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ヒロインはHAPPY ENDを阻止したい  作者: ゆきんこ
第二章
24/35

魔王との対決

sideルリジオンになります。

なんだか、ムッツリスケベみたいになってしまいましたが彼は真面目な性格のはずです汗


ブックマークが増えていて嬉しいです!

更新の励みになります。

次回がラストになると思います。応援よろしくお願いします。

宜しかったら感想評価お待ちしてます。

 エテルネルの部屋を後にした私は魔王の気を探ってそちらに向かった。

 冷静にこれからの闘いについて考えようとしたが、それでも熱くなる顔を抑えられない。


(衝動的にやってしまった……)


 婚約者でもない相手に口付けするなど庶民ならともかく貴族や王族にとっては言語道断な行いだ。

 エテルネルの身分なら傷物と言われて縁談がなくなるのは必至だろう。


(エテルネルが黙っていればわからないとはいえ……とんでもない事をしてしまった)


 それでも、どうしても彼女が欲しかった。

 これが最後になるかもしれないと思うからこそ。


 ……約二年ぶりに会った彼女は想像以上に美しく成長していてとても魅力的だった。

 よくもこんなに美しい少女が6歳という年齢から変わらず自分を想い続けてくれているのかが不思議でならないくらい。

 普段はまとめられている髪は下ろされていて柔らかく甘い香りを放ち、寝ていたであろう無防備な姿が、薄着で私に抱きついた彼女の柔らかい身体が自分の衝動を助長させたに違いない。


 最後に見た彼女の顔は……突然の口付けに驚いた表情だった。


(泣くのを堪えて私の武運を祈ってくれていた。今は泣いているだろうか。いや、あんな事をして怒っているかもしれない……)


 あんな事……先程してしまった事を考えるとまた顔が熱くなった。



 魔王の気は感じた通り国境付近から感じる。近づいていくとまたおおお……と地鳴りのような唸り声が聞こえてきた。


(近い……)


 禍々しい気配を感じる場所に到着するとそこにはイムヌ殿がいた。


「イムヌ殿!何をされているのですか!」


 驚き駆け寄り、彼がこれからしようとしている事を阻止しようとする。


「……私の力が少しでも助けになるのなら……この命も惜しくありません。64年前に救えなかったオテル様にやっと誇れる自分になれるのです」

「やめてください!魔王は……漆黒の髪の魔法でも倒せません!この魔力は贄になるだけです!貴方まで犠牲になることはない!」

「なんと……!」


 イムヌ殿の目が見開かれる。それは当然だろう。漆黒の髪の魔力が贄となるのは彼には知らされていなかったのだから。


「では……やはりあれは決して失敗ではなく……ご自分の命が尽きると知っていて私を逃がしてくださったというのか……」

「そうです。魔王が喰らう魔力が増えるだけのことです。魔力を吸い尽くされたら、私たちは死ぬしかないのです」

「では尚の事私が!若い王子が犠牲になることはありませんぞ」

「恐らく貴方だけでは……魔王は満足しない。過去の民間の漆黒の髪が討伐に向かわなかったのもそういう事だと思います」

「王子は私に……また見殺しにせよと仰るのですか!何故国王様は王子を犠牲に……!」


 イムヌ殿の顔が悔しそうに歪む。


「長年封印されてきた魔王は人の形はしているもののもはや感情もあるともないともつかず、光を嫌い、欲望のまま何かを欲している様子だった……それが、漆黒の髪の魔力だったとは……」

「光を嫌い、欲望のまま……魔力を……」


 そう呟いて何かを導こうと考えると、ゴオオという大きな音とともに地面が割れて黒い塊が動き出すのが見えた。


「王子っ」

「下がって!」


 塊は迷わずこちらに向かってくる。考えている暇はない。


「……!」


 私の魔力開放とともに、辺りが昼間のように、いや、昼間以上に光り輝く。やはり光が苦手なようで魔王の動きが止まり、戸惑いのようなものを感じた。その眩しさで自分も目がくらみそうになりながら、魔王の気を探った。


『ホシイ……ホシイ……チカラガ……』

(……何故、力が欲しいんだ!?)


 万物からエネルギーを借りる時と同様に感謝こそしないが魔王に心を寄り添わせる。


『私ノコエガ 聞コエルノカ……』

(!?)


 まさか人の言葉で返事があると思わず驚いたが私も叫ぶように応えた。


「聞こえる!何故、世界を破壊しようとするんだ!何故この魔力を必要とするんだ!」

「ルリジオン王子!?何を言っているのです?!」


 イムヌ殿が驚いている。まさか魔王と会話しているとは思ってもいないのだろう。


『私ハセカイノタメ 魔力ガヒツヨウナノダ……私ガイノラナイト……ウ……ウア゛ア゛ア゛!!!』

「…!」


 そこで魔王が突如頭を抱えて叫びだすと、私の頭にあるヴィジョンが流れ込んで来た。


(これは……魔王、なのか!?)


