攻める時間です
エテルネルが積極性を見せるところです。
自室に戻ってからも私は落ち着かなかった。
国王様がまさか乙女ゲーム「光のプリンス」を作った側の人だったなんて。
それならもしかしたら私以外にも前世で光のプリンスと何か関係のある、そういう人がいてもおかしくないのではないか?
色々な考えが飛び交うが、今現実の魔王復活についての問題が解決に向かっているわけではないのが一番の問題なのだ。
前世と現世を関係づける法則の憶測より、生きている今が一番大切なのだから。
ルリジオン様が命を落とさずに済む方法。
大切な人を失わずに済む方法。
どうしたらそれを見つけられるのだろう……
私は思い切って行動に出ることにした。
行先はもちろん礼拝堂だ。礼拝の時間と食事の時間は決まっているので姿を見ようと思えば見ることは出来る。
ただ、ここ数日はずっと避けられていて声をかけることも出来ない雰囲気だし、気持ちを乱すようなことをするなとはっきり言われてしまっては私も強く出られないでいた。
(でも、そうも言ってられない。それにルリジオン様に犠牲になって欲しくないのは私だけでなく国王様も一緒だった)
「ルリジオン様!」
礼拝堂から出てきた彼を呼び止めるが、私を一瞥しただけで歩みを止めず歩いて行かれる。
「お待ちください!」
それでも止まってくれない彼の横を小走りでついて行き引き止め、大きな声で言った。
「先日臥せっていた際はアネモネの花束をありがとうございました!」
「……!」
一瞬驚いた顔をしてこちらを見たもののルリジオン様は否定する。
「何のことかわからないが」
「見舞いの花束を部屋の前に置いて下さいました」
「……私ではない。他をあたってくれ」
「ルリジオン様ですよね……?」
「……兄上のどちらかだろう。私は違う」
「お二人でしたら手渡し下さいますわ。それに…ルフレ様からは赤いバラを戴いております」
「……では他の者だろう」
赤いバラと聞いた時のルリジオン様の反応を見て私は確信した。
「アネモネの花言葉は、はかない恋。恋の苦しみ。まるで私の事のようですわ…私も、はかなく終わろうとしている恋に苦しんでおります」
「……!」
顔色を変えたルリジオン様を私は見逃さない。
「そしてアネモネには色ごとの花言葉がございますわ。戴いた赤のアネモネは…
「わかった!もういい」
堪えかねたルリジオン様が言葉を遮って私の口を押さえる。
「……君もしつこい奴だな!」
「そのようですわね。私も、それだけ失いたくないものがあるということです」
しれっと答えてみせてルリジオン様を見上げると、そっぽを向いているものの顔は真っ赤で、いつもの冷たい鉄仮面は剥がれてすっかり素の状態の、まだあどけない13歳の男の子の表情が見えていた。
(かっかっかわいい……って、そうじゃなくて!)
「やっぱり、ルリジオン様だったのですね……」
「……っ」
「ありがとうございます。その、嬉しかったです」
「……私を待ってバルコニーにいたのだろう。責任も感じる」
ぶっきらぼうに言われるけれど、前に感じた絶望感はない。
「少し、お話がしたいのですが……」
「これから魔術の修練だ。遊んでいる暇はない」
「……」
「夜に、礼拝堂にいる」
それだけ伝えると、ルリジオン様は足早にその場を去って行った。
(素直じゃない、かなりの照れ屋なのね)
久しぶりに見た彼の素の表情に、私は愛しさが止まらなかった。
赤のアネモネの花言葉は、――君を愛す。




