


後悔先に立たずとは言うけども、こんな後悔は経験したくなかった。


「男……男おとこオトコッ」


私、好きだったんだよ?

昔からずっと、好きだったんだよ?

なんで先に行っちゃったのよ?

なんで私をのこしたのよ……?


「男のばかッ! 私のばかッ!!」


私は男のお墓の前で、泣いて泣いて泣きつくした。

男はもう帰ってこないけど、男の気持ちはわかることができた。

私の気持ちも再確認できた。


「男……私は男が好きだよ。だからこそ私は、男の分まで生きていくよ。男の分まで、この世界を堪能するよっ」


男のお墓の前で、私は決意する。

この世界を旅しよう。

色々なところを見に行こう。

私は男の命を背負って生きていくんだ……。


………………

…………

……


ザザッ……ザー、ザザッザー


「ここだっ! ここに座標を合わせてッ!! 行くぞ、歴史を正しにッ」


ザザッ……ザー、ザザッザー


………………

…………

……


「あぶねぇッ!?」


「男ッ!?」


「俺の代わりにお前が生きろッ!!」


「「ッ!?」」


ドンッ!! という音ともに、私と男は突き飛ばされる。

そして、代わりに見たこともないおじいさんが撥ね飛ばされる。


「おじいさんっ!?」


「おい、じいさんっ!? 死ぬなよ、死ぬな、じいさんっ!?」


私たちのかわりにひかれたおじいさんは、なぜか私たちに笑顔を向ける。


「良いのじゃよ。俺はこのためにここに来たのじゃからの……」


「じいさんっ!?」


「喋らないで、今すぐ救急車を呼ぶからッ!!」


「よく聞きなさい、お二人さん。……想いは伝えないと、伝わらないのじゃ。俺のように、後悔だけはしないようにな……?」


「じいさん……? じいさんッ!?」


「体が、消えていって……」


「どういう事だよッ!? おい、じいさんっ、じいさんッ!!」


「おじいさんっ! おじいさんっ!!」


「助けられて……よかっ」


ザザッ……ザー、ザザッザー


………………

…………

……


「これで……良かったのじゃよ。俺はなんとか救うことができた。思い残すことはない……」


「男さん、お疲れさまでした。うまくいったようですね……」


「あぁ、弟子よ。これで満足して死ねるよ」


「安らかに眠ってください。私は、一人でも大丈夫……です、から」


「こんなじじいの妄言に付き合わせてすまなかったな……」


「いいえ、私も夢を見させてもらいましたから……」


「ならよかっ」


「男さん!? ……いってしまいましたか」


私は一人残されたラボで、少し感慨に更ける。

これからやることがいっぱいだ。

おかげでしばらくは泣かないですむだろう。


「信念岩をも通す……ですね。あなたは本当にすごい人でしたよ」


どこかにいるはずの、助けられる自分と彼女を救うために、タイムマシンを作ってしまうんですから……。


「さてと、まずは報告書からですね」


どうかお幸せに。

私はそう願っています。


………………

…………

……


〈タイムマシン製作の報告書〉

制作者は男。

彼は高校時代に女という幼馴染みを事故で失う。

正確には事故の後遺症でだが。

女が最後に残した言葉である、「私とあなた、両方救えた道があったのかな? あったら良いな……」から平行世界およびタイムマシンの研究を始める。

そして30代で平行世界および過去世界を発見、観測を行えるようになる。

40代にてタイムマシンの基礎理論を発表し、65歳で完成させる。

最初の実験にて自らを過去の平行世界に飛ばし、改変を行いその記録をとる。

しかしその改変の影響にて死亡。

以後は弟子に研究が受け継がれる。


「とりあえずはこんなものですかね……」


さようなら、男さん。

いつかまた、会えることを信じて……。


読了ありがとうございました。

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