IF『守護者ルート』その22前編(あらゆるネタバレあり)
「学園世界が終わったあとの話」
・お題は「ホワイトデー、だべり中心」
・登場キャラクターは「カナミ、ティーダ、ローウェン、アイド、ファフナー、セルドラ」
※注意。ティーダの一人称が「ワタシ」になっています。大人数の会話で楽をしたいので、コミカライズ版の工夫を先生に感謝しつつ逆輸入です。
それはバレンタインが連合国に持ち込まれた数週間後。
いつものように10層の黒い液体ハウスで、『理を盗むもの』たちがくつろいでいるときのことだった。
リビングのテーブルでお茶を啜っていた『闇の理を盗むもの』ティーダが(スライム系の混じりなので水分は摂れる)、湯飲みを置きながら周囲に問いかける。
「なあ……、ホワイトデーはどうするんだ? ワタシとしては、色々とお返ししたいと考えているんだが」
周囲にいたのはカナミ、ローウェン、アイド、ファフナー、セルドラの五人。
丁度女性陣が席を外していて、綺麗に男性陣が揃っていたからこその問いかけだった。
まず、行事に詳しい向こうの住人カナミが答えていく。
「ホワイトデーかあ……。一般的には、バレンタインプレゼントを貰った男性が、お礼の品を贈り返すイベントだね」
軽い説明がなされる。
ただ、その説明を受けて、ローウェンは顔を顰めて、セルドラは笑う。
「お礼? バレンタインという名の襲撃事件は確かにあったが……、そのお礼?」
「くははっ。まあ、あれはチョコを食わせて貰ったというより、襲撃を食らったと表現したほうがいいな。なら、お礼を……いや、お礼参りをするのが良さそうか?」
「ああ、それなら私も理解できる。私の自慢の剣でお礼をするのは、やぶさかじゃない」
「というかローウェンが珍しく怒ってんな。無感情殺人マシーン時代じゃあ見たことない顔してるぜ?」
「そりゃあ、こんな顔にもなる! 惚れ薬を飲まされた日から、リーパーと私は色々と気まずくなってるんだ! ああっ、本当にあの面々は! ティアラ様を筆頭に、リーパーの教育に悪いのしかいない!!」
「ただ死神っ娘のほうは、やっとおまえが『気まずい』ってのを意識してくれて、喜んでそうだがな。一応、進展は進展だ」
「はあ? セルドラ、何を言ってるんだ? 私と関係が気まずくなって、リーパーが喜ぶわけないだろう? きっと私と同じように、いまも苦しんでいるはずだ」
「……ああっ! そうだな! よっし、ホワイトデーを通して、苦しんでるリーパーを救出してやろうぜ、ローウェン! 保護者として、友達付き合いの見直しをさせよう!」
その掛け声に、ローウェンは「ああ、見直しだ! なんだか今日は私に優しいな、セルドラ!」と答えて、「だろう!?」とセルドラは面白がった。
ちなみにリーパーの歪みだした乙女心を察していないのはローウェンとアイドの二人で、ティーダとセルドラの二人は面白がっている状態だ。
その面白がり仲間ティーダが、同類に続いて話す。
「そこの二人はやる気みたいだな。アイドとファフナーはどうなんだ? あの日、変なチョコを食べさせられた恨みがあるだろう?」
次の問いかけ先となった二人は、少し悩む。
先の二人と違って、そこまで能動的ではなく、場の空気を読んでの返答をしていく。
「そうですね。自分も酷いものを食べさせられました。ただ、正直自分が食べさせられたのはマシなほうで、例えばファフナー様のほうは――」
「俺は『反転』チョコ食わされたからなああああ!! おまえらにジメジメしたクソ根暗な姿を公開させられた恨みぃ! 絶対にお返ししてやるぜぇえ!!」
「チョコを食べたあとのファフナー様は、本当にいまとは正反対でしたからね。とても丁寧な口調で、ちょっと自分っぽかったです」
「ああっ、ジメジメのジメだった!! ……あっ、いや、別におまえのことを根暗って言ってるんじゃないぞ? あのときの俺が、本当にダメダメなやつだったってだけで」
「分かってます。ファフナー様の心はいつも優しさで満ちていると、『学園世界』のときによく理解できましたから」
「て、照れること言うなよ。こっちの調子が狂う……。『理を盗むもの』の中で一番優しいのは、いつだっておまえだ」
