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幕間3

 有希姫は退屈していた。

 清一郎は惡羅(うら)を今度こそ完璧に、絶対に、1マイクロの隙もなく滅殺し、二度と紗雪の目に触れることも無いように、消滅させると気炎を吐いて訓練に明け暮れてるし、紗雪も少しでも戦えるようにと訓練して、白藤はそんな紗雪を愛らしい、健気だと我が子可愛いフィーバー中だ。


 つまり、相手してくれる人が居なくて寂しいのだったけど、それを素直に言える性格でもなく、何となく他の護りての家を巡ってみる事にした。




 case1 九十九家の千姫の場合


「いらっしゃい、有希姫。うちに来るなんて久々ね。

 何かあって?」

「いや、むしろご無沙汰にしてしまったからのう、今の内にみなと会っておこうかと」

「そうね、この先は益々みんな忙しくなってしまうものね」

「そうなのじゃ!白藤も紗雪と予知のために時の流れを見ている事が多く、清一郎は紗雪命で我等よりも鬼のように気炎を吐いておるじゃろう?

 妾は何もできる事がないのじゃ……」


 しょぼんとする有希姫を見て、珍しいこともあるものだと思いつつも仕方ないなぁ~と千姫は一計を案じる事にした。


「まあまあ有希姫、最近私がはまっているフルーツタルトでも食べながら久々にお茶にしましょう!

 それに有希姫に新しい結界術を編み出したので、試して欲しいんだけど後で付き合ってくれる?」

「妾で良ければ喜んで!しかし、千姫は本当に多彩じゃな~」

「私の子たちが勤勉だから。有希姫の所もみんな強いし、相変わらず葛木は安定ね」


 嬉しそうに屈託のない笑顔を見せ、その後訓練所での結界の強度テストでは様々な技を披露し、九十九の面々はより効率的かつ強度と粘度を誇る結界の調整の手伝いに感謝して持ち帰り用スイーツをたくさん用意した。


「湊、後でみんなで貰ったスイーツをいただくのじゃ」

「はい、喜んで。姫さまにはさっぱりとしたアイスティーもご用意しますね」


 うきうきで帰路に就いた有希姫の様子に密かにホッとしていた湊だった。





 case2 如月家の佐保姫の場合


 千姫とのお茶が思いの外楽しかったので、そのまま他の家の姫たちに連絡して今日は如月家に来ていた。


「有希姫!久しいな!」

「佐保姫も、今日は時間を作ってくれて感謝するのじゃ」


 佐保姫自ら出迎えて有希姫と共に居間へと向かうと、玄夜が待っていた。


「いや、姫同士中々会うことができない故、良い機会だ。今日は玄夜も一緒させて欲しい」

「もちろんじゃ!愛いのう、玄夜はいくつになったのじゃ?」

「あきひめさま、おひさしぶりです。 僕は、5さいになりました!」

「5歳か、まだまだかわいい盛りじゃのう」


 まだ手がふっくらしている幼子の愛らしさに目を細めながら有希姫はふと玄夜の手を取って驚いた。もう剣だこがある。


「佐保姫、もしや玄夜はもう刀を振るっているのか?」

「うむ、5歳で中々得難い才能をしていてな、玄一が目に入れても痛くないほどに可愛がっておるぞ」

「じぃじに、じゅつも、すこしおしえてもらってるよ。でも、たまぁにちょっと難しいの」

「そうか、お主はまだ幼いしそれは仕方ないの」

「あきひめさま、ばーん!とばぁーん!ってなにがちがうの?」

「へ?!」

「じぃじも、さほひめも、ばーん!じゃなくてばぁーん!だっていうの」

「……佐保姫?」

「え、いや、ほら分かるだろう?感覚的なアレだ!」

「妾でもそんな説明分からんわ!!もうちょっと言語化しろ!!」


 あまりに口で効果音的な説明しかできない佐保姫の内容を玄夜と2人なんとか解読して、玄夜の苦労を偲びながら有希姫は帰路に就いた。


「のう湊。同じ言語を使うからと言って、言葉は通じるとは限らんのじゃな…」


 遠い眼をして独り言のように言う有希姫に湊は困惑して返答に困っていた。





 case3  物部家の清姫の場合


 如月家を訪問してから3日ほど経った頃に、物部家に有希姫はお邪魔していた。


「ふわぁ……ごめんなさい、有希姫。お待ちしていたのよ~」

「相変わらず眠そうじゃのう、清姫。あまり寝てないのかえ?」

「いいえ、知っての通りわたくしは寝る事で結界を強化しますが、最近は暑さに負けて眠くて…」

「有希姫、本気にしないでくれ。清姫はいつも通り、これが通常営業だ」

「……謙?」


 しれっと姫を裏切る物部家当主に苦笑しつつ、眠いと言いつつ全然元気そうな清姫の様子にホッとする。思えばこの姫だけは自らの伴侶ではなく、自由過ぎる父親の後を引き継いで物部を率いてるのだと思うと複雑な気分になる。


