白の魔法使い
夢を見た。
真っ白な世界。
見渡す限り上も下も左も右も分からないほどに、その空間は白かった。
どこまで続いているのか、どこまで白なのかは分からないけれど、その中に一人ぽつんと少女は居た。
周りに負けない様な真っ白な髪を腰まで伸ばし、白いワンピースから覗く四肢は透けるような色白。
なにより、この空間には似つかわしくない瞳の色。
時間と共にその瞳の色は変化していく、不思議な瞳。
ふと、少女はなにかを思いついたように手を指揮者のように振る。
呼応するように白い空間が水面のように揺れ、徐々に空間が黒く塗りつぶされていく。
音はしない。ただ周りの景色だけが、変わっていく。
不思議な感覚の中、変化はあっという間に終わり、白い空間は黒く塗りつぶされた。しかし、先程と違うのは色鮮やかな星達が頭上で光輝き、足元の遥か下にはふんだんに水を湛えた星があった。
そう、少女は宙に浮いている。
微笑む少女の頬が朱色に染まる。
そして、また指揮者の様に手を振ると、その身体は本来の意味を取り戻したように、自由落下を始めた。
風を切る音だけが、頭の中に響く。
青く輝く水面が迫る中、少女は微笑み続ける。
真っ直ぐ見つめるその先は果てしなく青い海。
そこで、夢が覚めた。