1話 ナハト、霧夜にて
……しまった。ご主人とはぐれてしまった。
今日はハロウィン。ここ霧夜という街では野外で仮装パーティを開くらしい。
お祭り好きなご主人は、「にゃあ! すっごく楽しそう!これは参加しなくちゃ! 行くよーナハト!」
と猫耳と尻尾を付け夜の街へ飛びだし、露店で赤ワインを飲み始めた。最初は彼女が心配で同行した私も、響き渡る音楽と様々な格好をした人々に魅了され、祭りの様子を楽しんでいた。……と、ここまでは良かったのだが、どんどん前に突き進む彼女、溢れかえる人々に塗れ、彼女とはぐれてしまったのだ。
「ほんと貴方って心配性ねぇ」
隣では胸元が一部露出したナース服を纏ったアゲハがからかう様に笑った。
「こういう時は道に迷うのも楽しむものよ。さすが私の猫姫ちゃんは分かってるわね」
「……ナンセンスだ。 あぁ彼女が心配だ。今頃悪い男に絡まれてはいないだろうか?」
私はため息を吐く。霧夜はスカイブルータウンと違い、怪しい雰囲気の街だ。素行が悪そうな人間も、何度か目にした。
「ほんっと真面目ね騎士ねぇ。そういう所が可愛いのだけど。じゃああたしもそろそろ行くわ」
「え?」私は驚いて彼女の顔をみる。アゲハはニコリと笑った。
「あたしがただこの格好をしているだけと思って? 今日は久々に霧夜に来たのですもの。ディスコで踊り明かすわ! じゃね、ナイトさん。貴方も今宵を楽しみなさい」
「ま、待ってくれ」そう呼び止めたが、彼女は凄い速さで人混みの中に入っていった。
「……やれやれ」一人取り残された私はもう一度ため息を吐く。アゲハとご主人は、やはり似ているのかもしれない。
まぁ確かに私も心配性すぎるのかもしれない。彼女を探すついでに、散策でもするとしよう。
そう考えていた矢先、身体が宙に浮いた。
私は驚いたが、ほっと安心した。
「ご主人、探したぞーー」
しかし振り返った先はご主人ではなく、ツインテールの少女の姿だった。少女は微笑む。
「こんばんは、黒猫さん。貴方も迷子なのですか?」




