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IF『守護者ルート』その7(中の下)(7-3章までのネタバレあり)

※7-3章までのネタバレがありますのでご注意ください。

 次の改造案は、迷宮の縮小化だった。


 今現在、地上の探索者たちは二十層前後までしか辿りつくことができていない。

 にもかかわらず、レヴァン教の伝承では百層まであるという謳い文句だ。


 この冗長ぶりは探索者のやる気を削ぐと判断され、アイドとカナミは迷宮をコンパクトに改造していく。


 二人は揃って、ずっと「百層とか考えもなく決めたやつ、ちょっと考えなさ過ぎない?」と思っていたのだ。いまや完全に開き直ったカナミは、千年前の自分を自分で否定していく。そして、地上で「実は、この迷宮は三十層で終わりでした! なんと、あと少し!!」という噂を流していく(主にパリンクロンが流した)。


 この噂によって連合国以外の国々の反応も変わり始める。


 なにせ、レヴァン教の裏の歴史では、迷宮の『最深部』には無限の魔力エネルギーの源があると記されているのだ。そこが手の届く場所にあるかもしれないと分かると、国家バランスを考えて放置はできなくなる(主にパリンクロンが暗躍した)。


 続いてアイドとカナミは、迷宮をコンパクトに三十層で纏めたからには、一層一層の満足度をあげようとする。

 その結果、報告者で監査役であるエルミラードやハインによる「迷宮にドラマ性が足りない」という助言によって、各種イベントを取り入れることが決まった(主にパリンクロンが誘導した)。


 最初に行ったイベントは、迷宮の入り口による差別化。

 せっかく入り口が複数あるのだから、難易度も工事して設定しようという話だ。

 まずは『イージールート』『ノーマルルート』『ハードルート』の三種用意した。


 ちなみに、その中で『イージールート』を選んだ探索者は、十層に辿りついたとき抽選で『お助けキャラ』が出てくるというイベントがある。


 当初は――炎禁止のアルティがフリフリの衣装で、キャッチーな語尾をつけて(「にゃん」とか)、記憶喪失のヒロインのごとく、ことあるごとに迷宮の助言をしてくれる――というイベントだったが、恥ずかしがったアルティが予定通りの行動を取ってくれず、『お助けキャラ』としては機能しなかった。


 続いて、アルティを使ったイベントは男性向けすぎたと反省し、女性も少し意識して――剣術禁止のローウェンが執事服で、キャッチーな主君に忠誠を誓うキャラとなって、記憶喪失のヒーローのごとく、迷宮で手助けしてくれる――という案も実施されたが、剣術なしのローウェンではろくな手助けができないとわかり、こちらもまともに機能しなかった。


 ちなみに、『ノーマルルート』の迷宮の二十層では、ティーダという狂言回し役が出てきて、意味深な情報をくれるというイベントもある。その情報を噛み砕き、理解すれば、三十層で――つまり、ラストステージの虹水晶の花畑にて待つ『魔王ティティー』の攻略法がわかる仕組みだ。


 『魔王ティティー』を倒すには十五層に隠された宝箱の中にある『聖剣』が必要である。

 その聖剣でティティーに一撃入れたら、迷宮はクリア。レアアイテムをプレゼントというのが『ノーマルルート』基本シナリオだ。『ハードルート』の裏シナリオだと、四十層にて待つ裏ボスを倒すルートもある。ざっくり言うと、裏ダンジョンである。


 完全にカナミの現代ゲーム知識が暴走していた。

 さらにアイドが、その異世界では新鮮な案に胸を躍らせ過ぎた。

 (あと、裏でパリンクロンが煽り過ぎた)。


 ――そして、このふざけた難易度設定とイベント群は驚くことに、失敗しなかった(・・・・・・・)(パリンクロンが一番驚いていた)。


 手段は強引で奇天烈なものだったが、迷宮探索が従来の単調なものでなくなり、冒険心を忘れていた人々の心を刺激したのは間違いなかった。

 それと『お助けキャラ』のアルティとローウェンや、『魔王』ティティーが探索者たちの間でコアな人気を得たのもある。迷宮内の店舗で売られるキャラグッズは、多感な年頃の学院生に大人気だった(これは主にアイドが量産した)。


