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旅立ち
時代は昭和初期
一人の美女が港の船上にいた。
歳の頃は20代。
聡明な顔立ちに気品漂う美女だ。
旅客船、瑞光丸の甲板に立ち、そよ風で美女の髪が揺れる。
夕陽差す中、ゆっくりと船は動き出した。
美女の眼は希望の輝きに光っていた。
ロイドメガネの男が美女に近ずき話しかけた。
「お嬢様、いかがです?内地を出る感想は?」
「最高ですよ」と美女は答えた。
男は「それは良かった。やっと橘さんに会えるのですからね」と言った。
「曽根さんのお陰ですよ。感謝してます」と美女は言った。
曽根は一礼し「では船室に戻りましょう」と美女に声をかけ、二人は甲板から船室に向かった。