ナーサリー・ライム
誰もいない、夜道で
私は、彼女の車いすを押しながら彼女を見る
「ね、どっか行っちゃおうよ」
驚く私に、彼女は続けて言った。
「みんな・・・だれも、わたし達のこと必要としてないんだよ!笑える、よね」
彼女が、笑った
とっても悲しそうに
「どっか・・・行っちゃお」
私は、返答に困っていた。
いつも、あんなに明るかった彼女が、泣きそうな顔で
そんな彼女を、放っては置けなかった。
「私も・・・いくよ。・・・どこがいい?」
すると、彼女は、少し驚いた反応をみせてから、こう言った。
「誰も・・・いない場所」
「うん・・・」
少しの間、沈黙が続く
「ねえ・・・」
「どうしたの?」
「・・・抱きしめて」
「・・・いいよ」
彼女を、抱きしめる
「ねぇ・・・」
泣きだしながら、彼女は言う
「しに・・・たいの・・・」
私は、何も言うこともできないまま、抱きしめていた
せめて
彼女の心が、少しでもあったまるように
「わたしのことなんて、いいから・・・あなたは・・・あなたには、もっといい人が居るよ!」
「そんなこと・・・ない」
静かに泣きじゃくる彼女を、強く抱きしめる
「キミが死ぬなら、私だって」
「だめ・・・だよ・・・」
近くのベンチに座って、身体を寄せ合う
「どこかに・・・行っちゃおうか。どこか・・・遠い場所」
「・・・」
「海外にでも、行こうよ」
「・・・う・・・ん」
「船に、乗ってさ・・・みんなと、サヨナラするの」
彼女を、もっと抱き寄せて、
告白する
「好き」
「大好き」
「実は、お金、もう溜まってるんだ。キミの・・・為に」
「・・・どこに、行くの?」
「フランス・・・にでも行こうかなってご飯も、美味しいし」
「うん、でも、今の仕事は?」
「そんなもの、キミの為なら、どうだっていいよ。・・・それに・・・さ」
「?・・・うん」
「キミの、夢。その手伝いをしたいなって」
「・・・ありがとう」
「きっと、成功するよ。だって、キミにはその夢をかなえられる程の才能があるんだから」
「そんな・・・こと・・・」
「信じて・・・絶対に、わかるから」
「そんな、童話や絵本みたいなこと・・・」
「起こるよ、私の、”勘”だけどね」
彼女は、泣いた後の、笑みを浮かべながら
「変わり者・・・だね」
その言葉に、私は
「そう・・・かもね」
笑いながら、そう答えた