IF『守護者ルート』EX1(どこかの話の上)(7-3章までのネタバレあり)
※7-3章までのネタバレがありますのでご注意ください。
EX話。いつの話か定かではないけれど、IFのどこかの話です。
それは何気ない一日の始まりだった。
いつものように迷宮の守護者たちは、友人宅に理由もなく集るかのような流れで二十層に集合していた。
いまやティーダ製液体ハウスは改造に改造を重ねて、この世界で最も住み心地のいい家となっているのが原因だろう。
ティーダの流動する液体のおかげで、中は適度な温度と湿度が保たれている。
当然だが、害虫といった類とは無縁で、明度だって調節自由。さらには、持ち込まれた最高級魔法家具のおかげで、水道やお風呂、キッチンまでも完備。
とはいえ、迷宮に通っている『魔法線』の魔力は微小で、それら最高級魔法家具のエネルギー全てを賄えてはいない(対外的に、守護者たちは国の敵となっているので、その彼らのお風呂の面倒を見るために魔力を通すことは出来ない)。
だが、そこは『理を盗むもの』の人外の魔力量が問題を解決している。
お風呂やキッチンを使いたいとき、それぞれが常人以上の魔力を流し込むことで毎回強引に起動しているのだ。
――という魔力の少ない『地の理を盗むもの』ローウェンだけは地味に住みにくい液体ハウスで、この日の事件の発端は始まる。
例の高級家具によるシャワーを浴び終えた『光の理を盗むもの』ノスフィーは、身体から湯気を立ち昇らせ、三つ編みを作りながら液体ハウスの居間まで入ってくる。
その部屋の中央にあるカナミ特性の魔石製炬燵には、『次元の理を盗むもの』カナミと『火の理を盗むもの』アルティと『風の理を盗むもの』ティティーが入っていた。
各々、持ち込んだ本を読んだり、地上のお菓子を食べたり、ただぼうっと怠けたりしている。
ノスフィーは炬燵の最後の一辺に足を入れつつ、まず右側の三つ編みを完成させる。
そして、残る左側も完成させようとしたところで――
「――そのノスフィーの髪留め、いいよね」
なにげなくカナミが、ノスフィーの手に持った黒い髪留めを褒めた。
その思いもしない言葉にノスフィーは珍しく動揺する。
「え……? そ、そうですか? 可愛いでしょうか?」
「あっ――、うん。すごく可愛いよ」
慌ててカナミは「可愛い」と付け足した。
その反応からノスフィーは、カナミが別の部分を見て「いい」と言ったことに気づく。
すぐ隣ではアルティがカナミを殺意を込めて睨み始め、ティティーは「ひぃっ」と声を漏らす。
「それで、渦波様は可愛い以外のどこを気に入ったので?」
冷静になったノスフィーは、軽い咳払いをしてから詳細を聞く。
「えっと……、デザインもだけど、書き込まれた『術式』に無駄がないよね。ちょっと借りてもいい?」
「ええ、どうぞ」
カナミは子供のように目を輝かせて、その髪留めを欲しがった。
ノスフィーは断る理由もなかったので、それを手渡す。
まじまじと髪留めを『注視』するカナミの顔は、生産者もしくは研究者に近い。
『注視』するだけでなく《ディスタンスミュート》で内部も探り、ぶつぶつと「へえ、こうなってるんだ。ふんふん。これ、魔力を通さない『術式』で、魔法防御力をあげてるのかな? それでいて、デザイン面も完璧だ。リボンってRPGっぽさが出てて、いいよね。なにより、布の材質が――」と分析に没頭していく。
そして、かなりの時間の独り言を繰り返したあと、カナミはノスフィーに髪留めを返す。
「はい、ありがとう。ノスフィー」
「あ――」
ノスフィーは手で受け取ろうとしたが、その上をカナミの手は飛び越える。
そして、とても器用に素早くノスフィーの左側の髪を三つ編みに仕上げて、その髪留めで結い上げた。
「うんっ、やっぱり可愛い。すっごく似合ってるよ、ノスフィー」
「……あ、ありがとうございます。渦波様」
止める隙はなかった。ただ、たとえ隙があったとしても、いま顔を真っ赤にしているノスフィーが口を挟めることはなかっただろう。
その様子を見ていたアルティの視線が少しだけ和らぐ。
もしカナミが本心からの「可愛い」「似合ってるよ」を言ってなければ、彼は火達磨になっていただろう。それがわかっているティティーは「ふいー」と汗を拭う。
そして、それをさらに少し離れたところで観察していた『闇の理を盗むもの』ティーダは、くつくつと笑う。
