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6 最強の助っ人達


最終学年の卒業前は慌ただしくなる。


ミアの誕生日パーティーから少し日が経ち…


今日は『意志確認』の為、

お互いの家族が揃って集まることになっていた。


卒業後の婚約を、スムーズに進める為らしい。



子爵邸の応接間は広く、

いくつかのソファーとテーブルのセットが並んでいる。


その一つにダニエルと彼の父、

その向かいに私と父が座る。

隣のソファーセットにはお互いの母、

エミリーとオスカーが座っていた。



さっそくダニエルの父が話し始めた。


「二人で一緒に過ごす事も多いようだが、

そろそろどうしたいのか意志を確認したい」



ダニエルは力強く頷いてから答える。

「私は、ミアとの婚約を望みます」



(!!) ミアは肩をこわばらせる。

(!!) 隣のソファーセットからも緊張した空気が漂ってくる。



父達は静かに頷き、今度は私の父が私に訊く。

「ミア?ミアはどう考えている?」


ミアは、唇をキュッと引き結んで、

スカートの裾をギュッと握った。


私だって、努力はした。

それでも私達の関係は変わらなかったのだ。



ミアは毅然と言う。

「私は、ダニエル様との婚約を望みません」



ダニエルが顔色を青くし、信じられないという目をする。

「ミア?どうして?」



「申し訳ないのですが、

これから先ずっと一緒にいる自信がありません。

私達は考え方が違いすぎます」


お断りはハッキリと!!コレ、大事なことです。



「私は君を大切に思っている。

私達は上手くいっていたじゃないか?」


ダニエルは座ったまま身を乗り出し、必死に訴える。



「大切にして下さっているのはわかっています。

でも私の希望は、いつもダニエル様に届きません。

私は自分のしたい事を、

言われるがまま我慢したくありません。

自分のことは自分で決めたいのです」



ダニエルの望む私では、絶対に幸せになれない。




「どうして?

君の事を心配して言う事はあっても、強制はしていない」


「それでも…

私の意見を聞き入れてくれる訳じゃありません」



「…だが、君の為になることしか言っていない」


「……」


「それに私の婚約者になるんだ、

私が言うのはおかしな事じゃない。

ふさわしく無いと思えば止めることもある」


「……」



ダニエルが、理解してくれるとは思っていなかった。

それが出来るなら、こんな事にはなっていないだろう。




そんな重い空気の部屋の中に

「お兄様!そこまでですわ!」と

突如…凛とした声が響く。



ダニエルの妹エミリーが、

ソファーから立ち上がり一喝した。


「私、ミアお姉様が本当に本当に大好きですの!

可愛いお姉様を見ているだけで、

妄想が膨らみ創作活動も捗ります。

それにお姉様のおかげで、

とても素敵な趣味と、

趣味仲間のオスカーを得ることができました!

もう…

お姉様は本当に可愛くて、見ていて飽きないのです」



可愛いって2回言った。


皆が目を見開き、バッとエミリーに視線を奪われる。

(見ていた?創作活動?)



エミリーは気にせず続ける。


「だからこそお兄様と一緒になってくれたら、

とても嬉しいと思っておりました。

だってお姉様がうちに嫁いで来られたら、

私…見放題ですもの!!

でも…婚約のお話が出てからのお姉様は、

幸せそうには見えませんでしたわ」



皆が今度は、私とダニエルを見つめる。



「お兄様不器用すぎます…」 

ポツリとエミリーは呟いた。


「長年片思いし続けた弊害か…


お姉様との婚約話が出てから、

独占欲強すぎの束縛しすぎです!


完全に囲い込み体制に入って……ヘタレですわ!」



(!!) 

ダニエルは可愛がっている妹に

鋭い言葉のナイフで切り付けられ、

大きなダメージを受ける。



「ミアお姉様を誰かに盗られたくないからって

可愛い格好は禁止するわ…

友人や、趣味にまで妬いて、

ネチネチ ネチネチと小言ばっかり!

自分の事だけ考えてろって事ですわよね?

何なんですの?お兄様は俺様体質ですの?」



エミリーの猛攻は止まらない。

もうダニエルは何も言えない様だ。


お互いの家族も皆シーンとして、

エミリーの剣幕に飲まれている。



「お姉様と同じ女の立場から言わせて貰えば…

…ウザイ、そうウザイですわ!

ちなみに私は、

男らしくて包容力のある、セオ様推しですわ!」


ガバッとエミリーを見上げ、

ダニエルが悔しそうな顔をする。



エミリーは、ふっと鼻で笑う。


「小言を言うくせに、

オスカーにお姉様が読んでいた本について

こっそり聞いて読んでみたり…

私に、お姉様が作ったパーティーのお菓子の

残りをもらって来いなどと…意味不明ですわ」


「ちなみに!

その後こっそり食べて…美味しいって言ってたのも、

しっかり知ってますわ!」


エミリーは呆れたように顔を左右に振りながら、

ひょいと肩をすくめた。


「しかも…ミアお姉様が、

友人のセオ様と楽しそうに街を歩く姿を見かけてしまい

落ち込んで帰ってきて夕食が喉を通らなかったという

情報も得てますのよ?」




(なんで知っている?!)

ダニエルは、得体の知れないモノを見るように、

エミリーを見た。



「ミアお姉様がとっても可愛くて

不安な気持ちはお察し致しますが、

はっきり言って行動全てが逆効果です。

ちなみに!ここ最近のお兄様の言動の調査で、

私からの好感度もダダ下がりです!」


ビシィ!とエミリーはダニエルを指差し宣言する。

ダニエルはもう瀕死だ。



「囲い込むのではなく、

まずは自分を好いてもらう必要がありますのに…。

ミアお姉様から、自分のもとに飛び込んで来てもらう

努力を何故なさいませんの?」


「う…!!」 

ダニエルは息を飲む。


「私は、ミアお姉様には

絶対に幸せになって頂きたいのです!

私はお姉様のお心のまま、

したい様にしてさしあげるのが良いと思いますわ!」



父達とダニエルは、沈黙した。

…母達とオスカーは「うんうん」と頷いていた。



エミリーは、言いたい事は言い切った!とばかりに、

満足そうに頷きソファーに腰をおろす。



そして部屋は静寂に包まれた。



***



私は、誕生日パーティー前に

オスカーから話を聞いていたのだ。


『私とダニエルの調査報告書』を、

エミリーとオスカーが作成しお互いの母達へ提出した事を。



おかげで母達もパーティーの間、

ずっと私とダニエルの様子を見ていてくれた。


お母様は、私の性格をよくわかっているので

『これは無理だわ』と、すぐに理解したそうだ。


友人同士だった頃は、

それなりに上手く付き合えていたので、

予想外だったらしい。



パーティーのあと母に呼ばれ、

今度『意志確認』で集まるので、その場で断って良いと言われた。


父達は、婚約が決まると思い込んでいるらしく

『今 言うとややこしくなる』と

母達の間で結論が出たらしい。




エミリーとオスカーは、

私とダニエルがラブラブになるのを期待して、

ずっと観察していたらしい。


しかし様子がおかしいのに気づき、

『調査報告書』を作成したとのことだった。


(優秀すぎる…)



自由奔放なエミリーと、

大人しいオスカーはとても気が合い、

昔からとても仲が良かった。


聞けば、少し前からエミリーが妄想したストーリーを、

弟のオスカーが執筆して本を出していたそうだ。


(え?作者名エリオス?

ウソ!!前に、セオに貸した本だわ!)




私のことを心配して、

支えてくれる人がいてくれるというだけで…

とても心強い。


私は素晴らしい助っ人達に、心から感謝をした。





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