「あら、有希姫?わたくしは後悔してませんし、もうわたくしの子だと思っておりますから本望ですのよ?」

「すまぬ、顔に出ていたか?」

「ちょっとだけ。有希姫は優しいから、わたくしはついつい甘えてしまいますの。謙、お願いしていた葛切りをお願いね」

「はいはい。有希姫様、清姫のイチオシなんだ。良かったら食べてみてください」


 清姫と足湯ならぬ、足水で涼みながらいただいた葛切りは甘いのにさっぱりしていて清姫との話も盛り上がった。




 case4  神崎家の八上姫の場合


 暦の上では夏も終わりの差し掛かっているというのに、まだまだ暑い日の午後に神崎家へ訪れた。


「やほ~。あっき~(有希姫)、おひさ~」

「八上姫か?これはまたハイカラな格好じゃのう」

「どう、似合うっしょー?昂大に色々見せてもらって、あーしの好みがこれだったんよ」

「そうじゃのう、独特だがお主が楽しそうで良いのじゃ!」

「さっすがあっき~!わかるー!じゃあ、あーしの部屋にいこーよ色々服あるからあっき~も好みのあったら来てみよ?」


 案内された八上姫の部屋はポップでカラフルだけど、ちゃんと落ち着けるスペースもあってそのバランス感覚に有希姫は関心しきりだった。


「あっき~は可愛い系だから、露出はあんまおーくない方がいいね。あ、ねえねえ、こゆのどお?」


 出された服はパンクロリータで甘辛なバランスが絶妙だった。


「あっき~はお嬢様やらせてもカワワだけどさ、たまにはイメチェンもね!」

「おおー!これは新鮮なのじゃ!!」

「やっぱ似合う!あっき~素材いいからめちゃキャワだわ♡」

「ふふ、妾も新しいものを知って嬉しいのじゃ!」


 そんなこんなでファッション大会を催しつつ、帰りに迎えに来た湊はゴスロリになっていた有希姫に驚きつつも表情にも態度にも出さず完璧にエスコートして連れ帰ったとか。





 case5  卜部家の白藤姫の場合


 一通り護りての家を巡り終わった頃、有希姫に白藤から招待状が届いた。


「白藤、お招きありがとう」

「有希姫、よういらっしゃった。みんな待ちかねていますよ」

「みんな?」

「ええ、五家の姫みんな、有希姫とお茶をしたくて待っておりました。ささ、こちらへ」


 白藤に案内された広間は様々なスイーツがあり、五家の姫たちが思い思いに話していたが有希姫が来るとみんな歓迎してくれた。


「有希姫!待っていたぞ!先日の続きの話しをしたかったんだ!

 ばーん!とばぁーん!の差はやっぱりあると思うのだ」

「あーしは何となくわかるなぁ~。ぎゅっと締めてからのばーん!でしょ?」

「何の話をしてるのか、私にはサッパリだわ…」

「せんちゃんは、真面目だから~」


 相変わらずな佐保姫の説明に何故かついて行ける八上姫に驚いていると、清姫が手招きしているので行ってみる。


「有希姫、ほらここころーんってしましょ。白藤に横になれる場所も用意して貰ったの。

 そしてこれ!!わたくし必須のひんやり、ふわふわ枕」

「おー!冷たいのに気持ち良いのう」

「そうでしょ~これでお昼寝が最高よ~」

「あ、ちょっときよちー!それずるーい、あーしも仲間いれてよー!」

「どうぞぉ~全員分枕はありますわぁ」


 まさかのお茶会で横になりながらパジャマパーティーのごとく盛り上がる姫たち。

 真面目な千姫に、脳筋な佐保姫、おっとりな清姫、ギャルな八上姫、母性の塊のような白藤、そして愛らしい有希姫。

 それぞれに家を守りつつも、年を取る事のない彼女たちも時代の流れと共にそれぞれに合わせて生きて来た。全ては可愛い自分の一族を護るため。


 とは言え、姫たちにも休息は必要なのだ。


 姫たちの中でのアイドルであり、妹の天真爛漫な有希姫を鼓舞するために千姫から各家の姫たちに連絡が入っていた事を有希姫は知らない。有希姫が笑顔であればそれだけで十分なのだ。

お読みいただきありがとうございました


五家の姫たち全員やっと出せました!本編でもいずれ徐々に!

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