知的好奇心から始まった話題のあとに、すんなりと本心から歯の浮いた台詞を言えてしまうから、このカナミという男は本当に厄介でギルティだなあ――とティーダは思いつつ、居間の天井からどろりと落ちて着地して、会話に加わっていく。
「しかし、本当にいいリボンだ。最近、地上で色々と学んだからこそ、これのアクセサリーとしてのすごさがよくわかるよ」
「ティーダ、なんで天井に張り付いてたの……」
「家とかの管理を色々していくうちに、天井を歩くのに慣れて……癖になった」
「もし探索者さんが天井にいるティーダを見たら、心底びっくりするだろうね」
「それはいい登場の仕方だ。……しかし、今回は守護者の登場シーンと口上を考えるという話じゃない。そのアクセサリーの話だ」
ティーダはノスフィーに向かってびしっと指差し、口にする。
「いまから我々で、アクセサリーを作らないかい? それも守護者特性のやつを」
「……ティーダから提案するのは珍しいね。いつもなら誰かをそそのかすのがスタートなのに」
「今回は至極まともな提案の上、下準備は必要なく、百パーセント私の望みだからね。ここ最近、私が液体ハウスの――というか二十層の改築に勤しんでいたのは知っているだろう?」
「ああ、うん。地上からアイテムを色々と買いこんでくれて、とても住みやすくなったよ。ありがとう」
それには他の三人の女性陣も「うんうん、助かってる」と頷く。
しかし、カナミたちのお礼を聞くティーダは不満を露にして叫ぶ。
「その感想がつまらない!!」
そのよくわからない激怒にカナミたちは「まーたなんか変なこと言い出したよ」と呆れながらも、彼の言い分をちゃんと聞く。
「さりげなく私が増やした隠し部屋は気づいているだろう? なぜ使わない!?」
「あー、えーっと、あの怪しげな研究室とか工房のこと?」
「ああ、それのことだ! せっかく人体実験室を作ったんだから、誰か上手く使えよ! アイドの馬鹿は、普通に花畑を作って、家庭菜園とか始めてるしよお! おまえらには、がっかりだ! あー、がっかりだ! もっと裏切れよ! 私の予想を裏切るくらいに、千年後を全力で楽しめよ!!」
ティーダは善意と見せかけて色々と罠を仕掛けていたのだが、それに誰も引っかからないのが不満だったのだ。つまり、完全に八つ当たりだ。
しかし、これを放置しすぎると、よくわからない暗躍をするのがティーダ・ランズという男だ。将来の安全のためにも、ティーダの欲求を少しでも満たしておこうとカナミは話題に乗っていく。
「確かに、せっかく作ったものが使われないというのは、少し寂しいものがあるよね。それはわかるよ。……アクセサリー作りくらいなら楽しそうだし、僕は構わないよ」
「流石、カナミだ。話がわかる」
続いてティーダは周囲を見回す。
まず、当然のようにティティーは乗り気だった。
アルティとノスフィーも小物作りは嫌いでないため、消極的賛成の様子を見せる。
「よし、それじゃあ始めようか。今回は――」
そして、いつものように守護者たちの遊びは始まった。
それを今回言い出したのが『闇の理を盗むもの』ティーダであることに、カナミは迷宮メンバー内に大きな変化を感じていたが……それはまだ口に出さず、見守る。
まだ時間はある。
『いつまでも』ではないが、『まだ』時間は残っている。
だから、もう少しこのままでいたいと思った。
◆◆◆◆◆
「――とっ! いうわけでー、今回は迷宮守護者パワーアップイベントー! アイテム編ー、なのじゃー! いえーい、ぱちぱちぱちー!」
「いっえーい! ぱちぱちぱちー!」
そうティティーが盛大に宣言して、仲良しのリーパーが隣で跳ねながら拍手をする。
場所は二十層の隅に建った特別製の工房内。
守護者の力と権威と金によって、この時代で最高の設備が整った施設だ。ただ、それなりに広さはあっても、この大所帯では流石に手狭と、全員が感じていた。
しかし、手狭くらいが丁度いいと思う『地の理を盗むもの』ローウェンは、近くで木材や鉄材を持ち込む『木の理を盗むもの』アイドに聞く。
「……つまり、守護者たち専用の武器などを作るというわけかな?」
「いいえ、ローウェン様。いきなり、武具に手をつけるのは難しいということで、まず装飾品から手をつけるようです。それも、既存の物を改造するのが中心ですね」
「なるほど、それが妥当なところか。私としては剣を作りたかったが……」