付き合いが長くなり、意外に仲が良くなったアイドとファフナーは、互いに「いやいや」「いやいやいや」と譲り合っては褒め合って、どこまでも和んでいく。
ただ、その仲が良くなった原因を少し知っているティーダは、ぼそりと「いや、『反転』というよりも、あれは――」と呟く。
同郷の貴族ゆえに、ティーダはファフナーの幼少期を知っている。
ただ、『理を盗むもの』に過去の話を持ち出しすぎるのは精神によくないと、先輩貴族兼主治医としてツッコミは控えた(薬を飲んで以来、ファフナーの精神があっちこっち行ったり来たりしているので)。
そして、最後に残ったカナミが、信頼する友人たちの遊びに乗りかかって、セルドラの口を開けさせる。
「僕もホワイトデー賛成派かな? ただ、僕は普通に美味しいクッキーを作るつもりだけど」
「えぇ? おいおい、カナミ。おまえは惚れ薬を何度も飲まされただろ? おまえが一番何しても許される立場な以上、もっと積極的な攻撃を頼みたいところなんだが」
「何度も飲まされたって言っても。その相手は、いつものみんなだったし」
「そのいつものみんなの前でキザ男に変えられて、無理矢理口説かされたんだ。恥掻かされた分、ちゃんと怒ったほうがいいと思うぜ?」
「確かに、あれは醜態だったけど……。正直言って、女性になって『ママ』とか『学園のアイドル』とか『魔法少女』とかやってたのと比べたら、マシ過ぎて……。なかなか怒りが湧いてこないというか、なんというか……」
「えぇぇ……。魂弄られすぎて、色々麻痺してんなあ。くははっ」
納得させられた上に笑わせて貰ったセルドラは、カナミを煽るのを諦めた。
その後、締め括るようにティーダが周囲を見回していく。
「とにかく! それぞれのスタンスは違えど、全員ホワイトデーに賛成ってことでいいな? で、ワタシからの本題はこれだ。――ここに、例の惚れ薬がある」
リビングテーブルの上に、どさりと置かれていく未開封のチョコ商品の数々。
例のお店の非売品を、ラグネとパリンクロン経由で手に入れたものだった。
「上手く混ぜて、チョコクッキーにでもしたら面白いと思わないか? 完成品を向こうの女性陣の誰かに食べさせるんだ」
「へぇーーー! くはっ、くはははっ! 因果応報な復讐なら、向こうも文句言いづらいだろうよ! おい、ローウェン。剣は納めろ、それはもう無粋で、面白くない」
「むっ。確かに、仕返しするならば因果応報が望ましいか」
無駄に殺気立っていたローウェンが落ち着いて、本題中の本題に入っていく。
「――で、誰が誰に呑ませる?」
惚れ薬。
当然だが、対象となるのは一人で、効果を発揮するのも一人。
呑ませた人物は当然も当然で、実行犯であり主犯と見られるだろう。
組み合わせは大所帯になった現在だと様々だ。
アルティ、リーパー、ティティー、ノスフィー、ティアラ、ヒタキ。
カナミ、ティーダ、ローウェン、アイド、ファフナー、セルドラ。
結果、しんと静まりかえるリビング。
停滞を嫌って、ティーダは嘯いていく。
「……もし気になる相手でもいれば、いま、全力で応援してやれるが?」
その全く中身の籠もっていない大嘘に、まずローウェンが呆れながら首を振る。
「これ以上、誰かと気まずくなるのは嫌だよ。私は辞退する」
話し合いの口火が切られて、真剣な表情のセルドラが話を進めていく。
「飲ませる相手から、アルティとノスフィーは除外しとくか? いや、負けたときのあいつらの拷問が怖いとかじゃないぞ?」
それには付き合いの長いアイドが同調して頷いた。
「でしょうね。セルドラ様にとって拷問は、つまらないかご褒美の二択ですから。本当に羨ましい病気をしていますよ」
「流石の俺でも、他人の恋路を横っ面から叩くことはしねえってことだ。ただ、かと言って、ヒタキとティアラのあたりも……」
「あのお二方に惚れられるというのは罰ゲームどころか、自殺ゲームのように感じますね」
「あいつら、頭一つ飛び抜けて強いくせに容赦ないからな。軽いノリで、この世から存在を消されちまいそうだ」
途中までは、暇な男子が馬鹿話を広げていくノリだった。
だが、計画に現実味が帯びていくにつれて、どんどん男性陣は冷や汗を流して、日和りだしていく。
