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☆特別編(2の1) 改造内閣

 寒い日が続いている。我が家も愛奈まなが一人前? に当選して家事委員会に出席するようになり、内閣の改造が行われた。まあ、彼女の場合は委員会出席といっても、もちろん委員として発言できる訳もなく、飽くまでもバブバブと野次を飛ばす一議員としての出席である。

「ほれ! 買ってきてやったぞ」

 父さんが自慢げに威張って母さんに言った。滅多なことで彼が威張れることはないから、今日はいつもより大きめの声だった。

「こんなのしか、なかった?」

 母さんは父さんが買ってきた愛奈用の椅子をシゲシゲと見ながら言い返した。

「なんだ! お前が座る訳じゃないだろ? いいじゃないか、これで…。なにが不足だ?」

「色合いが少しね…。私好みじゃないから…」

 そこへ、じいちゃんがスウ~っとやってきて、割って入った。

「少し派手ですな、確かに…。恭一、換えてきなさい」

「えっ! 今ですか?」

 父さんは寒さに身をすくめた。

「あの色合い、なければ、こんな」

 母さんは乳児用ベッドの方を指さし、次いでエプロンを指した。

「分かった。…じゃあ、もう一度、行ってくるよ。えーと、領収書は…」

 父さんは買った領収書を確認すると、椅子を持って家を出た。議長席のような少し高めの椅子である。実は数日前、そろそろ愛奈もな…という会話が台所テーブルを囲んで成立していたのである。今、テーブルに座る位置は、じいちゃんの対面に父さん、じいちゃんの左横に僕、僕の対面[父さんの右横]に母さんの計四人が座っている形だが、内閣改造により、新たに愛奈のポストを設けよう…というものだった。位置は僕と母さんをはさんで、つまり僕から見れば左90°の位置、母さんからは右90°の位置に座るということだ。だから母さんからは愛奈の左横顔、僕からすれば右横顔が見えるように座るポストである。この案件は全員一致で承認され、愛奈は目出度く独立を認められた格好だ。とはいえ、日本とアメリカのように、母さん抜きの愛奈は有り得ないのだった。両国が対等関係を築くには今後、20年ばかり、かかるように思えた。

 さて、内閣改造にともない、新たに愛奈を見張る役職が設置された。それは風呂のしまい番のように巡るもので、母さん以外の僕、父さん、じいちゃんが巡ぐる役職となった。というのも、愛奈がハイハイをし始め、紐で遠くに行けないようにしてあるものの、なかなか油断ならず、あなどれないからだった。危険なものを飲み込んだり、こわしたり、落としたりetc.の諸事を見張る役職である。じいちゃんは子守りは苦手だと言っていたが、見張り番なら異論はない! と承認に加わり、拒否権は発動しなかった。もちろん、この役職は母さんがいない時だけに適用される特別法の色彩が濃かった。それと、愛奈を入浴させる役職に父さんが任命された。彼自ら買ってでた人事案件の原案承認である。

 かくして、愛奈を含めた新体制の正式な内閣が発足した。タマとポチには身分上の変動がなく、彼等は引き続き湧水家の衛視[護衛官、保安官兼務]を拝命することとなった。

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