 ――一ヵ月後、パリンクロンが定例の報告書を持ってくる。


 とても順調に報告書の来場者数は伸びていた。

 比例して、お店の売り上げも上がっている。

 その仕入れの伝手から、地上の商会とも繋がりができた。

 おかげで、協力してくれる貴族家スポンサーなるものも増えた。

 迷宮のマーケティングはスポンサーのおかげで、常に万全だろう。

 魔法の洗脳による風潮と流行の捏造も必要ない。勝手に迷宮用の市場が生まれて、その肥大化が止まらない状態だ。

 その潤沢な資金源に任せて、迷宮内に設置した宝箱も増えていく。『想起収束』したものだけでなく、地上で有用な魔法道具を仕入れて宝箱に入れられるのだ。

 当然だが、宝箱目当ての探索者の数は増えて――


 カナミの発案には珍しく、正の循環が生まれていた。そして、


「――やった! アイド! 前年比の二倍! 完璧に探索者問題は解決だ!!」

「やりましたね、カナミ様!!」


 『迷宮改造計画』の責任者である二人は手を取り合い、成功を祝う。

 あらゆるこだわりを捨てたことで、彼らは彼らの考えた最強の迷宮を完成させたのだ。

 ただ、その感動を味わう横で、監査役のパリンクロンは不満足そうだった。


「えぇ、おっかしいだろ、これ……。くっそ、俺の予想が外れるなんて……。絶対、大爆笑できる失敗をするって思ったんだが……」

「はははっ! ばーか! 見たかっ、いつもおまえの思い通りにはいかないんだよ! 今回は僕の勝ちだ! パリンクロン!!」


 そして、パリンクロン相手の勝率が一割切っているカナミは、久しぶりの勝利で大はしゃぎだった。


「くっ、確かに今回は俺の負けだな……」


 素直にパリンクロンは負けを認めた。

 彼らの暴走を台無しにできる人類側の最後の砦が崩れ、さらに時は過ぎていき……。



 ◆◆◆◆◆



 ――かつてないほど迷宮連合国は綺麗に回る。


 他国からの冒険者の流入で、連合国の人口は僅か数ヶ月で1.2倍まで膨れ上がった。常に連合国の宿は大盛況し、迷宮関連のお店は大繁盛。そして、初心者を優遇する入り口前の『迷宮店舗』のおかげで、弱者が理不尽に迷宮で死ぬこともない。

 いまや探索者は連合国どころか、世界で最もホットな職業となっていた。


 今日も今日とて、たくさんの探索者たちが夢と希望を持って、入り口をくぐっていく。


 中に入れば、まず一層は初心者向けの石畳の回廊。

 一定間隔毎に魔石が配置され、均された地面がはっきりと見える。

 薄暗さや鼻につく異臭なんてものはなく、初心者殺しのボスモンスターも遠方に再配置され、安心設計だ。当然のように、昆虫モンスターは別の層に移され、一層で状態異常をしかけてくる敵はいない。そもそも序盤で状態異常が多出するのがおかしかったのだ。現在の迷宮の浅い層では、遺伝子改良されたポップ調のモンスターばかりだ(もちろん、経験値となる『魔の毒』は薄まっているが、安全に確実にレベル上げができる)。


 そして、日に数度ランダムに出現する宝箱。

 最近の探索者たちの目的は、ほぼコレだ。基本的にモンスターが守っているものの、リスクに見合ったリターンが約束されている。中身はランダムだが、あえてそれが探索者たちの欲望をくすぐっている。運よく、千年前のアイテムが出れば、お店で高額換金できるのだ。


