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「まズはこノ方ノ定期テストノ結果一覧をご覧くださイ」

 春日は海流の今までのテスト結果がわかりやすくまとめられた資料をウェアラブルPCのディスプレイに表示して2人に見せつけた。


 聖良の魔眼の異能が適度に生かされた海流の成績は入学以来上の中のまま、公爵の継嗣らしくちょうどよく目立ちも下がりすぎもしない良い感じの位置取りをして来たと海流は自身は自負している。

 定期試験での不正がバレないように、授業について行けてない時も板書写しだけはしっかりして来たし、テストの解答も微妙な塩梅でミスしちゃったなー?な感じで外す調整には苦労して来たものだ。

 ちなみに「何故そう言う答えを出したのか?」と言う教師からの指摘も上手く躱せるように『未来視』するのにも寿命を削って来た。


 ほんと、よくやって来た、俺。

 海流は心の中でうんうんと頷く。

 あ?真面目に勉強の方に心を砕け、だと?。

 んなもん寿命削るよりキツいわ。


「お次ワ実技の動画にナりマす」

 夏日も春日の交渉術に乗り掛かって、スマートウォッチからホログラムを空中に描き出すと海流の実技動画を展開してみせる。

 そこには無様ながら果敢に魔術に取り組む海流が日々奮闘している……ように急いで編集したっぽい姿があった。


 あまりにもへっぽこだが、俺の名誉の為に言っておきたい事がある。

 俺は運動神経だけならサッカーでもバスケでも割と動けるんだ!。全国総体だって行った!。

ただし魔術が絡んだスポーツやド直球な魔法を扱う実技には4柱のクソ精霊が一切力を貸してくれねーからなす術がねえってだけで!。

 俺の基礎運動神経はすこぶる良い!以上!。


 つーか、夏日よ?何で動画とか持ってんだ?。基本魔術教室の時間はサボって来たから貴重っちゃー貴重だが。ふつーにハズいんで後で鬼RINEして聞き出しちゃる。


「コの通り、コの方は実技以外は優秀な生徒デあるトご理解頂けたカと存じマす」

「ほんとだ。古代魔法学以外に魔法薬学とかも『実技』以外の『筆記』だけは凡ミス以外しないのに、飛行術とか実技は全部下から1番目しかないとか、偏りがすごーい」

「ボロ雑巾のさまが痛々しいな。キミも来年は卒業するのだろう?大丈夫なのかい?」


「うっせえわ」と言いたいが今は我慢だ、俺。

 とりあえずなんか意味ありげに首を振っておく。


「ふむ、これも作戦の一部だ、と?。流石は将来を約束されている僕と取り引きをしようと言う者だ。面構えが違うな」

「そうなの?」

「ふっ……」

 海流は再び自身たっぷりに口の端を引き上げてみる。


 違います。てか、パイセン。俺の親父は公爵、俺様はアンタの親父より遥かに上のこの国の宰相の息子っす。


 たーぶんパイセンより俺の方が将来は上のポジついちゃうんじゃねーかなー?。まあ俺がお袋の『未来視』通りに「楽しい学生生活♪」が送れると言う、大学院までの学生の間に錬石術師になれたら、の話にはなるが。


 くっ……!。大学院か…?やっぱそこまで俺様の「錬石術師」の異能完全開化は持ち越しか?。

 後何年後よ?お袋、そこんところ詳しく『視』てない?。

 ……まあ、死に際に『視』たんだもんな、暇無かったっつってたもんな。

 でもヒントとか、無い?あ、そう。デスヨネー。


「おほん!ボクが言イたいノは、兎ニも角ニもこノ『筆記』の実力ヲもって海流さんは『卒業試験のサポーター』の任ヲ仰せつかっタと言ウ事デす」


 堂々した風で夏目が胸を張った。


 そう来たかー『俺様』。

 具体的に何すんのか知らんけど。

 まあそう言う事なら話を合わせますか。


「サポーター?テスターじゃなくて?」

 ぴょこんとユラが跳ねるのを海流は手を振って制した。

「どちらもっつーこった。俺様は優秀なテスターであり、サポーターをも兼任する忙しい立場なんだぜ」

 海流は自分を良く魅せるポージングをコンマ0.1秒で想像し、髪をファサッとかかき上げてみてキラキラと、なんか優秀そうなポーズを決めてみる。


「へー、すっごーい」

 決まったようだ。

 ユラはぱちぱちと拍手をしている。

 ふっ……妄そ、じゃねぇわ。

 海流は想像力なら櫻井の血筋一番の自信があるのだ。


「そうイった訳で、僕たちは先輩とサポート契約を結ブ取り引きをしようと約束を交わしてイた訳でス」

「おお!『取り引き』にそんなアフターケアがあったとは!解答だけを渡すと言う噂と違い、実に手厚いではないか!誠にありがたい!」

 先輩は涙を流さんばかりに感動で目を潤ませながら海流の方へズカズカと歩んで来ると海流の手を取り、ぶんぶんと振る。


 チッ!なんでいちいちそんなデケエ声出すんだ?パイセン!。


「サポーターなのに解答を渡しちゃって良いの?」

「チチッ、アンタ分かってねーな。優秀な俺様が先輩のサポーター契約するって事はégal、そのうち先輩自身の力でどんな難問だろうと解答出来るようになると見越して解答の一例を見せてやっただけよ」

「ふーん、かなりニアリーイコールな気もするけど?」

「ニアリーをどこマでもイコールに近づける協力をするのが、海流サンノサポーターとシてノ仕事なんでス」

「前提ガ違うのデす。サポーターアリきなのデす。解答はおまけなのデす」

「先輩ノ為に心ヲつくさンとシタノでス」


 契約を交わしたら解答渡して全力で逃げるけどな!!。


 先輩は小さな子供のようにボロボロと涙を流して泣きはじめた。

「ありがとう!ありがとう諸君!!。僕は卒業試験を通らねば兄弟との後継者争いから追い落とされる所だったんだ!。僕が侯爵の継嗣として確固たる地位を得た暁にはキミたちに礼を尽くさねばならないな!!」


 あー、そう言うのいいんで。てか俺のが公爵子息なんで、生まれからして格が違うんで。上なんで。

声、抑えめでおなしゃーす。叫ばないでー?。おなしゃす。


「なるほどなー。今どきはそう言うのもアリなんだ。おっもしろーい♪」

 ユラは先輩に振り回されている海流を見ながらシーシャをふかして、さもおかしそうに体を揺らして笑っている。

 勝負、あったか??。


「ご理解いただケまシたらユラさんはお引き取りヲ。先輩トの契約を詰めた後モ、カイルさんのサポートを待つ人ガまだまだいらっしゃるのデ」

「はいはい理解。ユラも保護してる子の事でサク……理事長と話があるしね」

「その際はコの場ノ件は内密ニお願いしマす」

「りょーかい。君達のサポートが上手く行くように神祖に祈ってるね……ぷぷっ」


 最後に何か含み笑いをされた気がしたが、気のせいだろう。


「じゃあねー」と、

 ユラは先程とは違って無詠唱で一瞬で転移陣を描くと、最後まで顔を表す事なく4人に甘いオレンジの香りだけを残して虚空に消えていった。


「「「やっしゃぁぁぁあ―――――!!!!!」」」

「うお――――!!」


 プランB。


「見切り発車で場当たりでいいからとりあえず突っ走って逃げ切れ!!」作戦は、

 健闘を讃えあう3人と、なんだかよくわからんけど「解答だけは貰ったから、ヨシ!」な1人を交えてこれを以ってつつがなく成功した、と言う事にしたのだった。


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