結果、選ばれたのは、
「飲ませるなら……、ティティーか?」
ティーダが口にしたのは、最高の安牌。
それにセルドラが同意しつつ、二人で話し込んでいく。
「そうだな。我が王なら色々終わった後に、楽しかったーと笑って許してくれる姿が想像つく。……ただ逆に、誰か一人にゾッコンな姿は余り想像つかないが」
「ワタシの想像だと……、あのままのノリと明るさで、真っ当なアタックをかけてくる感じだろうか?」
「なんか、普通に好き好き言ってくれそうだな……。……よしっ、ということなら、俺が呑ませよう。この生け贄めいた実行犯役、しっかりと受け持ってやるぜ」
そのまま、セルドラが手を挙げた。
ただ、周囲の反応は芳しくない。
まずファフナーが「え? あのセルドラさんが、あのロードに?」と素で困惑して、カナミが難色を示していく。
「ん、んー……? セルドラかあ。セルドラはなあ、なんかなあ……」
「お、おいっ。俺にやらせてくれよ。そういう趣旨のイベントで、ここまでそういう流れだっただろ?」
すんなりと話が進むと信じていたセルドラは焦る。
その焦りも含めて、ここまで色恋沙汰に興味がなく消極的だったアイドが、情報収集は終わったと言わんばかりに会話に入っていく。
「いえ、自分もカナミ様と同じく、邪な気を感じました。今回のイベント会議で、やけに積極的だったのも何か怪しいです。もし姉様に飲ませるなら、セルドラ様以外で」
「おい、アイドォ! 孤児院からの親友のアイドォ! いまさら俺が、我が王を変な目で見てるわけないだろぉお!?」
「孤児院からの親友だからこそです。千年前はともかく、最近のセルドラ様を見ていると、正直――」
親友ゆえに言い淀んだ。
だが、すぐにティーダ、ファフナー、カナミ、ローウェンから代わりに「正直、最近おかしいな」「いまのセルドラさんは、ちょっと変質者っぽいかも?」「倒錯的な趣味してたよね」「異常なサディストで、心底気持ちが悪いマゾヒストだ」と、散々な評価を貰っていってしまう。
流石のセルドラもそれにはショックを受けて、「マ、マジかよ……。ずっと格好良かっただろ、俺ぇ……」とダウンせざるを得なくなる。
積極的だったセルドラが静かになったことで、また話が少し停滞する。
その代わりを担うようにカナミが、イベントの進行をしていく。
「じゃあ、代わりにアイドがティティーに飲ませてみる?」
「自分ですか? 自分が姉様に惚れ薬を?」
「いや、それはどうだろうか。ワタシはどうかと思うよ」
ただ、すぐにストップがかかる。カナミのイベント進行は温いと言うように、ティーダが真面目な振りをしつつ混ぜっ返していく。
「愛には、親愛・友愛・家族愛と様々な形がある。カナミが飲まされたときは粘着質なキザ男だった。アイドは勘違い紳士野郎で、ローウェンのときは――」
「ローウェン様のときの愛情表現は、とても奥手で面倒……というより、非常に幼かったですね」
「お、おおお思い出させないでくれ……! 私がリーパーに、あんな、あんなあんなあんなぁああ……!!」
変なパスが回されていき、なぜかローウェンに着弾した。
自らの黒歴史を恥ずかしがる姿は、カナミとアイドにとって微笑ましいものだったので、ついでのように弄られていく。
「なぜか正統派ツンデレキャラに変化してたよね、ローウェン」
「ツンデレというよりも、あれは好きな子に悪戯する系のアレでしょうか。ふふふ。微笑ましかったですよ、ローウェン様」
「リーパーの望んだ大人な雰囲気とは全く違ったみたいだけどね」
「しかし、ずっと甘々だったローウェン様から意地悪されるという経験は、リーパー様も満更でもなさそうでしたので、自分はとても良かったと思いますよ」
「だね」
モラル温々(ぬるぬる)コンビは、ふふふと微笑ましく笑い続ける。この二人に主導権を任せてはいけないと再確認したティーダは、脱線を修正していく。
「といったパターンの流れを考えると、ロード・ティティーも小学生化の可能性が高い。その場合、いまの「姉が弟を愛している」という家族愛の形から全く変わらないと、ワタシは推察している」
その分析には、人間観察に長けたカナミは納得したようで、頷きながら話す。