 その換金場所となるお店は、迷宮内にも完備されている。

 お店の信頼と実績は、いまや地上の商会やギルドにも匹敵する。店主は覆面をしていて怪しかったものの、長く利用していくうちに探索者たちは気にならなくなっていた。偶に個数限定で格安の武具が並ぶこともあるので、誰もが足しげく通っている。


 迷宮は変わった。

 もはや、数ヶ月前の薄暗い死のイメージが付きまとう迷宮はなくなった。


 そして、その『迷宮改造計画』の立役者であるアイドとカナミはというと――


 いま二人は十層の液体ハウスではなく、四十層を本拠地としていた。

 そこに木造の『真・魔王城』を建てて、ダンジョンの経営責任者でありながら裏ダンジョンの最後のボスとしても生活していた。


 ただ、当然だが表のボスである超手加減してる『魔王ティティー』を突破する探索者は皆無なので、この四十層の城はとても静かだ。

 千年前のどこかで見たことのある城、そのバルコニーの一つでカナミは黄昏ていた。


「こ、これでよかったのかな……?」


 パリンクロンに大勝利した後の余韻タイムで、ふと冷静になってしまっていた。

 魔法《ディメンション》で地上や迷宮の様子を全て確認し、二度目の自らの迷走を心配している。


「何を、カナミ様! これでいいに決まっていますよ。自分たちの迷宮は世界一のものとなりました。ええ、とてもいいことです。自信を持ってください」

「いいのかなあ……?」


 付き従うアイドは、うんうんと唸る主君カナミの気持ちを全く察せずに話す。

 千年前と同じ失敗を繰り返そうとしているが、彼は全く気付く様子がない。


「……ふむ。それにしても、最近のカナミ様は少しネガティブですね。よくないですよ。姉様も、それがカナミ様の悪い癖だと言っておりました」

「いや、ネガティブってわけじゃないと思うんだ……。ただ、ここまで来ると、なんだかね……」

「どうしました?」

「こういうのってさ……。最初は面白いんだよね。でも、どんどん完成に近づいていくにつれて、問題がなくなってきて、頑張らないといけないことも減ってきて……。その、張り合いがさ、なくなってくるんだ……」

「そういうものですか? 正直、自分は逆ですね。ここからが、むしろ楽しいと思いますが……」


 趣味は似通えど、スタイルの差が露呈し始める。

 現実主義とゲーム主義の差で、無双好きと接戦好きの差である。


「なら、そろそろアイドがメインになってやっていいよ。いまの僕より、アイドのほうがよさそうだ」

「そんなことありません、カナミ様。自分は補佐でこそ輝きます」

「んー、じゃあ責任者は僕。けど、実質的な主権はアイドに委任って形でいこう。もし、なにか偶発的な事故とか、新たな勢力の出現とかあったら呼んで。そのときは全力で僕が対処するから」