ローウェンは荒事を避ける性質なので、今回は安全なイベントと『感応』で察知してかなり楽しげな様子だった。
そして、そのさらに隣にいる『血の理を盗むもの』ファフナーとカナミは、ローウェンのために説明を補足していく。
「いきなり魔剣の類は難しいからな……。俺も、それでいいと思うぜ」
「というか、魔法道具にこだわらなくても、普通に可愛らしい小物を作るだけでもいいと思うよ」
それを聞いたローウェンは、しばし思案してから、肩に巻いたものを作業台の上に置く。
「なるほど。本当に今日は軽めで楽しめそうだ。なら、私はカナミから貰ったマフラーあたりで挑戦してみようか。アルティにでも火属性の魔力と『術式』を入れてもらって、暖かさアップだ」
「ほう? ならば、私は君に地属性の魔力と『術式』を入れてもらおうか。……そうだな、この呪布が固くなったら面白い。硬さアップで頼む」
「……失敗するかもしれないが、構わないか? 正直、こういうのは得意じゃない」
「構わないさ。というか、それは私の台詞でもある。何が起こっても恨みっこなしでいこう」
「ああ、わかった。約束しよう」
軽く『火の理を盗むもの』アルティが請け負って、二人は動き出す。
この工房には、すでに『術式』を書き込む道具などが全て揃っている。
柔らかく加工しやすい魔石や魔力のこもった糸といった特殊な材料もアイドのおかげで豊富だ。
その中の魔石を一つ手に取ったティーダは、ファフナーを誘う。
「私は一から作ろうか。あと、せっかくだから……ファフナー、私と共同でやらないか?」
「俺とか? 珍しいな。俺を使って、何か悪巧みでも思いついたか?」
「切実な話……ファフナー・ヘルヴィルシャイン専用の精神安定アイテムを、そろそろ主治医として作りたいと思っている」
「ああ、そういうマジな話か。なら、おまえの負担を減らすためにも、全力を尽くすぜ」
という二人一組の流れができたので、カナミは自然と一番近くにいたノスフィーと協力することになる。
「僕は前に作った指輪でも弄ってみようかな?」
「では、わたくしは先ほどの髪留めを……。様子見で、片方だけお願いしますね。渦波様」
続いてアイドが近くのリーパーに声をかける。
「では、自分はリーパー様とやりましょうか」
「アイドお兄ちゃん、よろしくねー。アタシ、たぶん足引っ張るだろうけどー」
「いいえ、そんなことはありません。リーパー様には、自分にないセンスがあります」
「うん、がんばるよー!」
そして、最後に一人残ったのは――
「むうっ!? なんじゃなんじゃなんじゃ!? 童と一緒に遊んでくれる者がおらぬぞ!」
そのティティーの叫びに、周囲の誰もがふいっと目を背けた。
全員が自然と避けた結果だった。
なにせ、『風の理を盗むもの』は『自由』を謳い、『分解』を得意としている。およそ、物作りの最中に近くにいて欲しい人物ではない。
その思いをカナミ・ファフナー・アイドが隠すことなく、はっきりと告げる。
「だって、ティティーってこういうの向いてなさそうだし……」
「ぜってー途中で壊すだろ、おまえ……」
「姉様にできるのは、創造でなく破壊だけです」
その容赦のない評価に、ティティーは叫び返す。
「はっきり言うでないわあ! おぬしらっ、見ておれよぉおお! 絶対におぬしらよりすごい一品を作って見せるのじゃ!」
ティティーは近くの材料を手に取り、作業に移っていく。
その動きは誰よりも速い。
流石は『風の理を盗むもの』だ。だが、その特性のままだと、次の光景は悲惨なことになると、この場の全員が心配する。
「こんなもの、童ならば、ちょちょいっと! すぐにっ――!」
そのティティーを女性陣は放っておけないようで、心配しつつ近くで作業を見守る。しかし、そのアルティとノスフィーの評価も、男性陣と同じく厳しいもので――
「ふむ、速いな。しかし、出来は……。やっぱり、ティティーの風の魔力は、物に込めるのに向いていないな。私の可燃性の魔力よりも酷い」
「これは、魔力の性質の問題でしょうか。わたくしや渦波様の柔軟な魔力と比べると、天と地の差です。いれた途端に、皹が入ってません?」
「おーい、アルティやい、ノスフィーやい……。そうやって、じわじわと正論を言われるのもきついのじゃぞー……」
ぱきりと――ティティーの心と連動するように、手に持っていた魔石が一つ砕けた。
それが止めになり、ティティーは自分が物作りに向いていないことを受け入れる。
