ルートB
ルートBです。
最初は同じになっています。
よろしくお願いいたします
彼と彼女のハッピーエンド
愛での感動(ルートB)
俺は女、高校生だ。
そしてこいつは男、保育園からの腐れ縁で、いわゆる幼馴染みだな。
男女間に友情は生まれるかという話をよく聞くが、俺たちの間には友情はあると思う。
いや、むしろ俺たちは親友だ。
だから……いきなりこんなこと言われても困る。
「ずっと好きだったんだ。俺と、付き合ってくれないか?」
ある日の放課後、クラスメイトの男2に桜の木の下に呼ばれた俺は、そこで告白された。
俺は口調も男っぽいし、どちらかというと女子からモテるタイプだったんだが、男性からの告白は初めてだった。
「す、すこし、考えさせてて」
そう言って思わず逃げるように立ち去ってしまった。
「お、男ッ! は、話が……あるんだ」
その日の帰り道、いつも通り男と二人で帰る。
そこで俺は、男に告白されたことを話した。
「……って事があってな。俺はどうすれば良いと思う?」
「俺が知るかよ。女の好きにすれば良いじゃん? 男2の事は、嫌いではないんだろ? なら、とりあえず付き合ってみてから判断するのも、ありだと思うぞ?」
(何でそんなつれない態度なんだよ……。俺のことなんてどうでいいのか?)
俺はその言葉に、想像以上にショックをうけていた。
男とは付き合ってはいないが、親友だと呼べる関係だと思っていたし、こんなにつれないとは思わなかった。
「お、男は、俺が誰かとつ付き合っても……いい、のか?」
その言葉を口に出すと、何故か心が痛くなった。
「んー……別に? 女の自由だろ? 俺たちは親友だけど、恋人ではないんだし。そういうのには口出さないよ」
(あ、親友だと思ってくれてたんだ……少し嬉しいな。でも……)
親友と言われて嬉しいはずなのに、何故か心の痛みはとれない。
これは、何故だろう? 今の俺にはわからなかった。
………………
…………
……
明けて翌日。
俺はとりあえずのお試しとして、男2と付き合ってみることにした。
もともと男2は嫌いじゃないし、男ほど親しくはないけども、付き合いやすい相手だったからだ。
(まぁ、男も付き合ってみると良いって言ってたし。お試しなら良いよね?)
何故かまた心が痛んだが、気のせいだと思い、これから始まる新しい毎日を楽しもうと意気込んだ。
「ってことで、男。すまないけど、これからは一緒に帰れないや。ごめんな?」
付き合い始めたのだから、男2以外とあまりにも親しくするのはやめた方が良いだろう。
そう思った俺は、男にそう伝え、男2と帰ることにした。
「あー……付き合ってみることにしたのか。なら俺はいないほうが良いな。これからは少し距離をおくよ」
(ズキッ)
俺が伝えたことに対する、当たり前の反応なはずなのに、何故か涙が出てきた。
「女……? 泣いてるのか? 俺、何か悪いこと言ったか?」
「ご、ごめん。違うの。なんか勝手に出てきちゃって……。ごめん、ごめんね?」
「いや、むしろ俺が悪かったのか? なら謝るけど……」
「い、いいの、なんでもないの。気にしないでっ」
「そう……か? なら良いのだが」
この涙は何故だろう? 男は何も悪くないのに。
「女ー、帰ろーぜー? ってどうしたんだよ? 泣いてるじゃん。男になにかされたのか?」
「ち、違うの。そういうのじゃないの。ただの思い出し泣き……みたいな?」
「……なら、良いけどよ。まぁとにかく帰ろうぜ。二人でな?」
「わ、わかった。……それじゃ、男。また明日ね」
俺はそのまま男2と帰ることにした。
「女、明日って暇か? 休みだし、デートしようぜ」
「で、デート!? 早すぎない……かな? 付き合ってすぐなて……」
「そうか? 普通だと思うけど? ……まぁ、無理にとは言わないが」
(普通なら良い……よね? デートってしたことないし。お試しなんだし、色々試さないとだよね)
「うん、わかった。明日の何時にどこ集合?」
「お、良かった。なら明日の朝10時に、○○駅の南口に集合で」
「わかった」
こうして俺は、初めてのデートをすることになった。
………………
…………
……
それからの日々は、すごく楽しいというわけではなく、かといってつまらなくもなかった。
デートはそれなりに楽しかったし、お試しとしては十分なくらいだ。
毎週土日はどちからがデートの日で、毎回違うところに連れてってくれた。
遊園地も行ったし、水族館も行ったし、展覧会や、○○タワーにも行った。
「って感じでね? 楽しかったよ。今度男とも行ってみる?」
「楽しそうではあるが、まずいと思うからやめとくよ。女は今、男2と付き合ってるんだからさ?」
「えー? お試しなだけで、付き合ってる訳じゃないよー?」
「まわりから見れば、完全に付き合ってるよ。見せつけられるこっちの身になってみろ」
「そんなことないよー?」
「いい加減はっきりさせろよ! そんな話を俺にするな! お前は俺とじゃなくて、男2と付き合ってんだろうがッ!!」
「ッ!?」
(何故だろう? やっぱり心が痛い。男2とはこんなことないのに……)
「いいよ、わかったよ。そんなに言うなら、男2と、本とに付き合っちゃうよ! 男なんか知らないんだからッ!!」
俺はその言葉を捨て台詞に、男の部屋を飛び出す。
(なんなんだよ、なんなんだよこれ!? 何でこんなに心が痛いんだッ!?)
