お見送り
前回より非常に久しぶりの投稿になり申し訳ございません。
忙しくしばらく投稿出来ない間にPCが壊れてしまい、プロットも全て消えて復元出来ず、、意気消沈&新しいPC入手する気にもならず執筆活動から離れておりました汗
やっと新しい相棒に慣れてきたので頑張って続きを書いていきたいと思います。
良かったらこれからもよろしくお願いします!
次の日の朝、警戒していたが朝の礼拝にはイヴェールが訪れることはなく私はルリジオン様の斜め後ろの定位置でほっとした気持ちで祈りを捧げることが出来たのだった。
(お姫様は朝が弱いのかしら??)
自分も姫の端くれではあるが、国王の妹君ともなれば蝶よ花よと育てられ生活も優雅なものなのかもしれない。
プリュトン国はソレイユ大国ほどではないが、近隣ではソレイユに次ぐ富国である。
何にせよ目の前で想い人に纏わりつかれるストレスがないだけで私は穏やかな気持ちで祈りを捧げられ、清々しい朝となった。
「今日はルリジオン様のご予定はどのような?」
昨夜はルフレ様に誘われ、あわやシナリオ発動の危機があった。他の王子にもいつ誘われるかわからない。ここは早いところルリジオン様に城内見学に連れて行ってもらいその分岐点は終了させてしまいたい。
「今日からはしばらく、帝国内の農地の訪問予定なんだ。大々的に祈るのは収穫の後と蒔種の直前だけど、定期的に様子を見て養分となる私の力を周囲の空気や大地に溶け込ませてくるんだ。今は芽吹きから少し経っているから、育ちが良くなるように」
「そうだったのですね。いつまで行かれるのですか?」
「そうだな……開耕中の地だけでなく今は使われていない遊休農地にも寄るから2週間はかかるところだと思う。こればかりは早く切り上げるわけにはいかないんだ。せっかくエテルネルが来てくれたばかりなのに心苦しい」
「帝国の繁栄のために欠かせない事ですものね。そのような国の繁栄を左右する大事をされているルリジオン様は誇らしいですわ」
(でも……)
「でも……少し心細いです」
シナリオ発動の心配もある。ルリジオン様が城内にいらっしゃらないのならイヴェールの脅威はなさそうなのが救いではあるが。
「心細い?私を、頼りにしてくれている?」
「勿論ですわ」
ふ……とルリジオン様が微笑む空気が伝わってきて、髪をひと房取ってさらさらと流される。
「エテルネルは誰にでも好かれる社交的な性格だろう。私がいなくても楽しく過ごせるかと思っていた」
「お兄様もいますし皆様良くして下さいますわ。それでも、ルリジオン様のいない場所は私には寂しいものです」
ずっと会えない期間を過ごしていてそれが当たり前だったのに……やっとソレイユ国に来て会えるようになった途端、毎日傍にいたいと思ってしまうなんて贅沢なものだ。
「私の心はいつもエテルネルの傍にいる」
胸が甘く締め付けられるルリジオン様からの熱を帯びた視線。歳を重ねるごとにその場で動けなくなるような魔力のような魅力が増していることに彼は気づいているのだろうか。
「……はい」
「本当に、わかっている?」
「え……?」
「私の方が心配しているくらいだ」
「!?」
ルリジオン様の手が私の頬に軽く触れ、ビクリとした私に気づいているのかいないのか彼は少しだけ口の端を上げて行ってくる、と呟くのだった。
——数刻後
「行ってらっしゃいませ」
「ああ。滞りなく終えて帰ってくるまで待っていて」
ルリジオン様が杖を片手に軽く私の頭にぽん、と触れた。
場所はかつて私がルリジオン様を待って凍死しかけたバルコニー。いつもここから飛び立って出発しているらしい。
私は触れられた頭を軽く押さえ萌えと嬉しさ半分苦笑半分で頷いた。同い年で対等に接してきたはずなのに、気が付いたら身長差も広がり私はすっかり上から見下ろされ扱いも年下相手みたいね、と感じたのだが今は後ろに国王様がいるので彼もいつものように髪をひと房取って口づけするのは恥ずかしい気持ちがあるのだろう。
「今回はエテルネルも見送りなんて贅沢だな」
「そうですね」
照れくさそうな笑顔を国王様に見せるルリジオン様。本当にこの父子は良い関係を築いているように見えて微笑ましくてほっとする。きっと、国王様は前世で加藤さんだった頃もとてもいい人柄だったのだろうなと思い二人のやり取りを見て自然と笑みがこぼれるのだった。
そういえば、普段は国王様だけが見送りをしているのだろうか。例えば騎士団がどこかに遠征に行く際は盛大に見送られるし人数もかなりのものだ。壮行会的な式典まであるしかなり大々的に。
聖職者は華やかではないと言っていたのはこういうことなのだと思う。収穫祭や蒔種の際の神事には神官たちも参加して人の目に触れるとはいえ、普段もこんなに人の為になる仕事をしているのに、城内のほとんどの人が知らないまま出て行かれるのだから。
ふわりと杖に座り飛び立って行ったルリジオン様を見送りながら、私はそんな事をぼんやり考えていた。




