残クレアルファードでドライブに行こう
※本作はフィクションです。実在の法律・人物・団体とは一切関係ありません。
「博士!車買いましょう。クルマを買って一緒にドライブしましょう!」
「なんじゃ助手くん、ヤブから棒に?」
「いま、残クレアルファードってのが流行ってるんです。大きな車がお得に手に入るんです。
買いましょう。そして僕を助手席に乗せましょう!
さあ!」
「手に入る…のぅ。
お得かどうかは利用する人の考え方にもよるが、簡単に手には入らんよ。」
「え?どういうことですか?」
「順を追って話そうか。」
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残クレというのは、正しくは【残価設定型クレジット】という。
まず契約期間と契約期間満了後の下取り価格(残価)をきめ、その分を差し引いた金額でローンを組む仕組みじゃ。
利用する側にとってみれば、月々の支払額が抑えられるというメリットがある。」
「? もう少し詳しく。」
「うーんとな。
例えば600万円の車が欲しいとする。これを5年ローンで買おうとすれば、月々の支払は幾らじゃ?」
「面倒なので金利は無視しますね「おいっ!」。えーと…」
【 600万円÷5年÷12か月=10万円/月 】
「月10万円ですね、…って高い!
とても手が出ませんよ。」
「まったく…まぁ良い。この際だからこのまま進めよう。
では、ディーラーが5年後に300万円で買い取る約束で、300万円だけ払うとすると、どうなる?」
「金利無視しちゃって良いんですね?」
【 300万円÷5年÷12か月=5万円/月 】
「月5万円…まだ高いですけど、これなら手が届きそう、かも。」
「そう、手が届く。…届いちゃうんじゃよ。」
「なんか含みのある言い方ですね?」
「まぁの。
月々の支払額を抑えることで、本来収入的に手が届かないはずの人でも、手が届く。
これが残クレの大きな『ウリ』じゃな。
通常のローン購入の場合、10年なんかの長期ローンは基本存在せんから、月々の支払額を抑えるにも限界がある。
月々の支払額を抑えながら高額な車に乗りたい場合、事実上残クレ一択じゃろうの。」
「凄いじゃないですか。夢のような仕組みですね!」
「5年間は、の。
しかし、5年間お金を払っただけでは、5年後自分の手元には残らん。」
「5年後はどうするんですか?」
「方法は大きく分けて3つじゃ。」
①ディーラーに返却する。
「車が無くなったら困りますよ?」
「わしに言われても…元々そういう契約じゃし。」
②買い取る
「残り300万円を払うんですか?無理ですよぅ!」
「まあ、有ったら最初から払うわな。
一応言っておくが、再度ローンを組むことも可能じゃ。元の契約より利率は上がるがの。
元が3%なら…6%といったところかのぅ。」
「えー。」ブーブー
③新しい車に乗り換える
「これを選ぶ人が一番多いかの。車を返却し、残価をチャラにしてのリプレイじゃ。」
「まぁ…僕もそれを選ぶしかなさそう。」
「そう。その吐露は核心を突いておる。
多くの人は、5年後に③を選ばざるを得ない状況に陥るのじゃ。
そして車を必要とする限り、無限ループの完成じゃの。」
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「さてと、ここまでは『残価は一定』という前提で説明したがの。
残価は下がる可能性がある。最悪ゼロにもなる。」
「あ、それは知ってますよ。
【走行距離制限(月1,000kmなど)】
【事故歴・修復歴なし】
【内外装の傷や汚れが少ない】
【違法改造をしていない】
等々…。
条件をクリアしないと、安くなっちゃうんですよね。」
「左様。そして安くなると、契約満了時点で差額が請求される。」
「まあ、それはしょうがないような気がします。」
「しかしの、翻ってレンタカーを考えてみぃ。確かに割高じゃが、車両保険に入っておるから、万が一全損しても、利用者が全責任を負うことはないぞ。
そう考えると、車両保険に入っていないレンタカーみたいなモノではないか?
