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第二三章

前回のお話は?

魔法学院への招待


竜との激闘の夜が明けた。

城都は瓦礫の山と化し、まだ煙が立ち上っていた。

リュウは剣を手にしたまま、燃え残る石畳を見下ろした。


「……俺たち、勝てたのか?」


ひびきが小さく微笑んだ。

「少なくとも、今はね」


その時、エルハルト賢者が歩み寄ってきた。

銀髪に煤がかかっていたが、その瞳は揺るぎなく澄んでいる。

「お前たちにはまだ学ぶべきことがある。蒼炎の制御、獣魔の真なる呼び声、そして仲間の力を結ぶ術――」


老人は杖を掲げ、空に淡い光を描いた。

現れたのは、大きな門。刻まれたルーンが淡く輝いている。

「王都の北に存在する《星辰魔法学院》へ行け。そこは若き魔術師たちが集い、古代の叡智を学ぶ場所だ」


リュウは息をのむ。

「魔法……学校?」


美咲は腕を組み、挑戦的に笑った。

「いいじゃない。私の獣魔も、そこでならもっと強くなるかもね」


翔が静かに頷く。

「俺たちギルドがこれから進むには、知識と力が必要だ。……リュウ、行こう」


リュウは仲間たちの顔を順に見渡した。

ひびきの眼差し、美咲の笑み、翔の冷静な視線。

そして――自分の胸に宿る蒼炎。


「分かった。俺たちは――魔法学校で力をつける」


門がゆっくりと開いた。

新たな冒険が、その向こうで待っていた。


入学試験の門


リュウたちが《星辰魔法学院》の門をくぐると、眩い光が弾けた。

次の瞬間、彼らは広大な石畳の広場に立っていた。

天を突くように聳える尖塔、浮遊する水晶の書庫、宙を泳ぐ幻獣の姿――そこは、まさに魔法の理想郷だった。


「これが……魔法学校……」

ひびきが息を呑む。


広場にはすでに数百人の若者たちが集まっていた。

彼らはそれぞれ、杖や剣、魔導書を携え、互いを警戒しながら目を光らせている。


「どうやら俺たちだけじゃないみたいだな」

翔が小声で言う。


その時、宙から鐘の音が響き渡り、学院長と思しき壮年の魔導士が現れた。

白いローブに蒼の紋章を刻んだ姿は威厳に満ちている。


「諸君――よくぞ来た。これより星辰魔法学院の入学試験を開始する」


ざわめきが一気に広がる。

老人は杖を振り、広場全体に光の壁を張った。


「試験は三つの課題から成る。

一つ、己の魔力を示すこと。

二つ、仲間との連携を証明すること。

三つ――学院の守護獣を倒すこと」


瞬間、地面が揺れた。

広場の中央に裂け目が走り、そこから巨大な影が姿を現す。

銀の鱗を纏い、双角を持つ獣――星獣ルナグリフォン


「おいおい、最初からあんなのかよ!」

美咲が獣魔を召喚しながら叫ぶ。


リュウは剣を握り、胸の奥に蒼炎の熱を感じた。

「行くしかない……! 俺たちで道を切り開くんだ!」


鐘が二度鳴り響き、試験の戦いが始まった。


 星獣との試練


広場に立つ星獣ルナグリフォンは、銀の翼を広げた。

月光を思わせる輝きが鱗から散り、見上げるだけで息を呑む威容だ。


「リュウ!」

ひびきが詠唱を始め、周囲に防御結界を展開する。

「翼の一撃を防げるのは一度きりよ!」


「なら、俺が前に出る!」

リュウは剣を抜き、蒼炎を宿した刃を構える。

胸の鼓動が速くなる。炎は呼べば応えるが、制御を誤れば仲間をも焼き尽くす。


美咲は獣魔を召喚した。

黒豹の影が彼女の足元から飛び出し、ルナグリフォンへ駆ける。

「さぁ、行け! 爪をその鱗に刻みつけて!」


だが、グリフォンは一瞬で動いた。

銀の翼が地を薙ぎ払い、衝撃波が広場全体を揺るがす。

召喚獣は吹き飛び、石畳にひびが走った。


「ぐっ……! やっぱり硬すぎる!」

美咲が歯を食いしばる。


その時、翔が冷静に指示を飛ばした。

「リュウ、翼を抑えろ! ひびきは支援結界を! 俺が弱点を突く!」


リュウはうなずき、全力で駆け出した。

蒼炎が刃に宿り、軌跡が蒼い弧を描く。

「これで――!」


ルナグリフォンの翼と炎の刃が激突し、眩い閃光が広場を覆った。

衝撃で空気が震え、観戦していた他の受験者たちが悲鳴を上げる。


「すごい……あれが、伝承の蒼炎……!」

誰かの声が聞こえた。


だが、グリフォンは怯まない。

咆哮と共に口から光の奔流を放った。


「来るぞ――!」

翔の叫び。


リュウは決死の覚悟で踏み込む。

蒼炎の熱が、限界を超えて燃え上がった。


――その時。

観客の中から、一人の少年が結界を破って前に飛び出した。

漆黒のローブ、金色の瞳。

「お前らじゃ、こいつには勝てない」


少年は片手を掲げ、雷を纏う。


「俺が、本当の魔導士の力を見せてやるよ」


 雷の魔導士


漆黒のローブを翻した少年は、稲妻を纏った掌をルナグリフォンに向けた。

「――《雷霆槍 (ライトニング・ランス)》!」


眩い閃光が広場を貫き、星獣の巨体に直撃する。

鱗が焦げ、グリフォンが初めて苦痛の咆哮を上げた。


「今の……すごい」

ひびきが驚きの声を上げる。


だがリュウは、その少年から目を離せなかった。

力強い眼差しと、どこか挑発するような笑み。

「お前、誰だ……?」


少年は肩をすくめる。

「名乗るのは後だ。――今は生き延びるのが先だろ?」


彼の周囲に雷光の結界が走り、次々と魔法陣が展開する。

「俺の名はレオン。雷の系譜を継ぐ者だ」


レオンは再び稲妻を放ち、リュウに叫んだ。

「蒼炎の小僧! 翼を抑えろ! 俺が心臓を撃ち抜く!」


「……小僧だと?」

リュウは歯を食いしばりながらも、言われた通りに動いた。

蒼炎を纏った剣を振り上げ、ルナグリフォンの翼を斬り裂く。


一瞬、守りが崩れた。

そこへ、レオンの雷霆槍が心臓を貫いた。


轟音。

閃光。


巨体の星獣は光の粒子となって霧散していった。


広場に静寂が戻る。

試験を見守っていた学院の教師たちがざわめき、観客の受験者も息を呑んでいる。


「おいおい……やるじゃないか」

美咲が唇を歪めて笑った。


だがリュウは複雑な思いを抱えていた。

「……俺たちの力だけじゃ、倒せなかった……」


レオンは鼻で笑う。

「だから言っただろ。お前らじゃ無理だって」


その言葉にリュウの拳が震える。

だが同時に、胸の奥の炎が、いつになく強く燃え上がっていた。


――新たなライバルの登場が、彼の決意を試そうとしていた。


――続く。

次回も楽しみに

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