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月(あれ)は私(バニー)がいただきます  作者: 三七十 十六
第一章 始まり
31/54

結局何がしたいの? 17分の3

 整備隊室の奥にある用具置き場に入ると、臭そうな装備、緊急脱出用装具や加圧スーツがずらりと整頓されていた。


 その列の一部が空いている。敢太たち、第一戦闘機部隊が使っているのだ。


 奥の扉から更に奥へと進んだ。短い廊下を進むと5メートル四方の空間があり、机が一台とエレベータが一基ある。

 山部がセンサーに手をかざすと、エレベータの扉が開いた。やけに狭い。


「二人乗りなの。誰から行く?」


 瑠美が乗ると、山部も乗った。もう一人乗れそうだが、それは瑠美が小さいからで、山部と司令が乗るとなると、いっぱいになる。糸城ほどの大きさならば一人乗りだ。


 瑠美は、ここでも違和感を覚えた。エレベータには必ずあるはずの階ボタンがない。


 2ヶ所しか止まらないからであるならば、何も不思議には思わない。では、普段使っている他のエレベータと違い、壁の囲いではなく網篭状であるのはなぜか?扉の内横にある操縦桿のようなものは何か?


「これって、もしかして」

「掴まって!行くわよっ!」


 扉を閉めた優理奈は、瑠美が手摺を握ったのを見て勢いよく操縦桿を下に倒した。


「あっ!!」


 瑠美は咄嗟に手摺を握る力を強めた。


 体が浮いた。しかし、足は床についている。二人を乗せた網篭は落下に近い速度で降下していった。


「優理奈さん!これっ、エレベータじゃないじゃない!!」

「・・・」


 網目を抜ける風が二人を包み、瑠美の大声はかき消された。しかし、上階のじゃじゃっ娘のもとには届いていた。


「何?今の声」

「むちゃくちゃ速かったけど、ただのエレベータじゃないわね」

「楽しそぅ」

「えっ!?」


 羽菜と奈央のひきつった顔とは対称的に、穂美はワクワクしている。


 網篭は速度を落とし、広い空間に出た。壁に沿って降下していく。


「も~ぅ、何なんですか?これ~」

「ここからが本番よ!」


 優理奈は左手で外を指差した。そこには巨大な"モノ"があった。


「あっ、そういうことですか」

「ンッフフ、驚いたときは少し大きめに表現したほうが、男受けいいわよ」


 一目では全貌を捉えられないくらい大きな円筒形の建造物がある。


「こんなところにあったんですね。ここは、、、広場の真下ですね?」

「そうよ。さすが、勘が鋭いわね」


 優理奈の操縦で、網篭は縦横自在に壁に沿って動いた。


「どう?すごいでしょ」

「すごいってもんじゃないですよ。司令は本気なんですね。これでよく分かりました」


 それはロケットであり、大きさからして宇宙船であることは明らかである。バレルの10倍はくだらない。


 その周りを囲むように同じく円筒状に壁があるり、網篭は周回しながら一定の速度で降下していく。


 床に到着するのに、それほど時間はかからなかった。


 ”手動”エレベータから降りて、瑠美は見上げた。天井が見えない。


「おっきぃ」


 思わず声に出た。


「じゃ、次の人連れてくるわ」

「はい」


 山部は篭に乗って、一定の加速をしながら、まっすぐに、一人で昇っていった。


 瑠美はその場で立って待っていた。しばらくして、上の方から悲鳴のようなものが聞こえた。


「イャ~~~~~」

「あっ、羽菜だ」


 降りて来た篭は瑠美の近くで止まった。予定どおりのところに着地する。山部の”腕”なのだろうと、瑠美は感心した。


 羽菜は驚いた様子で、口を開けてやはり見上げた。


「あんた、なんて顔してるのよ」

「アッハ、ハ」


 思わず笑った瑠美だったが、羽菜はそれどころじゃないようだ。


「瑠美ちゃんもそんな感じだったよ~。じゃあね~」


 山部は一言残して、再び昇っていった。瑠美は思わず肩をすくめた。


「優理奈さんには敵わないわ」

「へっ?何か言った?」

「な~んでもない」


17分の4へ、つづく

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