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第25話 Kill Again

 エリの元で共にお茶をして以来――エリがエヌと化したせいで、収拾がつかなくなってしまったが――カナは、スマホでミコトとやり取りをしている。


 ある日、ミコトにサトシの話をしてみた。

 すると『赦しているわけではない。けれど話だけなら聞いてやれなくはない』という返事を貰う。


 ――これは、前進したとみていいのだろうか?――

 カナは一条の光を見たような気がした。





「次は、セントウダさんだけど……」

 カナはセントウダと『和解』して以降、やり取りをしていない。『赦した』とはいうが、まだ抵抗感が拭えないためである。


「でも、私から話をしない事には……」

 カナは一息置く。


『お時間を取らせて申し訳ありません。スメラギさん。セントウダさんとお話がしたいのですが――』

 一息置いたあと、カナはレイハのスマホにこんなメッセージを送った。



***


 しばらくして、カナのスマホにメッセージが届く。会うことをサトシが承諾したというものだ。

それを受けて、カナは自分の部屋を出た。


「セントウダさん、お話があるのですが……」

 おずおずと、カナはサトシのいる部屋に入る。


「コフタさん、なんでしょうか」

 サトシはカナに対して敬語を使う。


「セントウダさん。なんで敬語なんですか……?」


 レイハは初めから敬語なのでそんなに気にならない。むしろ、自分のような中学生になったばかりのものにも丁寧に接してくれている。カナはその事が嬉しいのだ。


 しかし、サトシはそうではない。初めてまともに話したのは先の応接室の和解のときだ。そのとき、サトシはタメ口をたたいていなかったか。


 丁寧に接してくれるのはいい。けれど、タメ口から敬語になったのだ。カナにしては、それが不気味なのである。


「いえいえ、お構いなく。これは僕の気持ちの問題なので」

 サトシはカナの気持ちを知ってか知らずか、こんなことを言い出す。


「はぁ……」

 カナは困惑の色を隠せない。


「ところで、どのようなご用件でしょうか」

「あぁ、実は、ミコトさんのことでお話が……」

 サトシは相変わらず敬語を使っている。いちいち気にしてたらキリがない。カナは気にするのをやめた。


「ミコト君のことですね……」


 サトシは一息置いたあと、こう切り出す。

「僕としては、直接話がしたいです」


「えぇ」

 カナはたまげる。サトシから思いもよらない返事が返ってきたからだ。


「えーと、それってどういうことでしょうか……?」


「撃たれた事を根に持ってると思っているんですか? そんな事はありません。僕は撃たれて当然ですから」


『私は撃たれたくない』

 ジェイが口を挟むが、サトシは無視する。


「ならいいですけど……でも、ミコトさんの方はどうなんでしょうか?」


 撃った方はどう思うのか。当然、顔も見たくない。だからこそ撃ったのだ。

 そんな相手を快く迎え入れるだろうか。もしかしたら、復讐されるかもしれない。普通ならそう考えるだろう。

 カナはサトシの真意がわかりかねた。


「会いたくないですよね。そりゃ、そうだ」

 サトシはガッカリした様子で答える。


「その事なんですけど。ミコトさんは『話だけなら聞いてやれなくはない』って言ってましたよ。『赦しているわけではない』とも言ってますけど……」


「本当ですか!?」

 サトシの顔が輝いた。


「私としても、ミコトさんがセントウダさんとお話する気になったのは嬉しいんです……ただ、お二人がお話するというのに、他にもいるのが私だけ、というのは……」

 カナはどうしていいのかわからない、という顔になる。


「なるほど」

 サトシはしばらく考え込んだ。





「――で、余の所に来たというわけか」


