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第四話 遭遇

「すげぇ・・・・空、飛んでるよ・・・・」


――――操縦席の窓から外の景色を覗き込みながら、フィラが呟いた。


街を出ると、すぐに一面は海になった。

前方に見えるのは、遠くにある水平線だけ。

快晴の空の下、3体のネオゴーレムが順調に空を飛んでいた。


「よそ見してると落ちるわよ」


景色に見とれていたフィラに、アンナが釘を刺す。

フィラは興奮したような声で口を開いた。


「なー、リウ。空を飛ぶのもけっこう気持ちいいもんだな。現実離れしてるけど」

「なんだよ、さっきまで自信ないとか言ってたくせに」

「だって操縦するの案外難しくないし、こんな大自然の中を飛んでいくのってカッコよくない?」

「お前、のん気だな・・・」


リウがあきれたように呟いた。

すると、アンナが会話に加わる。


「ちょっとあんた達。一体ウェンイットのどこに向かうつもりなの?あんな田舎町に何の用?」

「ノエルさんにティズっていう人の所に行くように言われたんです」


リウが答えると、アンナは怪訝そうな声を出した。


「ティズ?あの胡散臭い変わり者の所に?」

「アンナさん、その人を知ってるんですか?」

「知ってるわよ。変な奴よ、あいつ」


アンナの言葉を聞いて、フィラがぽつりと呟いた。


「・・・・どんな人なんだろ」

「さぁ・・・。」


そんな会話をしながら、一行は透き通った海の上を進んでいく。

ずいぶんと高い所を飛んでおり、海面が遠くに見え、空が近かった。

しばらくした後、ふとアンナが声を出す。


「・・・ちょっと、止まって」

「えっ?」


いきなり止まれと言われて、2人は慌てて操縦桿を静止させた。


「どうしたんですか?」

「静かにして」


その言葉に、2人が黙る。

辺りは静かになり、さざ波の音が小さく聞こえてきた。


―――――そのまま数秒間が過ぎた、刹那。


「!!」


突然大きな咆哮がして、3人は上を見上げた。

見ると――――炎の塊のような何かが、こちらに向かって直進してくる。

アンナが声を上げた。


「ファイアバード!?よりにもよってこんな時に・・・!!」

「えっ?」


思わずリウが聞き返した。


「なんですか?あれは?」

「ファイアバードよ!とにかく逃げるわ!ついてきなさい!!」

「えぇっ!?」


瞬間、アンナの乗ったネオゴーレムが急発進した。

訳の分からないまま、2人はそれについていく。

すると、後ろの方でまた咆哮が聞こえた。

振り返って後ろを見たフィラが、声を上げる。


「なんだ・・・あれ!?」


そこにいたのは―――――炎に包まれた、巨大な鳥だった。








見たこともないような鳥だった。

全身が燃え盛る炎で覆われていて、その体は巨大である。

口ばしは鋭く、今はこちらを狙っているようだ。

その鳥は咆哮を上げながら、ネオゴーレムを追いかけてきている。


「なんなんですか!?あの鳥!!」

「言ったでしょう、ファイアバードよ!人間を襲う凶暴な怪鳥で、この辺りに生息しているの。何もこんな時に現れなくったって・・・・!!」


アンナは苛立たしげに言う。

すると、後ろを見ていたフィラが口を開いた。


「っていうか、かなりいっぱいいるんだけど・・・!!」


瞬く間に、3体を追うファイアバードの数は増えていた。

それを見たリウが、呟く。


「今、俺達はファイアバードの群れに襲われてるって事ですか・・?」

「そうよ!」


アンナがそう答えた時、後ろで何匹ものファイアバードが咆哮を上げた。

彼女は後ろをちらりと見ると、声を上げた。


「もっとスピードを出しなさい!あんな大群に追いつかれたら終わりだわ!振り切るわよ!!」

「そんなこと言われたって・・・!!」


2人は必死に操縦桿を握り締めていたが、ファイアバードの方が速度は上だった。

徐々にネオゴーレムとファイアバードの群れの差は縮まっていく。


「おい・・・・これって、かなりやばいんじゃないね・・・?」


フィラが焦りを滲ませながら呟いた。

と、その時。


「わ・・・っ!?」


一番後ろを飛んでいたリウが、思わず声を上げた。

機体が大きく揺れ、目の前が炎に包まれる。


「なんだ・・・!?」


上を見上げると―――――1匹のファイアバードが、機体に向かって炎を吐いている。

ファイアバードは大きな足で機体を何度も叩き付け、その度に機体は大きく揺れた。

瞬間、何匹ものファイアバード達が、リウの乗った機体に襲い掛かる。


「っ!」

「リウ!!」


目の前が炎に包まれる中、リウは必死に操縦桿を握り締めた。

だが、機体が揺れているせいで上手く動かない。


「くそ・・っ!」


機体が激しく揺さぶられる。

刹那。


「清浄なる水よ、我に示せ。天の水門を開き――――その力で、彼の者を襲え!」


アンナの声が響いた。

次の瞬間、海面の水が鋭い刃となって、ファイアバード達に襲いかかる。

水しぶきがあがり、ファイアバードは叫び声を上げながら海に落ちていく。


「あぶなっかしいわね!しっかりしなさいよ!」

「すみません」


アンナに怒鳴られて、リウが畏縮したように答える。

リウは窓越しに落ちていくファイアバードの姿を見て、ほっと息をついた。

そして、傾いた機体を元に戻そうと操縦桿を握った時。


「!?」


再び大きな揺れが起こり、視界がガクンと下がった。

窓から覗き込むと、1匹のファイアバードが、機体の足をしっかりと掴んでいる。

それは咆哮を上げると、機体を落とそうと思い切り下に引っ張った。


「うわっ!?」


瞬間、機体は一気に下へ引きずられる。

慌てて操縦桿を動かそうとした時、機体はファイアバードが引っ張る力のままに、落下し始めた。

操縦桿を動かしたが、大きな力で機体を引きずられ、まるで自由がきかない。

落下する速さが加速していく。


「ブレーキをかけて!!早く!!」


アンナが叫ぶ声が聞こえたが、あまりの速さで落下しているため鮮明に聞こえない。

残された2体のネオゴーレムの姿が、徐々に小さくなっていく。


「――――っ!」





リウが乗ったネオゴーレムは、ファイアバードもろとも海へと落ちていった。






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