ダンナさん
「どっちかな〜」
悩んでいます。頭の中でグルグルと、
「どっちかな。悩むなあ〜。どうしよう」
とても大事なことで悩んでいるようです。
「何か、すご~く悩んでいるみたい。どうにかしてあげたいけど。どんなことなのか話してもくれないから、どうにもできないや。」
まわりのみんなは心配していますが、どんなことで悩んでいるかわかりません。話を聞こうと話しかけると、
「いま、考えてるからじゃましないで!」
反対に怒られてしまいます。
「心配して、聞いているのに」
まわりのみんなは、あきれ返りなにも言わないことにしました。
数日たってもまだ、悩んでいます。そして扉の向こう側へ閉じこもってしまったのです。そのため、宇宙はとても大変なことになってしまいました。でも、よほど大事なことで悩んでいるのだろうと、みんなはなにも言いませんでした。
それから数ヶ月がたちましたが、まだ閉じこもっています。みんなは仲間である一つの惑星を心配していました。扉の向こうへ閉じこもってしまったために、その惑星では大変なことになっていたからです。
「だいじょうぶかしら。地球さん。」
「見た感じ、顔色がだいぶ悪くなってるからな。お〜い、だいじょうぶか?」
月さんと火星さんは心配で声をかけました。
「う、う~ん。なんとか今のところは。でも、だいぶ悪くなってきたから、そんなに長くはもたないかも。」
とてもキレイだった地球は、青い水が黒くにごり緑の植物は枯れて黒くなってしまいました。そして、地球に住む動物たちは食べ物がなく黒い大地に溶け込んでしまいました。そのため、地球は真っ黒な姿になってしまったのです。
月さん、火星さん、金星さん、水星さん、そして他のみんなも心配で声をかけあい相談しました。
「もう、限界だ。あのダンナさんに早く出てもらい、やることやってもらわないと」
「そうよ。早くしないとみんなも、どうにかなっちゃう。」
「ダンナさんもガンコだからね。オレたちが、なにか言ってもな・・・」
「そんなこと言ってる場合じゃないのよ。地球さん、かわいそう。」
惑星のみんなは話し合い、ダンナさんの所へみんなで行くことにしました。
「どっちかな〜。悩むな〜」
いまだに閉じこもり悩んでいるところへ、月さんたちみんなはやってきました。
「ダンナさん。なにを悩んでるんですか?出てきてもらえませんか?」
声をかけた火星さんを扉のすき間からのぞき見て、まわりをキョロキョロ、
「どうした?みんなでくるなんて。」
「どうしたは、ないでしょ。今、大変なことになっているのに。」
月さんはちょっと声高に言いました。
「なに、プリプリして。なにかあった?」
ダンナさんはわけが分からず、軽い口調で笑いながら聞きました。
「いまね〜、どっちかで悩んでるから忙しんだ。あとじゃダメ?」
「ダメに決まってるでしょ。いま、大変なんだから。早くしないと地球さんが・・・出てきてよ!」
水星さんが涙声で言いました。
「その、ダンナさんの悩みってナニ?」
「そんなに大事なことなの」
金星さんと火星さんが扉越しに聞きます。
「そうそう。」
木星さんと土星さんたちは扉から遠く離れた場所でうなずいていました。
「そうまで言うなら、みんなに聞いてもらって決めようかな?」
みんなのようすを確かめるようにダンナさんは言いました。
「そんなことより、地球さんよ。早く助けてあげないと。ダンナさん、自分のことで悩んでないで地球さんのためにやることやってよ。」
扉の一番近くにいる水星さんは涙を流しながら必死に言います。
「ダンナさん頼むよ。いつもの姿に戻って、やることやろうよ。それがみんなのため。地球さんを助けることになるんだ。ダンナさんはみんなの『太陽!』だから。お願いだ!」
火星さんは、今にも泣きそうになりながら言いました。
「それだ。太陽だ‼」
突然、大きな声をあげたダンナさんに、みんなはびっくりしました。
「びっくりするじゃない。どうしたの?」
扉に向かって月さんが言いました。
「解決したんだよ!今まで、『お日様』なのか『太陽』、どっちの名前がいいかで悩んでいたんだ。」
「オイオイオイ、本当かよ。それで何ヶ月も顔を出さずに閉じこもっていたのかよ。」
金星さんはダンナさんの言葉にあきれ返りました。
「あんまりだわ。そんなことのために地球さんが・・・」
水星さんは泣きくずれてしまいました。
「まあ、まあ、まあ、それよりダンナさん、自分の悩みも大事だが、みんなのために、やることやろうよ。ダンナさんの悩みをちっぽけとは言わないけど、やることをやって、みんなの太陽でいてほしいんだよ。ダンナさん」
火星さんの言葉にみんなはうなずき、
「ダンナさん。地球さんを助けてあげて。ここにいるみんなの太陽でしょ。」
月さんは言いました。
「ゴメン!みんな」
少しづつ扉が開き、徐々にまわりが明るくなり、ダンナさんが出てくると同時に全てが光り輝きました。
「これこそ、みんなの太陽!」
惑星のみんなは声をそろえて言いました。
ダンナさんは満面の笑みを浮かべ、
「みんな、迷惑をかけてゴメン。やることやって、みんなの喜ぶ顔を見るのが一番だ。みんなありがとう。」
「ダンナさんがいるから、みんな嬉しいのよ」
水星さんはじめ、みんな笑顔でいっぱいでした。
その後まだ、地球さんは、元の姿に戻ったわけではありませんが、ダンナさんはじめ、まわりのみんなの助けを受け、徐々に元気をとりもどしています。