第11章
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森に潜む緑の刃
エルフの弓が緊張にきしむ中、上空から竜騎士の影が急降下した。
黒竜の背から飛び降りた騎士が、鋭い槍を構え、一行めがけて突進してくる。
「避けろっ!」
土を蹴り上げ、槍の穂先がベアーの喉元を狙う。風を裂く音が耳をつんざき、鋼のきらめきが目前に迫る。
間一髪で身体をひねったものの、槍の軌跡が肩をかすめ、熱い血飛沫が飛び散った。
「チッ、狙いが甘かったか……!」
騎士は槍をくるりと回し、次の一撃を狙って間合いを詰める。
だがその動きに呼応するように、周囲のエルフたちも同時に前進した。
弓弦を鳴らし、矢じりが雨のように構えられる。
まるで槍と矢が同時に牙を剥く、死の挟撃。
「ここで散るわけにはいかねぇ!」
ベアーが吠え、紅く光る片目がぎらりと輝いた。
彼の背から噴き出すように、得体の知れぬ力が揺らぎ始める――。
槍が閃光のように走った。
次の瞬間、片目のベアーの巨体が地に崩れ落ちる。
「ぐっ……は……」
喉奥から血泡が溢れ、赤い飛沫が地面を濡らす。
エルフの矢雨が止み、森の中が一瞬静まり返った。
騎士の槍は深々と胸を貫いていた。
ベアーの片目はぎらついたまま空を見上げていたが、やがてその光も鈍くなっていく。
「……お前……ら……進め……」
最後に残った息を絞り出すように吐き、巨体が完全に沈黙した。
それは仲間を逃がすための、ただ一人の犠牲。
ドラゴン騎士団の黒竜が咆哮を上げ、エルフたちは歓声を上げて取り囲む。
森の緑がざわめき、風が血の匂いを攫っていった。
残された者たちの胸に焼き付いたのは、圧倒的な死と、抗えぬ力の差。
極限のサバイバルは、ここからさらに苛烈さを増していくのだった――。
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