二日目
……あれ?
なんで布団の中にいるんだ俺。昨日寝たときにはこんなもの無かったじゃん。
メインヒロインは突然現れる!――的な?
だが、布団が現れてもちっとうれしくねーぞ。
せめてフレンズみたいに擬人化してくれよ。今日は一晩中暖めて差し上げますご主人様、みたいな。
「……すまんが、起きてはくれんか」
ぬお!
「誰だこのいかにも普段何も考えずに男とくっついてます的な女は!」
なんてこったい、心の声がそのまま出てしまった。
「私は――バカミ」
「……は?」
「私の名はバ神美。カタカナのバに神さまの神に美しい、と書きます」
「……本当にそれがお前の名前?」
「馬鹿にしないでください。全宇宙の支配者にしてこのファストアプリリアスの創造主、我が母アホロディーテより頂戴した大事な名前なのです」
母子そろってアホだった。多分父親はアホロンとかそんな感じだろ。
「もしかして……お前がこの異世界の神様なのか?」
「その通りです。まずは、あなた様のお名前を伺いたいのですが」
「うーん、そうだなぁ。……キャンって呼んでもらおうか」
「それではキャン。あなたには、この世界を救って頂きたいのです」
目の前のロボット倒さないとぼくらの宇宙が消し飛びます、くらいの唐突さだな。
ははーん、この異世界はセカイ系なのね。俺の危機が世界の危機! ……『運命の選択』みたいな。
だがしかし!
「世界っていうけど、ここには何もないじゃん!」
「ここは、『スピリチュアルアンドテンポラルチェンバー』です。外界からはゼロファスティナによって隔絶されています」
後半意味不明な説明入ってたけど、要するに精神と時の部屋って訳か。
「『スピリチュアルアンドテンポラルチェンバー』はゲシュタルタルーティンコ理論における相対的な特異臨界点で、そのエネルギー収束密度は――」
「だぁーうるさい! 説明おばさんやめろ!!」
「失礼をいたしました」
「で、俺は何をすればいいんだ?」
「世界征服を企む暗黒秘密組織結社『アマル・ガムゼーレ騎士団委員会』を倒して欲しいのです」
カプレーゼが余ったみたいな名前だな。厨二病もたいがいにしろ。
っていうか、こいつ本当にただのバカじゃん。神様というのは、知能が野○しんのすけ並でも務まるらしい。ベルダンディーがこれ見たら泣くぞ。
「もちろん、タダで恵んでもらおうとは思いません」
ん? その台詞はどこかで聞き覚えが――
「ですから……あなた様と……契約を……」
ちょっ、何の前触れも無く上着脱がないで。
くそっ、ゲームだと超興奮するのに実際やられるとおたおたしてしまうのは何故だ!
「あー……エッチなのはいけないと思います!」
しまった。童貞歴が長すぎてウブなことを言ってしまった! ここは異世界だぞ。ヤリたい放題なんだぞ。自分の欲望に制限をかけてどうするんだ!
「そんなこと言って。カワイイわ、ウフフ……」
あ、関係なく押し切ってくれるのね。じゃ、遠慮無く!
「では、ディザルティマティアと契約することによって、暗黒天井魔法『サジマルゴン』の使用を解放する――」
「だぁーっ! この期に及んで厨二病設定はやめてくれ!!」
あれ、急速に眠気が……。くそ!
俺たちの冒険は……まだ始まった……ばかりだ!
誰かに……睡眠薬でも……盛られたか? いや……さっきから何も……飲んで……ないか……。
嗚呼、バ神は……バカだけど……きれいだな……。
……オオカミ王に……俺は……な…………る…………。
ガクッ。