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久々の更新となってしまいました。


 数日前に卜部から武術大会は2週間後だと聞いてから、紗雪は白藤の元へ毎日通い、未来予測をし続けた。

 その結果、惡羅(うら)が来るのが2年後の春だと時期を狭められた。恐らく4月中頃から5月中頃が有力だ。


 反面、紗雪の番、パートナーについては情報が全く掴めなかった。

 唯一特徴として分かったのは背格好からしてあまり年齢が離れてないことと、刀に付けていた飾りが日の出のような赤ともオレンジとも見える不思議な色合いだった。

 身長は紗雪が軽く見上げる位で、黒髪。これしか分かっていないが、紗雪のパートナーなのだから護りてとして有能である事はほぼ確実なので武術大会で探すことと最終的にはなった。


 紗雪は白藤を死なせない為に必死だったのだが、白藤には別の理由で紗雪が一生懸命に見えるようで「ほんに、愛いのう」と温かい眼差しで見てくるので紗雪は居心地が悪かった。

 白藤のからかいから逃げるように本宮の中庭を散歩していた。


「はあ……っもう、白藤のかかさまったら、本当にそんなんじゃないのに……」

「あら、重いため息ねぇ、どうしたの?」


 うな垂れて池をのぞき込んでいた紗雪の後ろからハスキーな声が聞こえ、喜んで振り返ると期待してた人物が今日もスタイリッシュにシャツにロングスカートを着こなして立っていた。

 長い髪は緩く無造作に見せるけれどきっちりセットされた編み込みが麗しく、ぷるぷるの唇も艶やかで今日も葛木は紗雪の目の保養で癒しになっていた。


「葛木さんっ!いつこちらに?」

「ちょうど来た所よ。紗雪ちゃんにいいお知らせ!

 武術大会の開催が10日後なのは聞いているかと思うけど、ご家族も紗雪ちゃんに会いにいらっしゃるわ。」

「っ!!水卜の?お母さんや兄さん、お父さんに会えるの?」

「ええ、そうよ。遅くなってしまって、ごめんなさいね。」

「いいえ!いいえ、記憶が戻って、危険なのは分かってました。

 だから、諦めていたけど…… 嬉しい。ありがとう、ございます、葛木さん」


 思わず涙が溢れる紗雪の涙を拭いつつ、葛木も嬉しそうに笑んでいた。

 それは久々に温かい一時、葛木の優しい笑顔に癒されつつ、紗雪の脳裏にはそれでも自分のパートナーとなるのは葛木では無いことが過ぎり、悲しくなる。


「何か、悩み事?」

「は、い……」

「話せない事なら聞かないけど、どうかしら?」

「葛木さん…… 私が、白藤のかかさまの手ほどきを受けて予言、未来予測をしているのはご存知ですよね?」

「ええ、もちろん。おかげで惡羅(うら)の出現時期から場所の大体の特定が出来て感謝しているわ。」


 葛木の目が好戦的に光るのを見て、紗雪は「その姿も素敵だな」などと呑気に考えていると、葛木に誤解をさせたようだ。


「まさか、何か変化があったの?!」

「い、いえ。こちらに来る時期や場所は変化は見られません。

 問題は……、私の方なのです。私の守護者、パートナーと呼ぶべきでしょうか?

 恐らく男性である事は分かっているのですが、顔が分からず、武術大会で見つけられるか……」

「……そう、なのね。ちなみに特徴は何か分かっているの?」


 紗雪は気まずさから葛木を見ていなかったので気付いて無かったが、周りの護衛達が緊張と警戒を強いられ程に獰猛な目をしていた。葛木は一言も聞き漏らさないように、注意深く紗雪の様子を見つつ話しを聞く。


「身長は私が軽く見上げるくらい、黒髪に日本刀を持っていました。分かるのはそれだけなのです。」

「そうなのねぇ……」


 紗雪の身長は160cm、日本人女性としては平均的だ。その紗雪が軽く見上げるとなると170後半~180前後で太刀を使うを男性。葛木は脳裏に複数の護りての顔が浮かぶと共に、改めて潰すと心に決めてつつ、声だけは冷静を保ち、更に標的を絞るために紗雪の話を聞いた。情報をできうる限り引き出さなければ、と。

 その結果、黒髪は本当に真っ黒、肌は白くそんなに日焼けしているような様子はない。体格も大柄ではないが痩せぎすと言うほどでもないとの事で、絞り込めるような情報は無かった。


「太刀には、何か特徴はないのかしら?」

「うーん、あまり詳しくは無いのですが。

 黒塗りのシンプルな鞘で、割と大きかった気がします。柄も含めるの葛木さんの腰くらい?」

「あら、それは大太刀ねぇ。そうそう、太刀の柄に飾りとかは無かったかしら?

 護りては飾りと実用で付けていることが多いのだけど。」

「あっ!ありました!!

 とても綺麗な赤い宝石のような飾りが、光に当たるとオレンジに光っていました!」

「赤い宝石で光が当たるとオレンジにも見える。ふぅん……そう、その飾りには心当たりがあるわ。」

「ほんとですか?!」

「ええ、当日紹介してあげるから、楽しみにしていてね?」

「はいっ!葛木さんにお話して良かった、本当にありがとうございます!」


 喜び笑顔になっている紗雪に「力になれて良かったわ」と答えた後、準備があるからと早々に卜部の本宮から出た。


「ふぅん、黒髪に赤い太刀飾りを付けた大太刀使いねぇ。楽しくなって来たわ。

 (みなと)有希姫(あきひめ)に伝言を」

「かしこまりました」


 ウキウキと楽しそうにする主に不穏な気配を感じつつ、葛木の分家筆頭である桑名の嫡男である湊は、それでも葛木家の守り神たる有希姫の元へと急ぐ。

 主である葛木清一郎の性格上、今は何も話してもらえない事は分かっているし、卜部の保護下にある水卜紗雪との会話も距離を置くよう命じられた上、彼女の表情や口元が視えないように主が隠していたためその内容は不明だった。唇が読める自分に知らせる気は無いのだと理解した湊は、早々に部下に主人の護衛と監視のみを指示して自分は離れた。

 どうせ、本気になった葛木には敵わないのだから、せめて居場所だけは把握しておこうという足掻きだった。


 車を飛ばしても葛木の本宅には2時間かかる。有希姫は惡羅の襲来の話を聞いてから葛木本宅の中にある本宮に籠っている。それは有希姫の封印を解くため、そして封印されていた力が解放された時の被害を抑えるために徐々に、徐々に本来の力を身に馴染ませ発揮できるようにするための準備だった。

 荒ぶる神の一柱でもある暁のごとき眩い姫、有希姫の本来の名前は「暁姫」。その真名さえも力を持つため、長く「有希姫」と名乗り、子孫である葛木一族を守って来た。

 先祖還りと呼ばれている清一郎は初代に生き写しだと言われ、有希姫もどこかやはり清一郎には甘い傾向がある。その有希姫へと頼まれた伝言はただ一言「準備を」とだけだった。

読んでいただきありがとうございます。

仕事が少し、落ち着いたのでまた毎日更新できるように頑張ります。

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