表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

1 婚約予定の彼

とても『ゆるふわ』な設定です。

興味をもってくださり、ありがとうございます。


私は男爵令嬢、彼は子爵令息。

領地は隣同士。

お互いの両親達も仲が良いので、昔からそれとなく交流はあった。


思い違いでなければ、私の外見は彼の好みなのだろう。

昔からよく絡んできたし。


自分でいうのもアレだが、

私の容姿はまあまあ整っていると思う。


色こそ平凡で目立たないが…

母譲りのヘーゼルブロンドのまっすぐな髪も、

大きなグリーンの瞳も、

私はとても気に入っている。



彼とは通っている学校も学年も同じだし、

どこにでもいる普通の友人だった。

だが家同士の交流の延長で、

『卒業したら婚約してはどうか?』という話に

なってしまった。


それからだ。彼が過干渉になり、

従わせるような発言が気になり出したのは…。



***


以前、彼に「朝は苦手だ」と話したら、

自分は『朝の鍛錬で毎朝早いから』と

迎えにくる様になってしまった。


別に早く起きたかった訳ではない。

だが私の為だと、毎朝彼はやって来る。


「おはよう。準備は出来てる?」


今日も一緒に登校する為、

朝早くにわざわざ迎えに来てくれた。


私達は婚約してる訳でもないし、

婚約していても一緒に行かないといけないという決まりもない。


(本当に必要ないのに…)


ミアは心の中で盛大に溜め息をついた。


何度か「もう必要ない」と言ってみたが、

「遠慮するな」と言われるのだ。


「…はい」


(何でこんなに早く来るのかしら?

学校まで、普通に馬車に乗っていけば15分で着くのに。)


念の為にって待ち合わせより1時間も早くに来て、

一体、道中どんなトラブルに見舞われると

思っているのだろうか?


「朝食はちゃんと摂った?」

「今朝はあまり食欲がなくて…軽めに…」


「それはいけないな。朝はきちんと食べないと体に悪い。

明日からは気をつけて」


「……はい」


(なんだろう…お母さんかな?)


彼は私の事を思って言っているのだろうが、

少々押し付けがましい。


間違っていると思った事は言わないと気が済まないし、

自分の意見にも絶対の自信を持っている。

だから私への助言に関しても、

絶対にそれが私の為になると信じて疑わないのだ。



彼に促され何とか馬車に乗りミアが

ほっとひと息つ…く間も無く、

ダニエルに話しかけられる。


「あれ?ミア、

目の下にうっすらクマが有るんじゃないか?」


訝しげに目元を見られて居心地が悪いが、

バレてしまったなら仕方ない。


「少し寝不足気味で…」


「寝不足?寝付けなかったのか?」


「いえ、そういう訳ではなく、

少し…寝るのが遅くなっただけです」



ダニエルの眉間にシワが寄っていく。

これはよく無い流れだ…とは思うが、どうしようもない。


「何か悩みでもあるのか?話してみろ」


「あの…悩みとかそんな大層な事ではありません。

ただ先日面白い本を見つけて、夢中で読んでしまって…」


悩みなんて貴方の事くらいですと言えたら、

どんなに良いだろうか。



予想通り、ダニエルは顔をしかめる。彼はとても真面目で自分にも厳しい人だ。

夜更かしなんてナンセンスだろう。


生活習慣はもちろん勉強や剣術の鍛錬でも、

きっちり判を押したように生きている。


毎日同じノルマをこなす必要のある彼にとって、

健康管理は何より重要なのだ。

やらねば死ぬのか?と言いたいが、本人がそうしたいのなら仕方ない。


ただそれは、他人に押し付けるモノではない。



「……また君はそんな事を。子供じゃないんだ。

次の日の生活があるのがわかっているだろう?」


苦虫を噛み潰した様な顔をして、

『お話』が始まってしまいました。


「…はい」(わかってます)


「夜はきちんと早く寝ないとダメだよ?」


「…はい」(わかってます)


もうそういう性格だと割り切らなければ、やってられない。


言っては何だが、私はのんびり屋だしかなり大雑把だ。

彼とは真逆である。

それに、したくないことは極力しないタチだし

強制されるのも大嫌いだ。


こんな風に言われると、絶対やってやるもんか!という

反発心がついムクムクと芽生えてきてしまう。


今もこの会話を盛大に放り投げて、

ひらりと馬車から飛び降りたい!


 

「せっかく君はとても可愛いんだ。

そんなクマなんかあると勿体ないだろう?」


「……ありがとうございます。気をつけます」


目がスンとなりそうなのを、必死に堪える。



「わかってくれて嬉しいよ。君のことが心配なんだ」


「……はい」



空気が重いまま、馬車が学校に着く。


登校するだけでこんなに疲れて、いったい何をさせられているのだろうか。

ダニエルが笑顔で手を差し出してくる。

周りから見たら、さぞ仲良しに見えるだろう。



「さあ、早く教室に向かおう、遅れてしまう」


(こんなに早く着いて、どうやったら遅れるのかしら?)


モヤモヤした気持ちを思い切り彼にぶつけて、

スッキリしたい欲求に駆られる。

だが私の事を思って言ってくれているのはわかるし、

家同士の関係もある。


あきらめて彼の手の上に手を乗せた。


「…はい」



ミアは、トゲトゲした気持ちでいっぱいで胸が苦しく、

憂鬱になった。


(…これはいけない)


こんな状態の生活が続くのであれば、

彼と婚約・結婚なんて耐えられそうにない。

遠からず、精神を病んでしまうだろう…。


なんとかしなければ…と思いながら、

教室までとぼとぼあるいた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