表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

モノクロデー

作者: mosuco

 3月14日。世間は可愛らしいパールトーンの配色で飾られていた。

 春の訪れを感じさせるその雰囲気の中で白い文字が踊ってる。

 ―WhiteDay.

 …あぁそうか、今日はそんな名前がついてる日だ。

 先月のこの日、また違った色で溢れていたあのイベントの続きというか、本番というのか…何にせよフワフワと浮かれているのは前回と同じく今回も主役である女性たちだ。

 隣もまさにそんな感じで、カップルらしき二人組が何やら楽しげに会話を交わしてる。

「お返しは三倍返しで」

 不意に聴こえた言葉に、目の端にとまったひとつのポップ。

 ―愛しい人へのお返しに。

 そう書かれた明朝体に、あ、と気付く。

「貰ってない場合はどうするんだろう…」

 思わず口に出してしまったなんとも物悲しい現状。

 だけれど夢中になったカップルはコチラに見向きもせずにキャッキャッと会話を繰り返していた。


「なにこれ」

 帰ってきた目の前に広がる食卓は同居人同様、真っ白なものだった。

「あ、おかえりなさい」

 ヘラリと笑ったひょろ長いエプロン姿の男がやってくる。

 その手にはまた真っ白なサラダボールを持っていた。

 中身もカリフラワーのサラダで、目がチカチカする。

「ねえ。なんなのこれは」

「何って夕飯だよ。ほらほら冷めちゃうよー早く着替えてきなよ」

 白い献立を指してやっても、男は求めていない答えを返して、背中を押してきた。

 いつも以上にヘラヘラしてる彼を訝しく思いながら、とりあえず部屋着に着替えるため自室へと向かった。


「…クリームシチューにカリフラワーのサラダに杏仁豆腐。パンまで白いってどういうことよ」

 本日の献立を呟いた彼女は、尖らせた口にちぎったパンをほうりこむ。

「どうかな?美味しい?」

 モグモグと咀嚼する彼女はマグカップを口につけて流し込むと、ムッと眉間を寄せた。

「飲み物まで牛乳なんて…この徹底ぶりは何」

 置かれたマグカップは彼女専用のシンプルで真っ黒なマグカップ。

 それと彼女が身につけるワンピースも真っ黒だから、真っ白な献立と食器、ついでに白のスエット姿の僕が向かいの食卓で若干浮いているのが残念でならない。

「今日は特別な日だから」

「特別?何かあったの今日?」

 ほどよい熱さのシチューを一さじ飲み込んで答えれば、彼女はまだ分からないようで疑問を投げつけ、カリフラワーを刺した。

「気付かないならいいよ」

 彼女は追求を諦めたのか眉間のシワをほぐして、カリフラワーをかじる。

 …うん、別にいいや。彼女にとって今日も、先月の今日も、普段と変わりない日だというのなら別にいい。

 彼女にとって、僕とこうやって食卓を挟むように普段と変わりないなんでもない日なんだから。


 それでも店先のカップルのように腕を組んでみたいだなんて、考える僕の頭も随分と浮かれきっているようだ。

 最後までお読み頂きありがとうございます。

 モノクロの語源、モノクロームな関係のとある男女の3月14日のお話でした。イベントなんぞ知らん。今日も昨日も明日も変わらず一緒にご飯食べるよ。っていう恋人というよりも夫婦な関係ですね。というかこの彼と彼女は付き合ってるんでしょうかねぇ…。


 ギブアンドテイクで成立する関係よりお互い素のままで当たり前を築く関係の方が素敵だと思います。ちなみにこの男女の設定はふわふわとしか考えてませんのでお好きな解釈をどうぞ。

 ここまで読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