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残クレアルファードでドライブに行こう

作者: ひろ
掲載日:2025/12/19

※本作はフィクションです。実在の法律・人物・団体とは一切関係ありません。

 「博士!車買いましょう。クルマを買って一緒にドライブしましょう!」


 「なんじゃ助手くん、ヤブから棒に?」


 「いま、残クレアルファードってのが流行ってるんです。大きな車がお得に手に入るんです。

 買いましょう。そして僕を助手席に乗せましょう!

 さあ!」



 「手に入る…のぅ。

 お得かどうかは利用する人の考え方にもよるが、簡単に手には入らんよ。」


 「え?どういうことですか?」


 「順を追って話そうか。」




 **********


 残クレというのは、正しくは【残価設定型クレジット】という。

 まず契約期間と契約期間満了後の下取り価格(残価)をきめ、その分を差し引いた金額でローンを組む仕組みじゃ。


 利用する側にとってみれば、月々の支払額が抑えられるというメリットがある。」


 「? もう少し詳しく。」


 「うーんとな。

 例えば600万円の車が欲しいとする。これを5年ローンで買おうとすれば、月々の支払は幾らじゃ?」


 「面倒なので金利は無視しますね「おいっ!」。えーと…」



【 600万円÷5年÷12か月=10万円/月 】



 「月10万円ですね、…って高い!

 とても手が出ませんよ。」


 「まったく…まぁ良い。この際だからこのまま進めよう。


 では、ディーラーが5年後に300万円で買い取る約束で、300万円だけ払うとすると、どうなる?」


 「金利無視しちゃって良いんですね?」



【 300万円÷5年÷12か月=5万円/月 】



 「月5万円…まだ高いですけど、これなら手が届きそう、かも。」


 「そう、手が届く。…届いちゃうんじゃよ。」


 「なんか含みのある言い方ですね?」



 「まぁの。


 月々の支払額を抑えることで、本来収入的に手が届かないはずの人でも、手が届く。

 これが残クレの大きな『ウリ』じゃな。

 通常のローン購入の場合、10年なんかの長期ローンは基本存在せんから、月々の支払額を抑えるにも限界がある。


 月々の支払額を抑えながら高額な車に乗りたい場合、事実上残クレ一択じゃろうの。」



 「凄いじゃないですか。夢のような仕組みですね!」


 「5年間は、の。

 しかし、5年間お金を払っただけでは、5年後自分の手元には残らん。」


 「5年後はどうするんですか?」


 「方法は大きく分けて3つじゃ。」




①ディーラーに返却する。

 

 「車が無くなったら困りますよ?」


 「わしに言われても…元々そういう契約じゃし。」



②買い取る

 

 「残り300万円を払うんですか?無理ですよぅ!」


 「まあ、有ったら最初から払うわな。

 一応言っておくが、再度ローンを組むことも可能じゃ。元の契約より利率は上がるがの。

 元が3%なら…6%といったところかのぅ。」


 「えー。」ブーブー

 


③新しい車に乗り換える


 「これを選ぶ人が一番多いかの。車を返却し、残価をチャラにしてのリプレイじゃ。」

 

 「まぁ…僕もそれを選ぶしかなさそう。」

 

 「そう。その吐露は核心を突いておる。

 多くの人は、5年後に③を選ばざるを得ない状況に陥るのじゃ。

 そして車を必要とする限り、無限ループの完成じゃの。」




 **********



 「さてと、ここまでは『残価は一定』という前提で説明したがの。

 残価は下がる可能性がある。最悪ゼロにもなる。」



 「あ、それは知ってますよ。


 【走行距離制限(月1,000kmなど)】

 【事故歴・修復歴なし】

 【内外装の傷や汚れが少ない】

 【違法改造をしていない】

 等々…。


 条件をクリアしないと、安くなっちゃうんですよね。」



 「左様。そして安くなると、契約満了時点で差額が請求される。」


 「まあ、それはしょうがないような気がします。」


 「しかしの、翻ってレンタカーを考えてみぃ。確かに割高じゃが、車両保険に入っておるから、万が一全損しても、利用者が全責任を負うことはないぞ。

 そう考えると、車両保険に入っていないレンタカーみたいなモノではないか?

