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07.初めての友達?

「…オリヴィア…様?」


「はい!………?」


(ひ、ひぃ〜〜〜〜?????!?!?

わざとではないにしても、まさか私この子を階段から突き落としてしまったの!?!?)


今まで思い出した記憶の中で一番ショッキングな事実に後ずさる。

どうやらフェリーチェは権力のために婚約したのではなく本当にクロックスの事が好きで婚約したようだ。

そのため優秀で人望もあるオリヴィアがクロックスと話をしていただけで不安と嫉妬で狂い文句を言いに行ったのが先日。


(フェリーチェ…あなた強すぎるわ。こんな優秀な子に難癖つけに行くなんてメンタル勇者よ…)


そして難癖をつけに行った先で二人の口論が激カし痺れを切らしたフェリーチェがオリヴィアに手を挙げる事態にまで発展した。

その衝撃によりオリヴィアは足がもつれ階段から滑り落ちた。ことの経緯はこんな感じだ。


(…一歩間違えたら人殺しになっていたなんて…)


わざとではなかったそんな言い訳が通用しない衝撃の事実に血の気が引きながらもフェリーチェはバッと勢いよく頭を下げるしかない。


「オリヴィア様。怒りに身を任せ以前階段から突き落としてしまい本当に申し訳ありませんでした!

…一歩間違えれば怪我だけではすまない事態になるところでした…本当に申し訳ございません。」


(私なら自分を階段から突き落とした人を許せるかな…いや、きっと許せない…ここへ来て謝ってばっかりいるな…)


頭を下げながら悔しさやるせなさ様々な感情が込み上げてきたフェリーチェは拳を握りしめる。しかしフェリーチェの予想に反し意外な言葉が耳に届いた。


「私は大丈夫ですよ。」


「………え?」


驚いて顔を上げると穏やかな表情を浮かべるオリヴィアの姿が目に入る。


(何を…言っているの…?)


「うっかり熱で数日学園を休むことになってしまいましたが傷は大したことありません。

それにわざとではなかったのでしょう?私が落ちたあとフェリーチェ様すごく驚いた顔をされていましたもの。だからそんなに泣きそうな顔をしなくて大丈夫ですよ。」


予想外の言葉にフェリーチェは思わず唖然とする。

先程とは別の衝撃により固まり動かなくなったフェリーチェを他所にオリヴィアは階段でのことは終わりというように話始める。


「それよりも!フェリーチェ様。

先程は助けていただいてありがとうございます!」


「…いえ、とても困っているようでしたので…」


驚きに口篭りながら言葉を続けるとオリヴィアはグイッと距離を詰める。


「で!す!が!無茶はダメですよ?私オリヴィア様が殴られそうになって本当にびっくりしたんですから!」


プンプンと怒るオリヴィアに何故か緊張がほぐれ肩の力が抜けていく。


「ふふ、驚かせてしまってすみません。咄嗟に体が動いておりましたの。」


(…私たち普通に話してる…あんな事をしてしまったフェリーチェを許してくれたの?)


あまりの急展開に頭が追いつかなくなったフェリーチェは混乱する。

しかし目の前で笑うオリヴィアの姿を見ると何故か心が暖かくなった。


「あの時とてもカッコよかったです!あんな風に絡まれたことがなくて…心細かったので」


(か、可愛い…)


シュンとするオリヴィアの可愛さに謎の保護欲を掻き立てられたフェリーチェはお詫びのためにも彼女の力になりたいと考える。


(守りたい。いや、守らねばこの笑顔。これがカリスマ性というやつかな?)


「大丈夫です!私腕っぷしには自信がありますの!ああいう時はいつでも頼ってくださいませ!何度だって助けに参りますわ!」


「腕っ…ぷし…?」


キョトンと首を傾げるオリヴィアにフェリーチェはアッと慌て出す。


(…し、しまったーーー。

令嬢が腕っぷしが強いなんてありえないじゃない!

厳しい父の影響で学生時代は友達と遊ぶことも禁じられ剣道の練習に明け暮れていたので強いですよなんて言えない!!)


フェリーチェは自身の失態に百面相をしながらアワアワと焦っていると前方から微かな笑い声が漏れる。


「ふふっ…フェリーチェ様はとても面白い方だったのですね。

私、少し誤解をしていたのかもしれません。

…フェリーチェ様。もしよろしければなのですが今後お時間がある時で構いませんので私とお昼をご一緒していただけませんか?」


(!?………それはもしや友達!?)


「私でよろしいのですか?今まで酷い態度をとってきましたのに」


オリヴィアと話をしていると驚きの連続だ。


申し出は嬉しく一瞬舞い上がってしまったが今までの態度を考えるとフェリーチェは聞き返さずにはいられなかった。それだけのことをしてきたからだ。

胸の高鳴りを感じながらも以前の仕打ちを考えると嬉しい誘いだが甘えてもいいのかと不安に思い口ごもる。


(人生初の学友…?)


正直、転生して友達のような関係になる人は今後現れないと諦めてしまっていたため想像がつかず舌を噛む。

するとそれを察したのかオリヴィアは言葉を続ける。


「私フェリーチェ様をもっと知りたくなりましたわ。

確かに初めは怖かったですが謝罪もしていただきましたし先日の件はお忘れてください。

それに本日のフェリーチェ様はとても好感が持てて…その、素敵だと思います!」


「……っ」


「も、もちろんフェリーチェ様がよろしければなのですが…!」


いつの間にか悩みは吹っ切れ正直な気持ちを話そうと考えたフェリーチェは口を開く。


「お誘いとても嬉しいです!私もオリヴィア様と仲良くしたいと思っております。

これから是非、よろしくお願いいたします!」


言い終わるや否やオリヴィアの顔が喜びに花咲く。


「良かったです!私明日から登校なのです!

同じクラスですしまたお話しましょう。」


「はい!」


(どうしよう。どうしよう!)


”人生初の友達”その嬉しい響に薄らと涙を溜めながらフェリーチェは幸せを噛み締めるのだった。


(心が軽いと体まで軽くなった気がする!)


何故か先程から自身の体がすごく軽やかになったと感じながら笑顔に磨きがかかったフェリーチェは午後の講義に前向きに望むのだった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇


【???目線】


一方その頃、茂みに隠れ二人の様子を伺っていた人物は信じられない光景に頭を抱える。フェリーチェが誰かを気遣い、謝罪し、微笑んでいる。


「…これは…どういうこと?」


数日前の彼女とはかけ離れた姿に少しでも嘘がないか凝視する。しかし、自分の目が曇ってきたのかと疑ってしまうほどにフェリーチェからは全く嘘をついている様子が見られない。


……


その人物は驚いた表情を浮かべているがすぐにいつもの落ち着きを取り戻し、傍らにいるもう1人の男子生徒に声をかける。


「……きっと気まぐれだよ。すぐにいつもの彼女に戻ってしまうだろう。

……今後も緊急を要する時以外、学園内でのフェリーチェの護衛を頼んだよ。」


「護衛〜?それ監視じゃないですか〜?」


飄々とした態度の男子生徒が聞き返す。


「そうとも言うね。」


悪びれなく答えた男は一時のまやかしだと言わんばかりにフェリーチェを見つめ直ぐにその場から立ち去ったのだった。

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