 ウラトは、椅子の上でふんぞり返っている。そこから、目の前のサトシを鋭い目で見ていた。


「余は暇ではない。小僧との揉め事にはかかずらいたくないがな」

「そう仰られても。というか、この件に関しては、僕は被害者ですが」


「それはそうと、なぜお前はミコトに拘るんだ。理由を話せば、協力してやらんでもないが」

 ウラトは脚を組んだ。


「話すと長いよ?」

「構わんぞ」


「笑わないで、聴いてくれる?」

 サトシは睨みつけるように、目を細めた。

「いいから、話してみよ」

 それに対して、ウラトは真剣な眼差しを返す。


 サトシは、睨みつけるような眼差しから一転、半笑いに変わる。そして、イチジョウ=ユウジを殺した経緯をウラトに語った。

 人を殺したという話にも関わらず、語り口は軽薄に感じられるものだった。


「笑わないんですね」

「笑わないで聴けといったのは、どこのどいつだ。だいたい、笑える話ではない」

 ウラトは呆れたようにため息をつく。


「いや、予想外だったもので。笑われるかと思ったんですけど」


「貴様にとっては笑い話なのか。本当に自分のことしか考えとらんのだな」

 ウラトの物言いこそ叱責するような内容だったが、そこには哀れみが篭っていた。


「まぁ、よい。貴様のような人間に何度かお目にかかったことはある。伊達に長生きしとらんわ」


「長生き、ねぇ……」

 サトシはウラトを見やった。


「とても長生きされてるようには見えませんね。それと、もっと背が高いような気がしますが。オグマの記憶ですけど」

 サトシは疑うような眼差しを送る。


「そういえば、お前はオグマの記憶があるのだったな。では、余の周りに何がいるんだ?」


 サトシはウラトとその周りを見てみる。そこには誰もいなかった。

「えーと、どういうこと?」


「とぼけるでない。オグマの記憶があるのなら、余の言ってることがわかるだろう」

「あー、そういうこと」

 サトシは納得したように頷く。

「残念ながら、何がいるのかわかりませんね」


「成程な。やはり、お前の『吸血した相手の能力を手に入れる力』は不完全なようだ」

「ははは」


 ウラトに能力のことを指摘される。正直あまりいい気分はしなかったが、事実だから仕方がない。サトシは力なく笑った。


「ところで、お前はミコトに会いたいんだったな。会って何する気だ?」

「会って何するって……」


『私は会いたくないんだが』

 サトシが考え込んでる時、ジェイが差し込む。


「もっとも、お前が会いたくても、ミコトは会いたくないだろうよ。あとジェイも」


「奴の話はやめろぉ!」

 サトシは頭を抱えて喚いた。


「その反応を見るに、やはりジェイは会いたくないようだな。ま、銃は取り上げたから撃たれる事はなかろうよ」

 ウラトはあっけらかんと言い放つ。


「銃を取り上げたんですか?」

「左様。お前にしか当たらなかったからいい様なものを。もしカナに当たってみろ。それこそ大ごとよ」


「僕はいいの?……いや、僕は撃たれて当然なんだけど」


「余が話し合いの席に行くわけにはいかんが……そうだな、アサトなら送ってやろうか。それならば、カナも安心するだろう」


「ありがとうございます」

 サトシは頭を下げた。


「ひとつ言っておく。ミコトはユウジではないぞ」

 サトシが執務室を出ていこうとしたとき、ウラトが、釘を刺した。


「……言われなくても、わかってますよ」

 サトシは呟いたあと、執務室を出た。


***


 ――後日。


『ミコトさんとは、一階の応接室でお話することになります。それでよろしいでしょうか?』

『応接室ですか。承知しました』


 カナとサトシはスマホでやり取りしていた。

今までは、二人はレイハを介していたが、この前、直接会っている。なにより和解をしているのだ。だから、わざわざレイハの手を煩わせる必要はないだろう。ということで、直でやり取りするようになったのである。