 見えたのは、自分とそう変わらない年頃の漆黒の髪の少年。服装からして王族だろう。

 その魔力の使い方は一般的な万物から力を借りて放出する魔力開放だけでなく、私と同様に気持ちに寄り添い意思を汲み取る事が出来て、万物の許可を得てから魔力放出することで作物を豊穣に導くということが出来るようだった。

 形あるものないもの全てに感謝を捧げることが出来る彼の周囲には常に沢山の人がいて、とても尊敬され愛されているのがよくわかった。

 

 しばらくすると場面が変わる。どうやら少年の兄である第一王子が自分より人望がある弟に嫉妬して王座を奪われないようにと漆黒の髪の少年を国境外れまで連れて行き、頑丈で魔法では壊せない廊に監禁したようだった。

 少年は絶望しながら、それでも魔力を放出し国の繁栄を祈った。長い年月その廊には誰も訪れる者はない。あるのは孤独だけだった。

 ……正確には数回、美しい少女が訪れていた。少年と恋仲だったようで廊越しに逢瀬を重ねていたが兄に見つかり、嫉妬深い兄に力づくで少年の目の前で自分のものにさせられそうになったところ少女は自害した。生きて添い遂げることが叶わないなら。生きてこんな辱めを受けるくらいなら。命などいらない。そう聞こえるようだった。

 

 目の前で愛する少女を失った少年は血の涙を流さんばかりに傷つき、自分の無力さを呪った。

 自分と関わらなければ彼女は命を失うことはなかった。自分を愛したばかりに危険な目に合わせ、命までも奪う結果になった。

 激しく慟哭する漆黒の髪の少年の目から生気が消えて憎しみが灯るようになり、更に年月は過ぎていく。少年は年老いて魔力も弱まっていった。やがて息絶えようとしている老人の元に、若い、漆黒の髪の少年が訪れる。

 その少年が老人にとどめをさそうとして魔力を解放すると、老人がカッと目を見開きその魔力を全て吸い取り、眠りについた。眠りについてもなお魔力を放出して国の繁栄を助けた。

 漆黒の髪の少年が戻らないことを不審に思ったのか、年老いて今は国王を引退した兄が騎士団と直々に偵察にやって来ると、そこで息絶えている元国王の孫である王子と眠っている年老いた弟を発見し、驚愕の表情を浮かべ廊を開け騎士団に弟を倒すよう命じた。

 騎士団の攻撃では全く歯が立たず、眠りの途中で再び目覚めたかつての漆黒の髪の王子は兄には目もくれず、周囲の魔力を吸い尽くそうと王都に向かっていく。

 そこで初めての暗黒の時代が到来した――


(これが魔王の記憶…反吐が出そうだ……)


 魔王を作り出したのは自分たち王族だった。しかも、自分の弟の能力や人望に嫉妬した兄だったとは。

何という悲劇なのだろう。


(どうしたらこの魔王の心を解放出来る?)


「もう……貴方が祈らなくても!魔力を放出しなくても!この国は安泰です!」


そう言うしかない。


『何故ダ……私ガネムリニツイテイノラナイト……豊カニハナラナイ……ココニ来ルモノタチハミナ 私ノヨウナチカラハナカッタ……』


(それは……)


「私が貴方に変わってこの国を豊かにすると誓います!」

『オマエガ……?』

「私も…周囲のものに心を添わせることが出来ます。必ず貴方の意志を継いでみせます!」

『ソレハ私ノ役目ダ……!』

「魔力が無くなれば王都に出て人々を犠牲にする事が国のためなのですか!?」


 一瞬、魔王が怯む。


『ウルサイ……チカラヲ……ヨコセエエエエ!!!』


 動きが静かになっていた魔力がまた禍々しいものに変わり私に向かってくる。身構えたその時。


「私の力を持っていけ!」

「イムヌ殿!」

『オ前カラウバッテヤル……!』


 イムヌ殿が飛び出し、私ではなくイムヌ殿に向かって行こうとする魔王に私は叫んだ。


「これ以上犠牲を増やさないでください!貴方は、あんなに人々に愛されていたではないですか……!」

『ナン……ダト……』

「貴方の周囲には、尊敬の念を持った人々が沢山いたのが見えました。生まれながらに呪われた髪色として母上からも恐れられ愛されず、好奇の目で見られ不吉だと蔑まれてた私とは大違いだ!あんなに愛されて…その人たちの気持ちを無駄にしないでください!」

『オ前ガ……ノロワレテルト?』

「そうです!他人の気を感じようとしても拒絶や困惑しか見えない私より……貴方は人々に愛されてきた素晴らしい方だったのではないのですか!」


 ぐわっと心を掴まれる様な衝撃を感じる。私が読み取ったのと同様魔王も私の記憶を探っている様子だった。


『……オ前ニハ……愛スルモノガイルノカ……』

「……っ!います!大切な人が……!彼女のためにも、この世界を平和に導かなければならないのです」

『……愛スルモノ……アアアアア!』


 魔王は頭を抱えてガタガタと震え声を絞り出す。


「思い出してください!人々を幸せに導くための祈りの気持ちを、愛する人を大切に思う気持ちを!」

『ヴアアアアああああああ!!』


 魔王の激しい叫びとともに周囲の空気がビリビリと震える。


 そして少しずつ、本当に少しずつ叫びが小さく遠くなっていき魔王の禍々しい気から邪悪な気配が消滅していくにつれ、魔王の姿が薄くなる。

 驚き見守るしかない私の耳に、先程とは打って変わって人間らしい声が直接響いた。


『愛する者を、必ず守れ。私に出来なかったことを……やり遂げてくれ』


 そうはっきり伝えた後、魔王は消えた。


(貴方の分も、愛する人を守ります……必ず)


2019.2.18 加筆修正しました。

2019.12.18 加筆修正しました。

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