 わしはそう思う。」


 「そう言われると、そんな気もしますね。」


 「それを横においても、年中傷をつけぬよう、汚さぬよう、細心の注意を払わねばならぬ。

 初心者なんか尚更じゃ。

 そして、それでも消えぬ貰い事故のリスク…。

 ストレスが半端無いわい。」


 「子供と動物は鬼門ですね。」




 **********



 「…ここまで話して大分やる気も失せたようじゃが、最後に金利の話もしておこう。」



 「さて助手くん。600万円の車を5年ローンで購入します。金利は3%です。支払い金利総額はいくらでしょう?」


 「えーと、600万円×3%×5年で、90万円?」


 「…お前さんからは絶対お金を借りんぞ。

 あのな。5年の間、元本は徐々に減るのじゃぞ?」

 

 「あそっか、

 てことは、5年を通して平均すると、残額は、(600-0)÷2=300万円だから…」



【 {(600万円-0万円)÷2}×3%×5年=45万円 】



 「そう。

 まあ、本当はもっと複雑な計算をするんじゃが、簡単に考えるならこれでいいじゃろう。

 『当たらずとも遠からず』じゃ。」


 「へへへ。」



 「では次。

 車両価格600万円、残価設定300万円の残クレ契約。期間は5年、金利は3%

 これはどうじゃ?」



【 {(300万円-0万円)÷2}×3%×5年=22.5万円 】


 「でしょ?」



 「ブーッ!不正解。正解はこれ。」



【 〔{(300万円-0万円)÷2}×3%×5年〕+〔300万円×3%×5年〕=67.5万円 】



 「えっ!? どこから来たんですか〔300万円×3%×5年〕!?」


 「残価分じゃよ。」


 「嘘っ!?何でっ!?」


 「まあ、そう思うのも無理は無いか。


 …ローンはディーラーでは無く金融機関の領分じゃろ?

 その金融機関からしてみたら、600万円全額肩代わりしていることには違いないんじゃ。


 300万円が残価でー、なんてのは、ディーラーと客の間の話じゃ。知ったこっちゃない。

 だから、客は600万円分の利息をきっちり取られるのじゃ。

 

 しかも、期間中、残価分300万円の元本は1円も減らん。」


 「エグいですね…。」


 「じゃろう?筆者も調べた時そう思ったらしいぞ。」


 「…メタいですね。」




 **********



 「あーぁ、やっぱりそうそう旨い話は無いんですねぇ〜。

 それにしても残クレってひどいですね!詐欺ですよ詐欺!」



 「詐欺ではなく一応立派な金融商品じゃよ。


 今回話したようなデメリットを理解したうえで、いざという時のリスクも吸収できる余裕があり、そのうえで『今は手元に現金を残しておきたい』というような考えの人には、有力な選択肢の一つではあろう。

 擬似的にではあるが長期ローンを組む手段としても使えるしの。


 問題は、そのデメリットを意図的に分かりにくくしているところじゃ。


 月々の支払額ばかりを前面に押し出し、支払い能力が乏しい人にも手が届くように誤認させる。

 なおかつ金利もしっかりいただく。

 詐欺にならんラインで、情報の非対称性を利用する巧妙な手口じゃな。」


 

 「ぶー…」


 「個人的には、ライフスタイルに有った大きさの車を中古で買って、それを10年くらい大事に乗るのが一番お得だと思うのぅ。」


 「そうですね…。小さい方が距離も近いですしね。」


 「何の?」






 「それはそうとな。


 そもそも、わし運転できんぞ。」


 「え?免許ないんですか?取りましょうよ。」


 「取れんよ。わし、まだ16歳じゃもの。」


 「ホワッツ!?

 だだだって、『博士』って…。それに、その口調!」


 「飛び級に飛び級を重ねての。

 口調はあれじゃ、おじいちゃん子での。」


 「雑! 設定の説明が雑!!」


 「ていうか君、そもそも毎日わしのビジュアルは見てるのだから、若いのは知っておろうが?」


 「それにしたって!!

 それにしたって、僕より年下!?年下、年下かぁ〜〜、、、


 ………………アリですね。


 全然アリです!アリでした。博士!」


 「何が?」






 **********



 ちょうど同じ頃。都内某所。


 「おぉ、秘書くん!ちょうど良いところに。

 この武器商人がな。『残クレF-22』という素晴らしい商品を提案してきてな!」


 「ブキウルヨー」


 「……総理。知らない人をホイホイ官邸に上げないでください。

 あと仕事してください。」




おしまい

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