礼拝堂で
やっっっと!
恋愛要素っぽいシーンが書けました。もう少し続けるかストーリーを進めるか…迷うところです(笑)
夜に、礼拝堂にいる――
やっとのことで話すチャンスを与えてもらった私は色々な思いを抱えて礼拝堂に向かった。
ひとつは、やっと話が出来る喜び。
もうひとつは、また拒絶されて終わるのではないかという不安。
そして、話をするにあたってどんな話をすればいいのか。まだ考えがまとまらない焦り。
(いざ話すってなっても、魔王に関しては私は解決策なんか結局見つけられていないもの……)
今度こそ何をしに来たんだ、心を乱すなと言っただろう、等言われてしまっても仕方がない。
それでも国王様と過去世において繋がりがあったというだけで少しだけ前進していた気がしていた。
(ああぁ、なに話そう……)
頭をかきむしりたい気持ちを抑えて礼拝堂に到着すると、ルリジオン様は先に来ていた。
いつもの定位置、真ん中の最前列にいるが、祈りの最中ではなく普通に座って前を向いていらっしゃった。
「……お待たせして申し訳ございません」
「私もついさっき来たところだ」
後ろから声をかけるとルリジオン様は振り返らず答える。
「お隣、よろしいでしょうか」
「ああ」
私の定位置、斜め後ろではなく隣に座る。緊張で顔が見られず、私もただ前を向いたまま。
「……まさか花言葉を知っているとは思わなかった」
先に口を開いたのはルリジオン様で、ぶっきらぼうで、少し拗ねたような口調がまた微笑ましい。
「親切な庭師の方が教えてくださったのですわ」
「……!会ったのか!?」
「はい、独特の口調の優しい方でした。アネモネは中庭にはないのか聞いてみましたら、中庭にはないし贈る人はあまりいない花だと……」
「そうだ。城にはない花だ。オロールさんも詳しくないようだったし、メルキュール国では花言葉を考えないものだと思っていたのに……」
しくじった、とばかりに舌打ちしながら悔しそうにルリジオン様が言うので私もフォローする。
「はい、私も存じ上げませんでした。でも、花言葉というものがあるのは知っていましたので漠然と…なにか意味があるのかと考えたことはありましたわ」
「……私を、愚かだと思った?」
「?何故ですの?」
「君を突き放して傷つけておいて、未練がましく花を贈ったりした」
「そのような事は、全く思いませんでした。とても…嬉しかったです」
「……離れた方がお互いのためなのに…感情というものは、自分でもどうにも出来ない事があるとよくわかった」
そう言うと彼は膝の間で両手を組んで頭を下げ、自分を戒めているような様子に見える。
「それがお互いのためなのでしょうか?」
「そうだ」
「私は、ルリジオン様が好きです。お慕い申し上げております」
「!」
「今まではっきりと聞いたことがございませんでした。ルリジオン様のお気持ちをお聞かせくださいませ」
「……っ」
暗くてはっきりは見えないが、顔が真っ赤になっているのだろう。動揺して目が泳いでいるのがわかる。
(本当に物凄い照れ屋さんなのね)
「わっ私も……す……」
(す?)
期待の眼差しで見つめる私と目が合い、ルリジオン様がばっと目を逸らして言う。
「なにを言わせるんだ。その気持ちに応えていいはずがないだろう。漆黒の髪の、私が」
「何故だめなのですの?」
「何度も説明しただろう。私は、君と添い遂げることは出来ない」
「関係ありませんわ」
「あるだろう。私はそのうち魔王とともに消える。魔王は眠るだけだが私は二度と復活しない。そうなったら君はどうなる?このまま一緒にいれば必ず私との事が縁談に響くだろう」
「……ルフレ様はそのようなことはお気になさりませんわ」
我ながら残酷な事を言っていると心が痛んだ。お兄様であるルフレ様を引き合いに出すなんて。でもそうでもしないと本音を聞き出せないと思ったのだ。
「!やはり、兄上は……兄上になにか言われたのか!?」
16歳となったルフレ様は婚約者を決めてもいい年頃で、自国の貴族のお嬢様は勿論近隣諸国の姫君からも縁談が届いていると聞いている。
それを知っていて、先ほど私がルフレ様から赤いバラを贈られたと聞いて顔色を変えたルリジオン様は本気でルフレ様が私を婚約者にと考えているのかと思ったのだろう、切羽詰まった様子で私の方を見て問いかけてきた。
「いえ……赤いバラを戴いただけです。その意味も庭師の方から、聞きました」
「……っ。そう、か……」
「ルリジオン様は将来の私の縁談を気になさってくださっていますが、ルフレ様は全て承知の上だと思います。それでもやはりダメなのでしょうか」
「……駄目、ではない。むしろ、それ以上ない話だと…」
「っ」
最低だと自己嫌悪になりながらそこまで言っても頑ななルリジオン様が見ていられなくて、私がもう一度自分の気持ちを伝えようとしたところで、ようやく彼が本音を漏らす。
「……でも、駄目だ。私は見たくない……っ」
「!」
「死んでも、兄上に、他の誰かになんて渡したくない……」
切なくて甘い言葉に私の心がぎゅうっと締め付けられた。
「ルフレ様のお気持ちは有難いことですが私はルリジオン様以外の方のものにはなりません」
「私は数年後には死んでいるぞ」
「その時は尼寺に入りますわ」
「本気か」
「本気です。そもそも、ルリジオン様が犠牲にならない道をこれから探すのです」
そっと、彼の強く組み合わされた両手に自分の手を置く。
「お傍にいさせてくださいませ。命のある限り、そして命が尽きても」
囁くように、自分にも言い聞かせるように伝えると、ルリジオン様にその手を握って引き寄せられて抱きしめられた。
「ひゃっ……!」
「……君を、愛している」
(ああ、死にそう……)