そして、唸りながら他の作業台にちょっかいを出し始める。
「むー、むー、むー……」
しかし、それはティティーに厳しい男性陣の心無い攻撃によって止められてしまう。
「ティ、ティティー……。少しだけ向こうで大人しくしてもらえると助かるかも……」
「しっしっ」
「絶対に触れないでくださいね、姉様」
「……ち、ちっくしょーーーーなのじゃあああ!! いいもんいいもんっ、童は別のことやっておるからあああ!!」
ティティーは叫び、そのまま翼を広げて、ばっさばっさと羽ばたきつつ、工房を出ていってしまった。
「あっ」
その背中にカナミは追いすがろうとしたが、《ディメンション》が地上まで向かう超高速のティティーを捉えて断念する。
反則なしに、あの速さに追いつける者は誰もいない。
「……渦波様、今回ばかりは向き不向きの話。仕方ありません。……製作が終わったあと、ここにいるみんなで装飾品をプレゼントして、埋め合わせをしましょう」
「そうだね……。完成させたあとのことは考えてなかったけど、それが一番よさそうだ」
カナミは生産に没頭しすぎて、ティティーを少し泣かせてしまったことを反省しつつ、作業台の上にある指輪を彼女用に改良していく。
そのノスフィーの提案には他のみんなも同意していった。ある意味では、誰よりもティティーの力を信じているファフナーとアイドは深く頷く。
「賛成だ。完成品の実験をするのに、あいつほど向いているやつはいないからな」
「もし問題作になっていても、あの姉様ならば破壊は容易でしょう。それに、他は駄目駄目ですが、スタイルだけはいいですから。スタイルだけは」
こうして、工房内で完成品の試着係が決まったところで、守護者たちは生産に集中していく。
各々は素人ながらも、それぞれの個性を生かした作品が、次々と出来上がっていく。
環境と素材は世界最高クラスというのもあって、そこまで酷い失敗品は中々出てこない。
あるとすれば、それはアルティの作ったペンダントだけだった。
本人は地上の『レッドタリスマン』を参考にしてみたと言っていたが、首に下げているだけで胸のあたりが火傷していた(ローウェンが)。しかも、妙にデザインが禍々しく、見ているだけで吐き気を催してくるのを踏まえると、完全に呪われたアイテムだった。しかも、妙に耐久度が高く、通常の方法では破壊できなかったので、ノスフィーとアイドの魔法で応急で封印した。あとで、ティティーに破壊してもらう予定だ。
その邪悪なる一品が出来た時点で、アルティ・ローウェンの作業台に生産停止の命令が全員から出された。
結果、時間が余ってしまったローウェンは、そこで以前から気になっていた鍛冶に手を出し始める。そして、なぜかローウェンが過去最高に才能を発揮し始めて、「まさか、私にこんな才能があったとは……」とかまた感動し始めていたので、阿吽の呼吸で全員による暗黙の妨害がなされる。
全守護者からバックアップを受けたリーパーが、冷や汗を流しながら鍛冶に取り込み「ほ、ほらっ、アタシのほうが上手い……! ローウェンに鍛冶は向いてなんじゃないかなあ……!?」とギリギリのところで打ち負かすことに成功した。
という、いつもの流れの傍らで、さらに魔法道具が生産されていく。
ティーダとファフナーの合作である精神に作用する腕輪。アイドとリーパーが仲良く作った香を焚くための容器。それぞれの『理を盗むもの』たちの特殊な魔力を込められた指輪――二十を超える多様なマジックアイテムができたところで、小休止が入る。
工房で最も大きな作業台に、ここまでの完成品をずらりと並べられる。
――その中で最も目を惹いたのは、ノスフィーの髪留めだった。
カナミの手で軽く『術式』を組み込んだだけだが、それだけでここにある全てを軽く超える一品となっていた。
それを見て唸るのは、ファフナー・アイド・カナミという研究者気質があって生産者としての才能がある三人。
「これ、布がいいんだろうな……。千年前の『使徒』が用意したものか?」
「……のはずです。では、繊維は世界樹ゆかりのもの? 自分でも、判断できません」
「いや、明らかに糸の一本一本に力があるよ。これ、『魔石線』の亜種じゃないかな?」
三人は目を輝かせ、大真面目に意見交換し合う。
偶然にも史上最高の一品の足がかりができて興奮していると、他の守護者たちにも、なんとなく伝わってくる。