俺は今、それなり幸せな生活をできてるはずだ。
男とは今日は喧嘩別れ見たいになってしまったが、明日になれば、元通りなはずだ。
(こんな気持ちになるのも、男のせいだ。俺は男のこと好きなのに……)
「ってそうか……。私、男のことが好きなんだ……。そうデートだったんだ」
久しぶりに使った、私という言葉。
昔は俺じゃなくて、私と言っていたのだ。
中学に上がった頃、男が姉御肌の女性が好きだと聞いてから、俺を使い始めた。
「そうだ。私は昔から……」
(男のことが、好きだったんだ……)
「なら、ハッキリさせないとね。男にも男2にも……」
………………
…………
……
明けた翌日の日曜日。
私は男2と待ち合わせて、男2に別れを伝えようと駅前にいた。
「ごめん、待った? 急に呼び出すからさ。そんなに俺と会いたかったの?」
「いえ、今日は伝えなきゃいけないことができたので。急ではありましたが、呼び出させてもらいました」
私はそう言うと、少し歩きましょうと、街へ向かう。
「まてよー」
と言って男2がついてきてくれる。
どこで話すのが良いだろうか? やはり公園とかだろうか?
「大事な話なので、落ち着いたところが良いのですが……。どこかありますかね?」
「おっ、なら良いところを知ってるよ。ついてきてくれ」
そう言うと男2は、私の腕をつかんで走り出す。
「とうちゃーくってな」
そして連れてこられたのは、ホテルの前だった。
「女ちゃんさ、ようやく決心してくれたのな? 俺嬉しいよー」
「何を、いっているのです? 私は今日、あなたに別れたいと伝えようと……」
「早く入ろうぜッ! 今日はたっぷりと思い出を作るんだ!!」
そう言って腕を掴んだままホテルに入ろうとする。
「いや、やめてッ! はなしてッ!! 男……助けて、助けて男ッ!!」
「何してんだよ!!」
その声とともに、男が現れて男2を殴り飛ばす。
「嫌がってる女に、無理矢理せまってんじゃねーよ!! この三下がッ!!」
「お、男!? なんでここに!!」
「たまたま近くを通りかかってな。そしたら嫌がる女を連れ込もうとしてるじゃねぇか。見過ごせるわけねーだろッ!!」
「お、お前には関係ないだろッ!? 俺は今日、女から大事な話があるって言われて。これからここで初めてをもらえるんだと……」
「てめぇなんぞに女の初めては奪わせねぇッ!! 女がお試しだって言うから我慢してたが、もう我慢ならねぇ……。女は俺のものだッ!! 誰にも渡したりしねぇッ!! わかったらさっさとイネやこのモブがッ!!」
「ひっ、ひぃっ」
男の言葉に恐れをなしたのか、男2は逃げていった。
「さてと、女。大丈夫だったか? すまんな、遅くなっちまって」
「う、ううん、でも……どうして?」
(どうしてここに? さっきの言葉はどうして?)