「確かに。いまの時点で、かなり弟を溺愛してるからねー」
「カナミ様、そ、そうですかあ? そこまで溺愛されているとは思いませんが」
「こういうのは外から見ないと分からないものだからね。ってことで、アイドだとティティーの反応が変わらないって話には、僕も同意だよ」
アイドは不満げだったが、敬愛している相手なので「カナミ様が仰るのならば……」と退くしかなくなる。
そして、ここまでの一連の流れをティーダが纏める。
「女性陣はホワイトデーを警戒している。その警戒網を命懸けで掻い潜って、なんとか惚れ薬を飲ませたところで、何も変わらないという結末は……、つまらない。非常につまらない。ワタシから言いたかったのは、そういうことだな」
「なら、消去法でリーパーにでもする? ローウェン以外でリーパーに呑ませるのは人としてアレだけど」
とモラルを気にするカナミに反応して、モラルを捨てているセルドラがショックから復活していく。
「って話みたいだが! ローウェン、やるか? 今度は俺たちも協力するから、前みたいに変な空気にはならないぜ? いまの気まずい関係を修復できるチャンスだ!」
「断る。というより、リーパーには絶対飲ませないよ。対象外だ。この私が許さない」
「チッ……。やっぱ、致命的な話には騙されないか。前から思っていたんだが、おまえの例のスキル、おまえにもったいないくらい優秀過ぎんだろ」
「……まあ、これだけは他のみんなにも負けない自慢のスキルだよ」
と珍しく勝ち誇る千年前のライバルに、セルドラは「もう『感応』が本体みたいなもんだな、おまえ」と減らず口を叩いて、ローウェンは「そう思うなら真似してみればいい。できるものならね」と挑発していた。
その様子を、ずっとファフナーは眺めている。
尊敬する『理を盗むもの』たちと一緒にいられるだけで満足な彼だが、振りでも一つくらい意見を出す必要があった。
「……これ、あのラグネ・カイクヲラもありなのか? それなら、俺はラグネのお嬢ちゃんに惚れ薬を飲ませたいところだ」
新たな候補があがった。
その名を聞いて、ローウェン、カナミ、セルドラの三人が「それだ」と続いていく。
「ラグネ君か。彼女が相手なら、私も手を挙げてみようかな」
「あっ、僕も。ラグネの『ママ』から脱却できるなら、もう何でもいいし」
「ま、待て! 俺もだ! 俺があいつに飲ませたい!」
ただ、その最後のセルドラに対して、また周囲の反応は厳しい。
ファフナーを初めとして次々と「んー、でもセルドラさんが惚れ薬を盛る姿は、余り見たくないような?」「だから、さっきから俺の何が駄目なんだっての!」「こういう話題だと、ときどき変態チックなところが垣間見えるからなあ?」「カナミ、俺は変態じゃねえだろ! このくっそ硬派で大人なイケメンフェイス見ろよ!」「治せる傷を治さず、いつも鏡の前で悦に入ってる変態フェイスだ」「ローウェン・アレイス! 一回表に出ろ!!」と散々だった。
とはいえ、その散々具合をセルドラも楽しんでいる。
そして、わやわやと盛り上がる面子を一歩退いて見守っているティーダとアイド。
「しかし、異様にモテるな。あのラグネ・カイクヲラ」
「分からないでもありません。ラグネ様とは色々揉めはしましたが、一対一で話していると、とても楽しい方ですから。自分も、彼女とは趣味が合いそう……。なので、恥ずかしながら自分も飲ませてみたいですね」
「…………」
合いそう。
その言葉にティーダは眉を顰める。
あれはそんなにいいものではない。どんな男が相手でも強引に合わせてくる――もっと別のやばい何かだ。と、友人として注意していく。
「いや、おまえら、絶対騙されてるぞ。あの小娘は間違いなく、性悪だ。あのティアラに近しい邪悪だ。いま想い描いている人物像を、最後の最後には絶対裏切ってくるはずだ」
ティアラに近しい。いきなり最高レベルの悪口が飛びだして、『ママ』の抜け切っていないカナミが反応する。
「そ、そこまで言わなくても……」
「思い出せ。俺たち『理を盗むもの』を出し抜いて、『異世界』までカナミを誘拐した女だぞ? 普通に可愛い女の子なわけあるか」
ここにいる誰よりも強くて危険だと主張した。