「とにかく、容量が大きいな。もう少し手を加えれそうだぞ。さっきの指輪にはできなかった生きた血の注入ができる」
「いいですね。では、血の制御は自分が担当しましょう」
「書き込みとかの作業は僕に任せて。細かいのは得意だから」
それを遠くから見るノスフィーは不安が募りだし、残った左側の三つ編みを守りつつ口を挟む。
「アイド、ファフナー、渦波様……? それはわたくしのお気に入りですので、余り変なことは……」
それを聞いたカナミたちは、慌てて「大丈夫大丈夫!」と何度も頷く。
「も、もちろん! 絶対に見た目は変えないよ! ノスフィーにぴったりの可愛い髪留めだもんね! ねえ、ファフナー!!」
「おうとも! 我が親友カナミの言うとおりだ! それは絶対に約束する……。するから、もう少しだけ改良させてくれないか? 頼むぜ、元主」
「ノスフィー様、どうかもう少しだけ! ほんの少しだけ!!」
必死すぎて、ノスフィーの顔が引き攣っていく。
そして、この物作りに魅了された三人を止めることはできないと彼女は判断して、その広すぎる心で頷き返してしまう。
「はあ……。もう好きにすればいいです。わたくしはリーパーたちと、ティティーのために花冠を作ることになりましたので……終わりましたら、呼んでくださいませ」
優しさゆえに許可をしてしまう。
しかも、「好きにすれば」と加えて。
それを聞いた三人は目を輝かせて喜び、アイドは自分の自慢の庭へノスフィーを案内する。
「感謝します、ノスフィー様! ちなみに庭の花は、いくらでも摘んでくれて構いません! あそこには「聖女様とアルティちゃんなら喜んで命を捧げる!」という方々ばかりですので!」
「そ、それは……、余り聞きたくなかった話ですね……」
二十層周りの庭で育っている草木たちが、かなりミーハーな女性守護者ファンということがわかり、ノスフィーは眉をひそめた。
こうして、二チームに別れる。
物作り大好き三人守護者(と、それを楽しそうに見るティーダ)と、今回のイベントを人並みに楽しみ終わったノスフィー・アルティ・リーパー・ローウェンだ。
ノスフィーたちは庭に向かい、拗ねた友ティティーのために花冠の作成に取り掛かる。
途中、ローウェンが草木の『石食い蔦』に巻きつかれて「なんでだ!?」となったりしたが、比較的平穏に時間は進んでいき――
そして、完成する。
『迷宮守護者パワーアップイベント・アイテム編』の最高傑作が。
「――お、おぉおお……。これかなりすげえんじゃないか? 千年前でも見たことないぞ」
「ま、まさにっ、完璧アイテムゥッ!! 世界一の聖女のための髪飾りに相応しい美しさ!! 完全なる機能性だけでなく、どこか神々しさも兼ね揃えています! カナミ様、試しにつけてみませんか!?」
「え!? いや、そこはノスフィーでしょ!? 見せに行こう! 早く!」
小さく「ちっ」と舌打ちするアイドを置いて、カナミは髪留めを持って工房を出ていく。
その騒がしい声を庭で聞いていたノスフィーは、やれやれと肩をすくめながら花冠作成を終わらせる。
「どうやら、作業が終わったようですね……。完成品の試着会は地上でやりましょうか。ティティーを仲間外れにすると、もっと拗ねるでしょうから」
その隣には、大量の花冠を抱えたリーパーが満面の笑顔を作り、その黒髪をアルティが撫でていた。
「いっぱいできたぞー!!」
「ああ、少し作りすぎたな。しかし、これならティティーも機嫌を直すことだろう」
そして、その後方にて、妙に疲れた様子のローウェンが汗を拭っている。
「はぁっ、はぁっ……!! アイドさんの作った草木は、なんでこうも……! はぁっ、はぁっ……!!」
我らがアイドルたちに一人囲まれるのは許さないと蠢く草木たちとの戦闘で、ローウェンは妙な戦闘経験値を溜めていた。
そのローウェンを置いて、ノスフィーは宣言する。
「では、地上に出ましょうか」
ぱんぱんっと手を払い、完成した花冠を持って移動を開始する。
こうして、『迷宮守護者パワーアップイベント・アイテム編』は終わり、ぞろぞろと迷宮のボスたちは移動していく。ティティーを迎えに、地上へ。
草木さんたちはローウェンが大好きです。
ちなみにこのIF話は、とある読者さんのイラストをパクりました。
急遽IFの方針を変えてしまい、ネタに困っていたところ……ついやってしまいました。
訴えられたら私の負けです。




