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第18話 Toys in The Attic

 ――数日後。


「ウラト様。セントウダ、いや、ジェイは如何なさいましょうか?」


 アサトは、ジェイの処遇――今はサトシになっている――について尋ねた。


「ここに置いておく。野に放つ訳にはいかないからな」

「ここに置いておく、というと?」

「そのままの意味だ」


「…………つまり、ジェイには何もさせない、と?」

「今の奴に、なにかさせる訳にはいかんだろう。少なくとも、今は完全にセントウダだ」


「ところで、私は、いかが致しましょうか?」


 アサトの問に対し、ウラトは考え込む素振りを見せた。

「うむ……アサト、お前をジェイ監視の任から解く」


「大丈夫なのですか? 我らに歯向かうかもしれません」

「ジェイに任せた方が確実だろう。奴ならば、カナに危害を加えることは看過せんだろうし。それに、なにもできん奴のお守りはさせたくない」


「任せる、ですか……」

 今のジェイは、サトシに文字通り、近しい存在だ。その気になれば止めるどころか、乗っ取ることさえ容易い。

 もっとも、何故乗っ取らないのだろうか。そこが引っかかるが。


「ミドリ製薬はしばらく、身動きが取れまい。だからこそ、油断ならんのだ。お前に、そっちを任せたい」


「承知致しました」

 アサトは深深と頭を下げた。



***


「――母さん。いつまで俺たちは、ここに入ればいいの」

 女性に向かって、少年がぼやく。少年は同年代と比較して、背が高く見える。


「イハラさんは、私たちを守ってくれてるのよ。父さんが巻き込まれた事件のことも調べてくれてるんだし」

 母さんと呼ばれた女性は、少年をたしなめる。


「母さん。俺、イハラ=ウラトって奴はなんか企んでるような気がする。だって、ここに父さんを殺した奴を連れてきたって。それに……」


 少年は、拳銃を取り出した。ウラトが護身用にと、渡したものである。


「ミコト!」

 女性は少年を制した。


「……ミコト、馬鹿な事はやめて。お母さん、あなたまでいなくなってしまったら、なんて、考えたくないの……」




「――ウラト様。もうひとつ気になっていることが。ここにいるイチジョウ=ユウジの、家族のことですが」

「イチジョウ=ルカとミコトの事か?」


 先月から、ウラトの招きにより、伊原邸に新たな《《客人》》が滞在することになった。その客人というのが、イチジョウ=ルカとミコトというわけだ。


「はい、ご家族に、セントウダの話をしたとの事ですが……」


「うむ。ミコトの方が知りたがっていたのでな。『何故、父親が死んだのか』を。息子なのだ。知りたいのは当たり前だろう」


「だから、セントウダの話をしたと」


「そうだ。これに関しては、隠し立てをする必要性を感じなかったのでな。それに、ユウジは内部告発をしようとしたのだ。尚のこと、隠すことではない。


 どっちにせよ、研究のことは預かり知らぬとはいえ、家族だ。知ろうが知るまいが、危険な目に会うことは充分に考えられる」


「だから、庇護下に入れたのですね……セントウダが今、ここにいるということも話した、と聞きましたが」


「迂闊にウロチョロするな。何かあっても知らんぞ、ということを言いたかったのでな」


「……ご家族に銃を渡したのですよね?」


「それはな、用心の為だ。余はエリを守らなければならぬからな。ここを襲撃される、ということは考えたくはないが。『死にたくなかったら、余計なことはするな』と言い含めておいたし」



***


 ――1ヶ月前。


「余に、何の用だ」


 エリと初めて会ってしばらくした後、カナはウラトの元に来た。そんなカナを、ウラトは怪訝そうな目で見る。


「アタシになにか、手伝えることはないかなー、って」

 カナは、にっこりと笑みを浮かべる。


「……お前、カナではないな?」

「正解! よくわかったね。アタシ、リリーっていうの」

 リリーは、改めて自己紹介をした。


「カナには、エリの話し相手、という重大な任を任せておる。それを不服と申すか?」


「それも大事だけど。アタシとしては、もっとやれるよ? ああ、殺しはダメって言われた」


「殺し以外はやれる……か」


 ウラトは考え込んだ。その上で、次のような結論を出した。

「では、お前には、《《ここに》》行ってもらおう――」



 ――カナが――正確にいうとリリーが――研究所に潜入したのは、こういう経緯があったのである。

 カナは、このことについて、思いを巡らせていた。


 続いて、研究所から連れ出したサトシ――正確にいうとジェイ――について、ウラトと一悶着あったことに思いを巡らせる。


「……ごめんなさい、リリー。折角、イハラさんの信用を得たのに。私が、余計なことを言ったばっかりに」

『なんで謝るの。カナは、思ったことを言っただけでしょう』

 カナは、頭の中にいるリリーに、話しかけていた。


『それに、悪いなんて思ってない』

「……リリーの言うとおりだわ。でもね、正しいことでも、言い過ぎてしまうと、よくないのよ」

『よくわかんないや。めんどくさいね。人間って』


 厳密に言えば、カナもウラトも人間ではない。とはいえ、ものの考え方は人間のままだ。リリーにしたら、同じ人間なのだろう。カナは、そんなふうに考えた。


「決めたわ。もう一度、イハラさんのところに行く」

『アタシじゃなくていい?』

「これは、私とイハラさんの問題なの。リリーは、見守ってくれる?」

『わかりました。でも、なんでイハラのところにいくの?』


「それは――」

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