ただ、それを聞いた男たちは「確かに、『異世界』は大変でした。けれど、あれもいまとなっては、いい思い出ですね」「ああ。放課後、みんなで遊ぶの楽しかったなあ……」「楽しかったぜ。ローウェンだけは仲間はずれだったがな!」「……セ、セルドラたちと違って、私はカナミを変な目で見ていなかっただけだ」と思い出話に花を咲かせて、せっかくの忠告は全く届かない。
仕方なく、ティーダは説得の路線を少し変える。
「そもそも、ラグネ・カイクヲラはバレンタインデーだと無関係だろう? 女性陣で、過去の主犯ってだけで巻き込むのはダメだ。あとで色々と尾を引く」
バレンタインデーの襲撃事件の際、反省労働中だったラグネはチョコレートのお店にかかりきりで、実行犯の中に入っていない。
それを思い出した面々は頷いて、話を一歩戻す。
「では、やっぱり飲ませられるのはティティー姉様だけですか?」
「だが、飲ませるのがアイドじゃ面白くないぜ。俺が駄目なら、せめてカナミだ」
「カナミか。カナミとティティーがいい感じの空気になるのは……、あっちの女たちへの当てつけになって、ワタシも面白そうだと思う」
「んー。実行役は僕かー。んーーー」
たくさんの脱線とぐだぐだを経て、ようやくホワイトデーの指針が固まっていく。
そして、その非常にささやかで穏やかな反撃は、ティティーの弟も納得できるものだった。
「いいじゃないですか。ギリギリライン越えしていないと自分は思いますよ。三騎士たちが飲ませるよりかは、危険も少ないです」
身内が受け入れたことで、さらにカナミの逃げ場はなくなっていく。
周囲が「反対なーし」と答えたところで、もう計画は決定したも同然だった。
カナミは仕方なく、「仕方ないか……」と受け入れていく。
もちろん、ここで声を大にして反対しないのは、空気を読んだからではない。
単純に、先ほどの推察がカナミの頭にあったからだ。
――おそらく、ティティーが惚れ薬を飲んでも、大して変化はない。
いつもより距離が少し近づく程度。
いつもより少しうるさくて、少し「好き」が増える程度。
それを見た女性陣が少し荒れるのを、男性陣が観察して少し楽しむ程度。
その程度の復讐計画ならば、女性陣と比べれば本当にマシで、人の道も外れてもいない。
だから、カナミは「うん、いいよ」と、気軽に決めてしまい――
――その日の午後、カナミは男性陣とキッチンでクッキーを作るのを楽しんだ。
ティーダの用意した『魅了』のチョコが、しっかりと混ぜ込まれていく。
そして、カナミは迷惑をかけるティティーのためにも、とびきり美味しいお菓子を全力で製作していくのだが……。
その影で、重大なミスが発生する。
ティーダは全てのチョコの効能を把握できているつもりだった。
しかし、実のところ、性格の悪いティアラやヒタキが嘘のラベルを貼ったチョコが、多く混ざっていて……。
その中にはファフナーの主張した『反転』の薬も、気持ちが幼少期に若返るような薬もあり……。
地雷入りのような特製チョコクッキーが、ティティーへ。
贈られることになるのだった。
人数多すぎて困って、カット状態だったホワイトデー編ですね。
ティティーの反応になる後編ですが、金曜日に間に合わない気がします……(間に合わなかったら、IFのヒロインたちの現在編を投げるかも)。変な投稿になったらすみません。
ちなみにローウェンですが……、後衛に向いている性格・能力と知っていたカナミ相手には紳士的でしたが、セルドラ相手だと(剣も含めて全部受け止めてくれるバグ前衛キャラと信じているから)遠慮がなく、ちょっと口の悪いところが出るという設定です。
が……、もし解釈違いだったらすみません。
ローウェンのセルドラに対する感情は、苛つきと大好きが混じった――RPGの良強敵ボスを前にしたゲームプレイヤーに近い感じです。
ということで後編はさらにローウェンのキャラが崩壊するので、ちょっと卑怯な予防線でした。
それと、前回に引き続いて……。
コミックマーケット100さんにて、異世界迷宮の最深部を目指そうの合同誌第三弾が出るようです。
とても嬉しいことです。8/13、どうかそちらもよろしくお願いします。
それではー。




