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 2回戦の第2戦は九十九蓮斗と神崎昂大との試合だが、開始前から会場は騒然としていた。

 九十九蓮斗の雰囲気は1回戦とは異なり、夏樹の目にすらハッキリ見えるほどの霊力が風のように巻いていた。

 文字通り物理的に風が吹き、紗雪の長い髪が吹かれる。


 九十九の席は大混乱で当主と思われる男性が怒鳴っているが、蓮斗はそちらを見てにこにこと手を振り煽っていた。そして、試合場のすぐ横には悠斗が腕を組んで見守っていた。


 そんな九十九の混乱を尻目に神崎昂大(こうだい)はニヤリと笑い、蓮斗を見る。


「よお、それがお前()の全力なんだな?」

「ああ、コレが全力だ」

「ふっ、良いねえ。流石は次期当主だ、お前たちがいて良かった。

 如月老、俺に不満は無い。このまま、こいつと試合たい」


 神崎の言葉に如月はどう答えるのか、見守りつつ紗雪が神崎側を見ると神崎は昂大を筆頭にみな面白そうに、興味深そうにしていた。

 改めて紗雪が九十九蓮斗を視ると、蓮斗の霊力は2色のグラデーションのように見える。


「……混ざって、いる?」

「正解だ。蓮斗の霊力を悠斗が扱えると話しただろう?

 あれは魂替(たまが)えと言って、悠斗の魂が蓮斗の身体に入っている。逆に悠斗の身体には蓮斗の魂が入っている」

「ええっ!?大丈夫なんですか?」

「いや、普通は危険すぎてやらないが、あいつらは特別なんだ。

 アレはあの2人にしか出来ない」


 隼の説明を聞いている内に試合は始まった。

 各家の同意が取れたのだろう、如月当主の開始の合図とともに蓮斗が仕掛ける。

 神崎の足元に陣が現れ、闇色の鎖が拘束し、更に結界で閉じ込めるが、神崎は札を剣へと変化させアッサリと切り裂く。

 それを見越していたのだろう、間髪おかずに炎と風2匹の龍が襲いかかる。


「ヒュ〜、四龍を2匹も召喚した上にまだ余裕があるか」

「お前に勝つならこれでも、足りない!」

「正解、だ!!」


 いつの間にか蓮斗も刀を持ち、神崎と切り結ぶ。その神崎を背後から狙う2匹の龍を高く飛び、距離を稼ぐ。



「火克金 あいつらは任せるぞ、高龗!」


 札で召喚されたのは雷を纏った男神は、剣にも雷を纏わせ火龍へと猛然と襲いかかる。驚くべきことに1対2であるにも関わらず、式神同士の戦いは拮抗しているようだ。


「神を模した式神か……」

「イメージがハッキリしている方が呼びやすいだろう?

 さあ、こっちもやろうぜ!」


 蓮斗に切りかかろうとする神崎の足元から土の槍が貫こうとしたのを、ジャストタイミングで発動したのを避けると、更に逃がすまいと蔦が絡みついてくる。

 蓮斗は落ち着いて詠唱こみの大技を準備しつつも、妨害も忘れない。


「ったく、九十九は多彩でやりにきぃ」

「どうも」

「おうよ、褒めてるぜ。まだまだあるだろ?」


 頷き、術を解放する。

 巨大な手が神崎を拘束し、更に四方八方から闇の大人の男性ほどの太さのある杭とも言える槍が貫かんと迫り、神崎のいた場所には漆黒の雲丹のようなった

 そんな絶体絶命とも思われる状況でも蓮斗の阻止も試合終了も宣言されない。


 何より術者が気を失えば消えてしまう式神の高龗が健在であり、未だに2匹の龍と空中で戦いを繰り広げている。

 蓮斗は追撃するため雲丹となった神崎ごと豪炎の火柱で燃やすが、ガキッという音とも神崎の腕が雲丹から出てきた。


「お前この術、道教も組み込んでるだろう!

 どうやってもこの黒いの切れなくて無駄に苦戦したぞ……」

「それは何より。というか、なんであれだけ喰らってピンピンしてんの?

 流石に非常識だろ」

「ああん?護りては陰陽道の流れを汲むんだから基礎だろ」

「替わりか」

「半分正解、残りは神崎の秘術だ」


 神崎は衣服こそダメージがあるものの、本人は無傷で平然と立っていた。


「蓮斗、悪いな」

「はっ?悠斗!?」


 蓮斗は神崎から目を離すことなく、睨み合いから駆け寄りながらその身に炎と風の龍を纏う。


「てめぇ!このバカ!!」


 蓮斗の身体を傷つけながら、炎と風がゆうごうしていく。

 蓮斗を止めようと一気に神崎が距離を詰め寄るが、一歩遅く蓮斗を媒体に光の剣を作り神崎に切りかかり、神崎もまた呪符で顕現した剣で受け止めるが、一瞬で燃え尽きてしまう。

舌打ちをし、蓮斗の剣を避けると神崎だったが、何を見たのか鬼の形相で激しい炎を纏った蓮斗の腕を掴んだ。


「阿呆か!こんな無茶して後遺症が残ったらどうする!」


 そう叫びつつ、神崎は()()を蓮斗から引き抜いた。

 それは神崎の手を離れると見る間に崩れ消えていき、そして蓮斗を覆っていた風と炎は消え、神崎に抱えられていた。

 紗雪の場所からはよく見えないが、両手に火傷はありそうだが蓮斗は無事そうでホッと息をついた。


 如月玄一が神崎の勝利を宣言するのも聞かず、神崎は蓮斗を抱いたまま悠斗の元へと連れて行くと、千姫も駆けつけていた。

 悠斗は泣きそうな顔をしつつも、神崎に深く頭を下げ、千姫も何か言うとそのまま蓮斗を呪符で覆いつつタンカで連れて行った。


 観客もまさかの展開に誰もが息を潜めたが、九十九の当主より蓮斗、悠斗共に無事であること、また騒がせたことに対して謝罪が行われたことで、ホッと息をつけた。


 紗雪と幸江も、お二人共に無事なことにホッとしつつ、次の対戦に気持ちを向けた。

 とうとう、葛木の出番だ。

読んでいただきありがとうございます。

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