「トップはカナミ様のままで、運営の維持は自分がやるのですか……。そういう形でしたら、まあ……」


 こうして、アイドは千年前の黎明期と全く同じポジションに収まってしまう。


「わかりました。ただ、もしものときは頼りにしてますよ。カナミ様」

「うん。でも、この数ヶ月、結構がんばったから、ちょっと僕はここで休むよ」


 こうして、異動の手続きが終わり、少し奇妙な形でアイドとカナミの四十層での暮らしが始まり――


 その翌日、二人は魔王城兼事務所の一室にて、報告書と立案書の確認をしていく。


「――カナミ様。これはどうでしょうか?」

「いいね。こっちは少し修正して欲しいけど、他は完璧だ」

「なるほど。すぐに修正しておきましょう」


 とはいえ、もう迷宮は完成形だ。

 どれもが難しくも長くもない作業だった。

 テーブルの上に並んだ食事を突きながらの最終確認ばかりである。


 ゆえにカナミは迷宮以外のことも、会話の合間に挟む。


「あ、ちなみに、これの味はどう? たぶん、異世界では親しみがないから、流行らないとは思うんだけど……」

「いえ、自分は好きですよ。なかなか暖かい味です」

「ありがとう。アイドは舌がいいから助かるよ。他の人だと野菜じゃなくて肉を寄こせってうるさいからね」

「特にティティー姉様ですね。味見や評価は、このアイドにお任せを」

「うん、そうするよ。それじゃあ、片付けるねー」


 食べ終えた料理の皿をカナミは片付け始める。

 城の台所まで持っていき、綺麗に洗っていく。


 その背中を見届け、アイドは一つの想いを抱いていた。


 ――惜しい・・・


 とても惜しいとアイドは内心で、歯を食いしばっていた。

 いま頭に浮かぶのは、つい最近ソウルフレンドとなったエルミラード・シッダルク。その彼の口にする想い人『アイカワ・カナミ』。


 あれからエルミラードと交流のあったアイドは、何度かエルトラリューの学院のほうに向かうことが何度かあった。そこには消えた美少女アイカワ・カナミのファンクラブが存在し、当然のように入会したアイドは特別に一桁ナンバーを貰っていた。


 ちなみに会長はパリンクロン・レガシィで、その一桁ナンバーたちは学院で『幻妃の九騎士セイブ・クイーン・ナインズ』と呼ばれている。


 その騎士の一人として、アイドは痛感するのだ。


 この状況はアイドにとって、理想の一歩手前だ。

 ずれがあるとすれば、アイカワカナミの性別のみ。

 それさえ叶えば、かつてノスフィーと戦ったときに口にした魂の『未練』が晴れることだろう。と、そう思ったとき――


「ふふふ。いまならば、できるんじゃないのか?」


 定例の悪魔の囁きが聞こえた。


「――っ! って、またティーダ様ですか……」

「ああ、私だ。いや、アイドが自分の心を抑えているのを見て、少し口を出したくなってね。別に、ちょっと暇になったから来たわけじゃないよ」

「わかってます。しかし、いまならばできるとは……以前の『カナミ様の肉体変換』ですか? しかし、もう自分は懲りました」

「本当にそうなら、そんな顔はしないだろう。もう気付いているんだろう? いまならば――いまこの状況ならば、今度こそ成功するのではないかってね」

「そ、それは……」


 ティーダの声が、アイドを浸食する。


 その言葉は的外れではないと、アイドは思ってしまう。

 なにせ、いま迷宮は完全にアイドの支配下にある。

 以前の戦いで反省すべき点があるとすれば、それはフィールドだった。陣地作成の得意な『木の理を盗むもの』でありながら、衝動に駆られ、真正面からの勝負を挑んでしまったのが悪手だったのだ。


 しかし、いまならば――この四十層、『木の理を盗むもの』の階層で敵を迎え撃てる。

 それも迷宮三十九層分、全ての管理を自分は委任されている。

 いまここは世界で最も堅牢な要塞であると、確信できる。


 準備は万端だ。

 『真・魔王城』として、四十層には神樹の苗を三つ植えてある。

 ずっと気付かなかったが、この『木の理を盗むもの』の階層では植物の育ち方が地上と大きく違う。ここは木属性の全てが強化される空間であるのは間違いない。

 さらには、愛用の『金刺毒花トリドレイク』『石食い蔦テリアリア』『魔力吸いの聖木ド・リフィドゥ』といった植物も揃っている。


 ここで戦えば、自分も他の『理を盗むもの』に後れを取らないのでは……?

 そうアイドは思い至ったが、すぐに首を振る。


「いえ!! 前も同じことを考えました! しかし、駄目だったのです。自分は敗れたのです……」

「前の協力者は、実質私だけだったからね。しかし、今回はファフナーがいる」

「確かに、ファフナー様はいますが……!」


 ファフナー・ヘルヴィルシャインも同じファンクラブナンバー一桁『幻妃の九騎士セイブ・クイーン・ナインズ』の一員だ。協力は間違いない。他のメンバーたちも、協力を要請すれば、手助けしてくれる可能性は高い。


