名探偵とAIと事件が起きない世界
文化放送「下野紘、巽悠衣子の小説家になろうラジオ」の
第二回「小説家になろうラジオ大賞」に参加するために
再投稿させてもらいました。
――時は西暦二〇二✕年――
八十年を超える歴史を持つ名探偵の一族《矢代家》。
警察との結びつきが強く古くから協力関係にあり、捜査に多大なる恩恵をもたらしていた。
そんな一族に生まれた少年《矢代六太郎》。
空手五段、柔道五段、剣道四段の段位を持つ天才的な運動神経、格闘センスに恵まれるも、探偵としての能力が絶望的で親族の間で落ちこぼれ扱いされていた。
そんなある日、警視庁から一つの小包みが送られてくる。
開けてみると中には一つのスマートフォンが入っていた。
起動してみると中には少年なのか少女なのか、よくわからない人間の姿があった……。
「何なんだこれ? バーチャルユーチューバーか?」
「当機はワトソン、政府により開発されたAIです」
独り言に反応したAIに六太郎は面食らう。
ワトソンが言うには、自分が日本政府の科学の全てを集めて作られ、警視庁の管理下のもと試験導入された《犯罪対策AIプログラム》であるとのことだ。
「AIが犯罪を解決するっていうのか? どうやって?」
「未来に起こる犯罪を予測するのです」
「未来予知、そんなことが出来るわけ――」
「可能です。この世に起こり得る全ての自乗は、計算によって導き出せます。当機は量子コンピュータを用いることで、更にインターネットから得られるありとあらゆる情報を分析することにより、未来に起こり得る犯罪を事前に観測することが可能なのです。事件が起きてからではなく、事件が起きる前に対処し被害者も加害者も出すことなく、解決するため当機は作られました」
「……なんかしれっととんでもないことを言ってねえか? それって歴史がひっくり返る大発明なんじゃねえのか?」
「しかしながら、当機に可能なのは犯罪を観測するところまで。後は人間の手で処理する必要があります。政府の検討の結果、あなたがその被験者に選ばれました」
「俺に……事件を解決しろと……?」
未来の事件が観測されるとスマホのアラートがなって六太郎は出動する。
犯罪が起きる前に先回りすることは時間との勝負。時折り予期せぬタイミングで出動させられたり、時には暴漢と取っ組み合いになることも……。
それでも六太郎は己の正義を胸に、運命に抗い続ける。
肉体派探偵とハイスペックAIが奔走する、近未来バディヒーローアクション!