「あー……聞きたいことや、言いたいことは色々あるだろうが、とりあえず歩きながらにしようぜ。俺の部屋で、ちゃんと話をしよう」
「……わかった」
………………
…………
……
「さてと、どこから話したものか……」
「男は私のこと好き……なの?」
「いきなりそこからか!? いや、態度でわかって危ねぇッ!!」
「ッ!?」
突然横からトラックが突っ込んできて、私をかばって男が突き飛ばされる。
「男!? 男……おとこぉぉぉッ!!」
「だいじょ……うぶだ。とりあえず、きゅうきゅうしゃ……を」
「男? わ、わかった。今すぐに呼ぶから!!」
「………………」
「はやく……はやくきてッ! 男を助けてッ!!」
私はなんとかパニックになりそうな心を押さえ込み、救急車を待つ。
「男なら大丈夫……だよね? 私、信じてるから。……ぜったいぜったい、信じてるからッ!!」
当然、答えは返ってこない。
けれど私には、男が笑ったように見えた。
………………
…………
……
「あれからもう、一月たつんだね」
「………………」
「私はさ、やっぱり男が好きだよ。……いや違うな、大好きだよ。愛してる」
「………………」
「男も私の事好き……って思って良いよね? じゃなきゃあんな事しないよね?」
「………………」
「ほら、もう紅葉がきれいだよ。寒くなってきたし、そろそろ冬が近いね……」
「………………」
「いいかげん、帰ってきてよ。私と話してよ。男がいないと私……私ッ!」
「………………」
あの事故によって、男は意識不明になった。
今は近くの一番大きな病院に入院している。
私は毎日学校が終わるとここに来て、男に話しかける。
お医者さんは原因不明だっていっており、意識が戻るかはわからないそうだ。
……でも私は信じてる。
男は必ず帰ってきてくれるって。
「だって私、ちゃんと好きって言われてないもん……」
「………………」
あの時男は助けに来てくれたけど、それはただの幼馴染みとしてなのか、それとも私が好きだからなのか。
私は好きだからだと信じてる。
けど……。
「ちゃんと言葉で伝えてくれないと、わかんないよ……。男は私の事好き? それともただ幼馴染みとして見過ごせなかっただけ?」
「………………」
「……私待ってるから。男が私に、ちゃんと言葉で伝えてくれるのを待ってるから……」
「………………」
「女さーん、面会終了でーす」
「あ、はーい。……それじゃ、男。また明日ね?」
「………………」
………………
…………
……
「何だかんだで、もう半年近くなるんだね。梅がきれいだよ」
「………………」
「あー……お花見したいなぁ。男と二人で、お花見デート。二人なら、どんな所でも楽しいよね?」
「………………」
「こたえてよ……。はやく帰ってきてよ……男!」
「………………」
「もう来月から私は、三年生だよ? 男と違う学年になっちゃうんだよ!?」
「………………」
「なにか言ってよ……。私、寂しいよ……」
「………………」
「女さーん、面会終了の時間ですよー」
「わかり……ました。それじゃ、今日は帰るね? また明日」
「………………」
………………
…………
……
「もう夏だね。セミがうるさいよ。男と海水浴とか、プールとか行きたいよね」
「………………」
「山に行くのも良いかもね? キャンプとか、家族全員でさ?」
「………………」
「男はどっちが良い? やっぱり海やプール? 私の水着が見たいんでしょ?」
「………………」
「男のえっちー。でも……男にだったら、いい……よ?」
「………………」
「さすがに病室で水着は無理だからさ? はやく帰ってきてよ。この夏は、一度しか無いんだよ?」
「………………」
「女さん、面会終了の時間です」
「はい。後をよろしくお願いします……」
「それが仕事ですから」
「それじゃ、男。また明日ね」
「………………」
「では、失礼します……」
………………
…………
……
「今日何の日か覚えてる? 私と男の誕生日だよ?」
「………………」
「今年の誕生日プレゼントは、なんだと思う?」
「………………」
「男は毎年、私に欲しいものを聞いてくれたよね?」
「私は……さ、手作りクッキーとかだったけど、男はちゃんとバイトして買ってくれたよね……」
「………………」
「私、考えたの。私が今一番ほしくて、同時に男にも喜んでもらえるものって何かな? ってさ」
「………………」
「男……わたし、ね? 私の初めてをあげようと思うの……」
「………………」
「私の初めての……好きって伝えるキス」
「………………」
「私は王子様じゃないし、男もお姫様じゃないけど……」
「………………」
「いいかげん、目を覚ましなさいよ……ん」
私はそのまま男にキスをする。
こんなことで目覚めるわけがないってわかってる。
そんなおとぎ話のようなキセキは、物語の中だけだ。
でも…………。
「ん…………。はぁ……、やっぱり目覚めない……か」
「………………」
「わかってたよ。わかってたけど……」
私は涙をこらえる。
必死に我慢しないと、このまま崩れ落ちてしまいそうだ。
「男……おとこぉ。おと、こぉ……」
嗚咽をもらしながら、私は泣く。
もうあの事故から一年近くたつのだ。
「………………」
「………………」
「……おとこぉ、おとこぉッ!!」
「………………おん、な?」
「……ッ!?」
「……ないて、いる……のか?」
「男!? 男ッ!?」
「泣くな……よ、大丈夫だって、いった……だろ?」
「うんっ! うんッ!!」
「あれ? ここ、って……どこ、だ?」
「○○病院、だよっ。あれからもう……一年、たつんだからっ」
「そう……なの、か。……待たせちまった、な?」
「男のバカっ! 大好きっ! 愛してるッ!!」
「あー……さき、いわれちまった……な。俺も……俺も、女が、好き……だよ。あいして、る」
「男っ! 男ッ!!」
「ははは、女は、甘えん坊……だな」
「うんっ! うんっ!!」
「これからは……いや、これからも、ずっと……一緒だ」
「…………うんっ!!」
………………
…………
……
「これがお父さんとお母さんの馴れ初めよ。良い話でしょ?」
「うんっ! 感動したっ! おとぎ話みたいっ!!」
「そうでしょう? いつか子供も、お母さんにとってのお父さんのような人に、出会えると良いね?」
「うんっ!!」
明日の0時に次話予約してあります。
よろしくお願いいたします