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二 林家の兄弟たち(一):羅山と永喜

 林家は代々男兄弟の仲が非常によく、兄弟が協力して家業に励む傾向がある。羅山の父信時は次男だった。羅山は信時の長男として生まれるが、生後間もなく子のなかった兄吉勝の養子となり、本家を継ぐべく養育されることになる。吉勝は米穀商を営んでいたが、元々林家は藤原氏の末裔で士族だったとも伝わる。

 羅山には二歳年少の同母弟永喜(信澄・東舟)がいた。羅山は二十三歳で六十四歳の家康に謁見し、翌年から正式に仕えることになるが、永喜もまた兄の後を追って駿府へ下り、家康と秀忠に謁見、主に秀忠に仕えることになる。羅山は既に剃髪しており、永喜も兄に続いて法体となる。

 羅山の息子鵞峰は、羅山と永喜を儒学では有名な兄弟儒学者、二程子に擬し、羅山の温和な気象は兄明道に、永喜の厳格なところは弟の伊川に似ている、と評した(西風涙露)。とはいえ、永喜は秀忠の御前で不用意に笑って不興を買ったといった事件があったらしく、羅山がそれをやんわりとたしなめる詩が残っているので、次男坊らしい奔放さというか、やんちゃなところがあったのかもしれない。

 なお、羅山の生母は羅山が四歳の時に没しており、実父が迎えた後妻との間に甚性、宗吉の二人の異母弟がいる。二人はいずれも若くして僧侶となっており、羅山より二十歳年少の甚性は二十二歳で没し、その弟と考えられる宗吉も早世したと伝わる。共に詩才に恵まれ、羅山と交した詩の贈答が伝わっている。



          ※


聞くならく 人心 覆傾し易しと

君門 千転 幾時か平らかならん

士龍 舟中に向かひて笑うこと莫れ

世上の風波 行くべからず

      林羅山「永喜に示す」(咲ひを好む者の炳誡へいかいと為す)


   人の心は変化しやすいものと聞く

   主君の心もしばしば変わり、一定の時などないものだ

   士龍(陸雲)は舟の中で笑いすぎて溺れそうになったと故事にある

   彼のように笑ってはいけない

   それでは世間の荒波を渡って行くことなどできないぞ


「日ならずして雷霆怒り解けて、近侍恒に倍す」とあり、怒りは間もなく解けたらしい。

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