わしはそう思う。」
「そう言われると、そんな気もしますね。」
「それを横においても、年中傷をつけぬよう、汚さぬよう、細心の注意を払わねばならぬ。
初心者なんか尚更じゃ。
そして、それでも消えぬ貰い事故のリスク…。
ストレスが半端無いわい。」
「子供と動物は鬼門ですね。」
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「…ここまで話して大分やる気も失せたようじゃが、最後に金利の話もしておこう。」
「さて助手くん。600万円の車を5年ローンで購入します。金利は3%です。支払い金利総額はいくらでしょう?」
「えーと、600万円×3%×5年で、90万円?」
「…お前さんからは絶対お金を借りんぞ。
あのな。5年の間、元本は徐々に減るのじゃぞ?」
「あそっか、
てことは、5年を通して平均すると、残額は、(600-0)÷2=300万円だから…」
【 {(600万円-0万円)÷2}×3%×5年=45万円 】
「そう。
まあ、本当はもっと複雑な計算をするんじゃが、簡単に考えるならこれでいいじゃろう。
『当たらずとも遠からず』じゃ。」
「へへへ。」
「では次。
車両価格600万円、残価設定300万円の残クレ契約。期間は5年、金利は3%
これはどうじゃ?」
【 {(300万円-0万円)÷2}×3%×5年=22.5万円 】
「でしょ?」
「ブーッ!不正解。正解はこれ。」
【 〔{(300万円-0万円)÷2}×3%×5年〕+〔300万円×3%×5年〕=67.5万円 】
「えっ!? どこから来たんですか〔300万円×3%×5年〕!?」
「残価分じゃよ。」
「嘘っ!?何でっ!?」
「まあ、そう思うのも無理は無いか。
…ローンはディーラーでは無く金融機関の領分じゃろ?
その金融機関からしてみたら、600万円全額肩代わりしていることには違いないんじゃ。
300万円が残価でー、なんてのは、ディーラーと客の間の話じゃ。知ったこっちゃない。
だから、客は600万円分の利息をきっちり取られるのじゃ。
しかも、期間中、残価分300万円の元本は1円も減らん。」
「エグいですね…。」
「じゃろう?筆者も調べた時そう思ったらしいぞ。」
「…メタいですね。」
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「あーぁ、やっぱりそうそう旨い話は無いんですねぇ〜。
それにしても残クレってひどいですね!詐欺ですよ詐欺!」
「詐欺ではなく一応立派な金融商品じゃよ。
今回話したようなデメリットを理解したうえで、いざという時のリスクも吸収できる余裕があり、そのうえで『今は手元に現金を残しておきたい』というような考えの人には、有力な選択肢の一つではあろう。
擬似的にではあるが長期ローンを組む手段としても使えるしの。
問題は、そのデメリットを意図的に分かりにくくしているところじゃ。
月々の支払額ばかりを前面に押し出し、支払い能力が乏しい人にも手が届くように誤認させる。
なおかつ金利もしっかりいただく。
詐欺にならんラインで、情報の非対称性を利用する巧妙な手口じゃな。」
「ぶー…」
「個人的には、ライフスタイルに有った大きさの車を中古で買って、それを10年くらい大事に乗るのが一番お得だと思うのぅ。」
「そうですね…。小さい方が距離も近いですしね。」
「何の?」
「それはそうとな。
そもそも、わし運転できんぞ。」
「え?免許ないんですか?取りましょうよ。」
「取れんよ。わし、まだ16歳じゃもの。」
「ホワッツ!?
だだだって、『博士』って…。それに、その口調!」
「飛び級に飛び級を重ねての。
口調はあれじゃ、おじいちゃん子での。」
「雑! 設定の説明が雑!!」
「ていうか君、そもそも毎日わしのビジュアルは見てるのだから、若いのは知っておろうが?」
「それにしたって!!
それにしたって、僕より年下!?年下、年下かぁ〜〜、、、
………………アリですね。
全然アリです!アリでした。博士!」
「何が?」
**********
ちょうど同じ頃。都内某所。
「おぉ、秘書くん!ちょうど良いところに。
この武器商人がな。『残クレF-22』という素晴らしい商品を提案してきてな!」
「ブキウルヨー」
「……総理。知らない人をホイホイ官邸に上げないでください。
あと仕事してください。」
おしまい