『セントウダさん。私とアサトさんも一緒です。二人きりだと、何かあった時に大変ですから』


「『何かあった時』ねぇ……」

 スマホに送られたカナのメッセージを読む。サトシは苦笑いした。


『本当に行く気か。銃は没収したとは言ってたが。それでも会いたくない』

 ジェイは改めて異議を唱える。サトシはやはり無視した。





 サトシはカナに連れられて、応接室に向かった。


「来たか」

 部屋の前にはミコトと、アサトがいた。


「本当に来たんだ。ごくろうさま。ワンちゃん」

「口の利き方に気をつけろ。誰のおかげでミコトと話ができたと思ってるんだ」

 変わらず無礼な態度を取るサトシに対して、アサトはぶっきらぼうに返した。


 四人は応接室に入る。サトシとミコトはそれぞれ向かい合うようにソファーに腰掛けた。カナはミコトの隣に、アサトはサトシの隣に座る。


 しばらくの間、部屋には重い沈黙の空気が流れた。


「……ミコト君。どうして僕と顔を合わせようと思ったの?」

 最初に沈黙を破ったのはサトシだった。


「それは……あんたに言いたいことがあって……」

 ミコトは伏し目がちに答えた。


「あんたと会う前に、コフタさんと話したんだ。コフタさん、あんたを赦すって言ってたけど……

 最初、何言ってんだ、って思ったよ。コフタさんだって、父さん殺されたのに……


 でも、その後、よく考えたんだよ。あんたのこともさ。

 だって、よく考えたら、あんただって化け物にされたんだ。父さんが関わった研究のせいで。


 そうだ、父さんだって責任はあったんだ……父さんのこと、憎んでたんだろ? 父さんのせいで、化け物になったんだから。

 だからさ、そもそも俺にはあんたを撃つ資格なんかなかったんだ……だって、父さんのせいだもの……」


 ミコトは俯きがちに喋っている。サトシは黙って聴いていた。ミコトが話を止めたと見るや、サトシは口を開く。


「話はそれでおしまい?」


 ミコトは怪訝な表情を浮かべ、サトシを見た。


「僕は別に君の父さんを恨んでないよ。化け物になったのは自分の意思だし」


「じゃあ、どうして……」

 ミコトは首を傾げた。


「ミコト君、テーブルの上に両手を出して貰っていいかな」


 ミコトは言われるままに卓の上に両手を出した。すると、サトシは両手を掴んだ。


「何をするんだ!」

 ミコトは恐怖を感じ、すくみ上がった。


「セントウダさん! 何をするんですか!」

「セントウダ! やめろ!」


 サトシは三人の訴えを無視する。身体を前のめりにし、掴んだ両手を首のところに持っていった。


「殺せよ! 僕は君の父さんを殺したんだぞ!!」

「離せよ!」

 ミコトの離せという訴えも無視する。サトシはミコトに自分の首を絞めさせようとした。目は狂気走っている。


「何をやってるんだ!」

 ――このままでは、何をしでかすかわからない。セントウダを止めなければ――そう判断したアサトは、己の力を解放しようと決めた。


 その瞬間、鼻は尖り、歯は牙に変わる。全身から体毛が生じ、手から鋭い爪が生える。顔の方を見ると、狼になっていた。


 ウェアウルフになったアサトは、瞬時にサトシの手をミコトから剥がす。勢いで、サトシをソファーに押さえつけた。


「僕はユウジさんのことが好きだったんだ! でもユウジさんは家族を選んだ! だから殺したんだ! そんな理由で殺したんだぞ! ミコト君! 君は僕を殺さないといけないんだ! 殺せぇー!!」


 サトシはアサトの変貌を意に介さず、依然として喚いている。


「驚かせてすまない」

 アサトはカナに顔を向けた。姿はウェアウルフのままである。

「ありがとうございます。オオガミさん」

 カナは一礼した。


「とにかく、ここを出た方がいい。ミコトに何かあったら困る」

「では、おまかせします」


 ミコトは状況が飲み込めず、呆然としている。カナはそんなミコトの手を引いて、共に応接室を出た。


「なんで止めたんだ! 僕なんか、殺されて当然なんだ!!」

 サトシは相変わらず呻いている。


 アサトは喚き散らしているサトシの顔を見る。目から血が流れていた。

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