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第19章

瞬間!

黒き塔の王


涼たちが呆然と立ち尽くす草原の中央。

突然、空気が重くなった。


――ズゥゥン。


大地を揺るがすような重圧。

黒き塔の影が伸び、その中心から歩み出てくる巨躯の人影があった。


漆黒の甲冑を纏い、王冠のごとき角を持つ兜。

その瞳孔は赤く燃え、全身からは魔力の奔流が溢れ出している。


「異界よりの来訪者たちよ」


低く、重く響く声。

それは威厳と恐怖を同時に纏っていた。


涼は息を飲み、喉が乾くのを感じた。

ただ一言で分かる。――これは、この世界の「王」だと。


「我が名は〈黒塔の王〉ゼルディアス。

 貴様らの魂の匂い……この地のものではないな」


翔が前に出て、反射的に構えた剣が震えていた。

「な、なんだこいつ……ただのNPCじゃ……ない……」


「待って」美咲が震える声を漏らす。

彼女の召喚獣の白狼は牙を剥いたが、すぐに尻尾を巻き、地に伏せた。

――主さえも庇えぬほどの圧倒的存在感。


ゼルディアスは、ゆっくりと兜を傾ける。

「この世界に召喚された時点で、貴様らは“駒”だ。

 抗うか、従うか……選ぶがよい」


涼の胸に、戦慄と共に不思議な確信が走った。

――ここはもうゲームじゃない。現実だ。

しかも、目の前の“王”は、従うだけでは終わらない相手。


彼らの異世界での試練は、この瞬間から始まった。


王の試練


黒塔の王ゼルディアスの圧に膝をつきそうになる涼たち。

その重苦しい沈黙を破ったのは、王の言葉だった。


「――試すとしよう。貴様らがただの迷い子か、それとも……運命を変える異界の者かを」


ゼルディアスが掲げた黒剣が大地を叩く。

瞬間、地面から魔法陣が浮かび上がり、火花を散らす。


そこから姿を現したのは、漆黒の騎士と巨獣たち。

甲冑に覆われた騎士は十体、背後に控えるは三頭の魔獣――翼を持つ狼。


「これが“試練”……?」涼が呟いた。

喉が渇き、足が震える。だが胸の奥にまだ蒼炎の残り火がある。


翔が歯を食いしばり剣を構えた。

「……やるしかねぇだろ!」


美咲は白狼を召喚し、杖を振り下ろす。

「来なさい、〈影喰らいの群れ〉!」

虚空から現れたのは漆黒の獣たち――彼女の獣魔術が呼び出す影の従者。


ひびきは短剣を抜き、涼の隣に立つ。

「涼、あんたの炎がなきゃ突破できないわよ」


涼は深く息を吸い、震える手を胸に当てた。

――守るんだ。みんなを。


その瞬間、蒼炎が彼の掌に灯る。

周囲の魔獣の赤い瞳が一斉にこちらを向いた。


「試練の始まりだ」

黒塔の王が宣告する。


夜空を裂くように、戦いが始まった。

扉は開いた

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