またいつか
ブクマありがとうございます!嬉しいです。
頑張って本日もう一度更新したいです……!
できなかったら、ごめんなさい汗
ルフレ様や騎士団、そして到着した私たち全員で国王様に謁見し、到着の報告と国境付近での様子をお伝えする。
国王様はルリジオン様から先に報告を受けている様子だったが簡単に状況を説明してくださった。
ここ数ヶ月、魔物が増えているということ。以前から国境付近では魔物が出やすく、自分たちも襲われかかったことがあるということ。それがあるので私たちが通る頃に警護を固めるつもりが、予想より馬車が早かったようで間に合わず、危険な目に合わせてしまった。申し訳ないことをした。
では何故、魔物が増えているのか?そうお兄様が聞くと、国王様は衝撃的な事を口にする。
「近く魔王が復活する。復活の前には魔物が沢山出てくるようになるんだ」
「それが、漆黒の髪が活躍するという世界の危機というものですか」
「……そうだ」
(……魔王って言った?)
魔王?……ファンタジー設定キター!って、いやいやそんな設定知らない。光のプリンスにそんなものは出てこない。
ごくごく健全な乙女ゲームなだけで、断じて、魔王なんかと戦う冒険ファンタジーではなかった。
物凄く混乱している私をよそにお兄様は淡々と質問を繰り返す。そのやりとりでわかってきたこと。
数十年から数百年に1回、眠っていた魔王が復活する。それが伝えられてきた「危機」というもので、漆黒の髪の魔力によって毎回封じられてきていた。
魔王の復活が近いと徐々に魔物が出てくるようになり国を荒らしていく。
それに合わせるかのように、漆黒の髪が産まれて世界の破滅を食い止める。
魔物は騎士団の力でも倒せるが、魔王にとどめをさすことが出来るのは漆黒の髪の魔力だけ。
(衝撃的な1日だったわ)
部屋で落ち着いた私は今日の出来事を振り返ってため息をついた。魔王の復活の話のあと、国王様は私だけを広間に残し、こう言ったのだ。
「……ルリジオンも最近になって知った部分があって今混乱しているんだ。あの子の性格からして君に変な態度をとるかもしれない」
(もう取られてます……なんて言えない……)
「どうか許してやって欲しい。支えを必要としていたら、支えてやってくれないか。そして独りでいることを選んでいるようだったら、今は静かに……見守ってやって欲しい」
「……承知いたしました」
彼は彼で何かを必死に消化しようとしているところなのかもしれない。
(でも……手紙に返事くらい書いてくれたっていいじゃない……)
とにかく、一度話をしてみないことにははっきりと避けられているとも言えない。私は疲れもあってすぐに眠りに落ちた。
次の朝、早速ルリジオン様の礼拝の時間に合わせて自分も礼拝に行く。
真ん中の、最前列。見慣れた場所に彼の後ろ姿があって私は胸がきゅっとした。
静かに彼の斜め後ろに行って祈りを捧げる。ここも私の定位置だった。私が腰を下ろしたとき、彼の背中がピクリと動いたような、気がした。
私が祈りを終えたとき、彼は足早に礼拝堂を後にするところだった。
(やっぱり避けられてる)
今までは、私が祈りを終えるまで席か入口で待っていてくださっていた。それが、まるで逃げるかのように足早に出て行く後ろ姿を見て胸が痛んだ。
「ルリジオン様……っ!あの……!」
追いかけてなんとか呼び止めたものの私の鼓動は冷たく震える。会っていなかったこの一年で随分背が伸びたようでそれがまた別人のように見えた。
「……なんだ」
振り返ったルリジオン様の目はとても冷たいものだった。
「父上から聞いているだろう。魔王が近く復活する。遊んでる暇はない」
「……申し訳ありません……」
「わかったらもう私に構うな」
「あの……っ!何か……非礼があったのならお詫び致しますわ!ですから、その……理由をお聞かせ頂けないでしょうか?」
震える手を両手で握り抑えながらなんとか話を繋ぐ私の必死な様子を見てルリジオン様は一瞬困惑の表情を浮かべたあと、顔を背けて言う。
「そのようなことは……ない。ただ、もう遊びの時間は終わりだ」
「私のことは、ご迷惑だと……」
「……っ……そうだ」
「……お呼び止めして、申し訳ございませんでした」
頭を下げて詫びる。涙を懸命に堪えているので震えているだろう。
「……」
一瞬彼が何かを言おうとした空気が伝わったが、すぐに背を向けて立ち去っていった。
部屋に戻り、私の13歳の誕生日の時に送って下さった手紙を読み返す。
この時は異変はなかった。以前と変わらず、控えめながらも私に優しい言葉をかけてくださるルリジオン様。
――またいつか、エテルネルの誕生日に一面の花畑を見に行こう
こうして手紙で祝うのでなく一緒に祝える日を、楽しみにしている――
(――どうして……この頃と、何故気持ちは変わってしまったの?)
その文章を読み返すと涙がこみ上げてきて、私は声を殺して泣いた。
 




