私も好きよ
「お嬢様、お目覚めの時間でございます」
侍女の声でゆっくりと起き上がる。だるい。もう一度ふかふかのベッドに倒れこむ。
「まだ起きたくないわ。レッスンにはもう行かない。ふわふわのオムレツが食べたわ、用意して。それと、お母様とお父様に婚約しなくてもいいように言ってちょうだい」
侍女はちょっと困ったみたいな顔をしてこっちを見てくる。本当にムカつく。比較的有能だし、気に入ってるから、クビにはしないけど、殴ってやりたい。私の手が痛くなるからしないけど。その代わりに使っていないお飾りと化した枕を投げつけてやる。けれど、ムカつく困った顔をして優しく受け止めやがる。もう本当に殴ってやろうかな。
「お嬢様、朝食の準備ができております。旦那様と奥様がお待ちですので、お着替えを」
そう告げるムカつく侍女の言葉を遮るようにもう一つ枕を投げつける。が、結局当たらずに終わる。そのせいでさらにイライラが募っていくが、パパとママを待たせると婚約者の件を聞いてもらえなくなるかもしれないから、仕方なく着替えを受け入れる。
後ろで控えていた他の侍女たちが、いくつか服を持って私の前に立つ。恒例のお洋服選び。毎回すっごく悩む。だって私ってものすごい美人じゃない?その私が着て霞まない服ってあんまりないのよね。あんまりってより、ほぼないからどの服を着たって私の美しさが勝っちゃうから何着てもいいんだけど、同じ服じゃなかろうが前着たものと似てるものとかも着たくないからさらに悩む。
何回も侍女たちをクローゼットと私の前を行き来させて、何着見たかか忘れるぐらいたくさんの服たちを吟味して結局、最初に見せられたものを着る。疲れ果てて少し私への呆れを感じさせる視線を送る馬鹿な新人侍女を睨みつけてから、姿見の前でくるりと一回りしてから食堂へ向かう。
馬鹿な侍女は新人だから今回は許してあげよう、と心の中で女神のように優しいことを考えていても、イライラは治らなくて、ふわふわと浮かぶ光に視線を寄越す。すると嬉しそうに擦り寄ってくるから、気分が浮上する。
この光は精霊でそこらへんの平凡な人間たちには見えないらしい。私には見えてるからよくわからないけれど。
精霊は屋敷のそこらじゅうをふわふわ浮かんでる。一つだけじゃなくてたくさんいて、色彩豊かなんだけど、今日は中級精霊の中でも比較的力の強いのが私の側にいるから、他の下級とか中級の中でも弱いのは家の周りをぐるぐる飛んで家を護ってるらしい。この光曰く。こいつらは私の側にいられればそれでいいみたいだし、可愛いから私もこいつらを気に入ってる。私に懐いてて可愛いし。今も必死にすり寄ってくるのが可愛い。あんまり見かけないけどでっかくて他の人間にも見える上級とか聖級?とかいうやつも私に懐いてて気に入ってる。そもそも精霊って類は私の為になるから嫌いになったりなんてしないけど。
気分も上昇して、浮かれ気分で食堂に行って、比較的好きなもので構成された朝食を食べたら、パパとママに婚約者のこと言い忘れてたのを部屋に戻る途中に思い出して気分が急降下した。
しばらく時間が経ってしまって何を書きたかったか忘れてたので、気の向くまま書いたら訳分からなくなってしまいました。