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第31話 End of Dream

 ――伊原邸。


『エリ様の部屋に来てくれっす! 今すぐ!』


 アサトとレイハは、マキからスマホで呼び出される。それを受けて、二人はすぐさまエリの部屋へ向かった。


「アサト、スメラギさん。エリ様が……」

 マキは悲痛な表情を浮かべる。二人はベッドの方に目を向ける。


 そこには、ミイラと化したエリが横たわっていた。


「姉さん、何があったんですか?」


「実は――」

 マキは、カナが無名経典を開いたこと。開いた後に、部屋が眩い光に包まれたこと。そのあと、エリが絶命したこと。同時にカナがいなくなったこと――を説明した。


「まさか、コフタがそんな事をするなんて……」

 アサトは戸惑いの表情を浮かべる。


「コフタさんの姿が見えないのは、そういうことでしたか」

「はい……」

 レイハの話に対し、マキは弱々しく答えた。


「ウラト様に、なんて説明する気だ?」

 アサトから、焦りの色が見えた。それを見たマキはこう続けた。


「……ウラト様の様子も見た方がいいんじゃ?」



 ――三人は、日中、ウラトが眠っている地下室に向かった。


 地下室は日光を完全に遮っていたため、中の様子が伺えない。それにもかかわらず、部屋の中央にある棺桶は黒光りしている。


「どういたしましょう?」

「開けましょう!」

 レイハの問いかけに対し、マキはキッパリと答えを出す。マキは棺桶の方へと向かった。


「姉さん!」

 マキの行動に迷いが見られない。アサトは思わず声をかけた。


「何すか?」

 マキはアサトの方を向く。


「姉さん、本当に大丈夫なのか?」

「何言ってんすか。どっちにせよ、エリ様のことは隠せないっすよ。だったら、報告は早い方がいいんじゃないっすか」


 マキは棺桶の蓋を持ち上げようとした。


「重いっす!」

 しかし、動かすことが出来なかった。見かねたアサトも加わり、二人で持ち上げることにする。蓋は少しずつではあるが、持ち上がってきた。


「よし! これで開くっす」

 マキとアサトは力を合わせて蓋を持ち上げる。


「失礼をお許しください、ウラトさま……あぁ!?」


 棺桶の中に眠っているであろうウラトは、ミイラになっていた。


「嗚呼、ウラト様も……」

 アサトは呟いた。絶望的な表情を浮かべながら。


 レイハも棺桶の中を覗き込む。

「……はい。おそらく」

 声は震えている。


「ウラト様……」

 マキも、呻くように呟く。


 棺桶の中でミイラと化したウラトだったが、その後、灰と化した。



***


 ――後日。アサトとマキはカフェに来ていた。


「そういえば、アサトとカフェに行くなんて、それこそ何年ぶりなんすっかね。だって、うちってエリ様にかかりっきりだったし」

 マキが感慨深げに言う。


「そうだね。姉さんとこうやって二人きりになれたのって、いつの話だろうか」


「というわけで、今日は姉弟水入らずっすよ。お酒はないけど」

 マキはニッコリと笑った。


「そもそも私達は、酒が飲めないんじゃなかったかな」

「ハハハハ。でも、うちらはもうウェアウルフじゃないっすよ。お酒も飲めるかもしれないっすね。

 うちは紅茶にするけど、アサトも紅茶でいいっすか?」


「じゃあ、まずはそれにしようかな」

「オッケー。すいませーん」

 マキは店員を呼び止め、注文をした。


「それにしても、最近はワイドショーでもミドリ製薬の話ばっかりっすね」

 紅茶を待っている間、マキはこんな話を切り出した。


「正直、こんな大々的に報道されるなんて思いもしなかったな。利用価値が無くなったから切り捨てにかかったのかもしれない」


「そうっすねー。今まではニュースにさえならなかったっすからね。かえって不気味っすよ」


「でも、そのおかげで、わざわざ危ない橋を渡って情報収集しなくてすんでるから、助かった」


「今までだったら、ヴァンパイア化したスロートバイトの顧客が全員死亡したとか、絶対ニュースにならなかったっすよね」


「あと、死亡者はミイラ化したとか書いてある週刊誌もあったな」


「どこから流れて来たんすかねぇ。もっとも、それだってウラト様とエリ様のことがなかったら、流石に信じなかったかもしれないし」


 二人が話をしている間に、店員が紅茶を持って来た。

 マキは紅茶を口にする。


「……紅茶って、苦いんすね」

 口の中で、苦さを噛み締めていた。


「……アサト。カナちゃんのこと、恨んでないっすか?」


 マキからこんなことを言われ、アサトは返答に困る。つい、黙り込んでしまう。


「うちは別に恨んでないっすよ。だって、遅かれ早かれ、誰かがやらなきゃいけなかったんだ。カナちゃんは、あえて憎まれ役を買ってでたっす。

 ……カナちゃん、『エリ様の入れてくれた紅茶はおいしい』って言ってたっす……うちも、飲みたかったなぁ」


 マキの目から、大粒の涙がこぼれた。

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