 アイドの灰色の脳細胞が動き出し、勝率を計算し切ってしまう。

 同時に、ごくりとアイドの喉が鳴る。


「いま私が、かつての盟友の言葉を繰り返そう。そして、かつてのカナミを想像するんだ。――混じりのない黒目に艶やかな黒髪ロング、長身系の姉タイプ。心優しく柔和で、純然にて正善で、守護者ガーディアン最高の乙女回路を完備し、家事万能の上によく気遣いができて、世話焼きで甘やかし屋のっ、正統派で完璧な姉様パーフェクトシスター!」

「くっ――!!」


 アイドはたじろぎ、もう一度ごくりと喉を鳴らせる。


「思い返せ。いまの姉の現状を。あの女がアイドの願いを叶えてくれるか? ずぼらでだらしなく、あの鮮やかなエメラルドロングは手入れゼロでくすみまくり――というか、あいつ風呂ちゃんと入ってんのかと疑われるほどの子供タイプで! 自分勝手で気性は荒く、守護者ガーディアンで最も雑な性格で、家事はなんらできない女子力ゼロの甘やかされ体質のっ、邪道も邪道の姉ロード・ティティーを思い出せ!!」

「くっ、あぁっ!!」


 声だけなのに、アイドはオーバーにのけぞってリアクションを取った。

 彼は意外に男同士の馬鹿なノリに合わせられる男なのである。


「言い返せまい、アイド! この数ヶ月間、ずっと! 貴様は心の底ではカナミを姉として扱っていたのだ! 姉の代わりとしていたのだ!!」

「無意識にカナミ様を姉に……。なら、自分は……。自分は……――!!」


 最後に、もう一度ごくりと喉を鳴らした。

 そして、その嚥下の音が合図となる。

 アイドは全てを認め、あらゆる束縛から解放された顔で、穏やかに呟いていく。


「ああ、そういうことですか……。この新生した『迷宮』は、このときのためにあったのですね……。全ては、この戦いのため……」


 あっさりとアイドは人生の目的を再設定し直した。

 最近、『理を盗むもの』たちは仲がいいので、このくらいの即興劇はお手の物である。


「ふ、ふふふっ、はははは! アイドは本当に人間らしいなあ! 私たちの中で一番人間らしい! なにより、ノリがいい! 私に闇魔法くらい使わせろよ! はははは!」

「いいえ、そこまで苦労はかけられません。……むしろ、自分の願いにあなたをつき合わせているのが実情ですからね」

「……ん? むしろ、私がアイドの?」

「騎士ティーダ・ランズ、あなたはいつだって夢を追いかける人を応援してくれる。それが闇という属性の本質かもしれませんね」

「……ああ、そうか。そうかもな。そうかもしれない。そのほうがいい。そうだったんだな……!」


 ティーダは思いもしない言葉をかけられ、自分の本質に届きかける。

 そして、それを教えてくれた友人は、ゆっくりと動き出す。

 裾の長い服をたゆませつつ、その眼鏡の位置を直し、瞳に誓いを灯す。


 いまや、彼は宰相と呼ばれる存在ではない。

 この千年後にて、成長したのだ。

 補佐からメインに。

 一軍を――いや、英雄たちを率いる一人のリーダーに。


「では、始めましょう。迷宮を一時封鎖し、カナミ様を確保します。そして、迎撃の準備を」

「ああ、ファフナーには私が連絡しよう。臨時の聖女を守護する『三騎士』の再結成だ。総長はアイド、おまえだ」

「ええ、甘んじて受け入れましょう。今度こそ、自分は守護まもります。自らの主君を、必ず――!」


 こうして、またいつものが始まる。

 いつもの守護者ガーディアンたちの全力の遊びが、地上の人間たちの迷惑も考えずに、衝動的に始まる。

 馬鹿みたいで、楽しくて、お約束で、過去を忘れられる、いつもの――



 ――ただ、今回は一つだけ違った。



 その違いは、とても致命的で。

 それに気づけていたのは、現時点でパリンクロンを含み、誰もいなかった。


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