表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

視界

掲載日:2026/03/12

短編です

 目の角膜を移植した。

医者から説明をされたけど、よくわからない、カタカナの名前の病気になって、すでに7年が経っていた。発覚してすぐは、難病だから治りようがないと言われていたし、だんだん狭まる視界に、もう半分諦めていたのだけれど、どうやら海外での研究が進んで、角膜を移植すれば、治すことが出来ると言う。その話を聞いて、不安にはなったけど、また外の世界を見ることが出来るなら、と誓約書にサインした。

 手術は無事成功して、家に帰ることが出来た。

「お母さん良かったね」

「えぇ、これで転ばずに済むわ」

 娘が心配して付き添ってくれたけど、視界は良好。体だって、今のところどこにもガタはきていない。だからまだ、一人でこの家に住み続けられそうだ。

「じゃぁ、何かあったら連絡してね」

「うん、ありがとう」

 娘が帰って、ひと段落。安心できる我が家に帰ってこられてホッとした。

 病院はやってはいけないことが多くて窮屈だったけど、まぁ、おかげで目を治してもらえたんだ、文句は言えない。

 冷蔵庫を開くと娘が作り置きを数種類、置いて行ってくれていた。旦那がいた時はすぐ食べきってしまったけど、一人だとどうにも量が食べられない。悪くしないうちに食べきれるかしら。

 サラダと青魚の南蛮漬け、ご飯をよそって軽く食べて、今日は早めに就寝した。


 気が付くと私は、暗い路地裏をさまよっていた。誰かが追いかけてくる。ドキドキと心臓が高鳴る。懸命に足を動かして逃げるけど、足音が近づく方が早い。怖い、こっちに来る・・・。


「はっ・・・」

 目が覚めた。嫌な夢。疲れたのかしら。

 次の日の昼、娘の作り置きを食べて、椅子に座ったままウトウトとしてしまった。思ったより体力は削られていたのかも。


 また同じ路地裏。ここは、海外?見慣れない風景。よく見ると私、裸足のままだわ。それでも構わず息を殺しながら走る。路地を曲がって、次の角を曲がって、ゴミ箱の裏に身をひそめる。また足音が近づいてくる。怖い、助けて。


 そう思ったら目が覚めた。あの足、私の足じゃなかったわ。若い男の人の足の様だった。

 同じような夢を続けてみるなんて初めて。なんだか嫌な夢。

気晴らしに散歩にでも出かけようかしら。幸いうちは海辺の町だから、散歩コースは豊富にある。

海風に吹かれながら歩くと、ちょっとだけ気持ちは晴れてくる。

歳をとるとちょっと入院するだけで体力を消耗するわねぇ。

 いつもよりも短いコースで帰ってきたけど、やっぱり疲れた。夕飯を食べる前に、少し仮眠を取ろう。

 ベッドにもぐりこんでほどなくして、私はまたあの夢をみた。

 懸命に走って、逃げて、でも結局誰かに捕まって、殴られて、気を失った。そのあとは、今日私が見た海辺の風景に、夢の情景が変わっていた。何とも穏やかで、清々しい気持ちで目が覚めた。



——変な夢ねぇ——

そう、変な夢。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