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太閤秀吉  作者: 恵美乃海
9/13

9 明るく楽しい世界征服

一ヶ月経った。


秀吉は、天海の住まいする寺を再び訪ねた。


天海の書斎に入った。

書物の山が乱れていた。

また、かなりの書物を読み込んだのであろう。


「どうだ。天海、世界征服だったかな。その方策はまとまったか。」


「はい、まとまりました」


「そうか。では、聞こうか。どのようにして攻める」


「攻めません」


「何だと」


「殿下、天海は、物事の元の元から考えてみました。

世界征服。

それは、いくさでしか、成し得ることができないことなのだろうかと。

この日の本の領土を、朝鮮から明へ、天竺へ。

そして、この日の本の南に広がる海の果ての国。そこまで広げる。

そういうことでしか成し得ることができないのかと」


「それが、信長様の望まれていることだぞ。天海」


「が、信長様は、こうもおっしゃられたそうではありませんか。お前は、お前のやり方でやってみよと。」


「ふうむ」


「殿下、拙僧は、この日の本だけではなく、中華の歴史、そして、さらには、南蛮、紅毛の歴史まで。信長様がおっしゃっておられたというアレクサンドロス、チンギス・ハンという人物がどのようなことを、どのようにして成したかも、把握しております。

 英雄とは、いくさに勝ち、広き領土をおのれのものとする人物。

が、殿下。全く新しい、これまでの世界の英雄たちが、誰もやらなかった方法で世界征服をやってみませぬか。

それが信長様の委託に応え、さらには、それを超えた答えを出すことにもなります。

どうです、殿下。あの信長様も驚くようなことをやってみませぬか。」


いくさではない世界征服。

誰もやらなかった方法での世界征服。

信長様も驚くであろう、世界征服。


「天海、聞かせてもらおうか。お主の考えた世界征服の、その方法を」


「はい、先ずは、さほど変わったことではありません。

信長様が、始められ、殿下も受け継いでおられる、商いを盛んにして、この日の本を豊かな国にする。

そして、その豊かさを世界にもひろげる。商いとは、物を動かすこと。

その物を、もっともっと多く、その動きをもっともっと大きく早くする。

それを、この日の本が中心になって始め、この日の本を中心にして、世界を動かし、この日の本だけでなく、世界全体を豊かにする。これが第一です。」


「ふむ」


「豊かさの次は、ひとの心に、楽しみを、華やぎをもたらすこと。この楽しみ、華やぎも、この日の本が中心になって始め、それを世界に広げる」


「楽しみ、華やぎか。具体的には何を始めるのだ」


「細部は、これから、さらにつめていかねばならないと思っております。ですが、ひとは、どういう時、最も楽しいと思い、最も華やいだ気持ちになるか。それは、「祭り」です」


「祭りか」


「はい、とはいえ、祭りは、この日の本だけでなく、他の国であっても、それぞれに祭りはあり、人びとは、それを楽しみにしておりましょう。

拙僧が今、思っているのは、これまでなかったような、全く新しい形で、世の人びとに、祭りと同じような楽しさ、華やぎを与えることはできないか、ということでございます。

具体的には、全く新しい芸能、ということになりましょう。これについては、実は既に着手しております。」


「ほう」


「出雲阿国というおなごがおりましてな。

何か新しい芸能を始めておるようでこざいます。

その評判を聞き、阿国を、この寺に呼び寄せ、この日の本だけでなく、世界中の人びとが、楽しく、華やいだ気持ちになれるような芸能を考えよ、と時限を設けて申し付けております」


「ふむ」


「殿下、もうひとつあります」


「なんだ」


「信長様のおっしゃられたことで、これは、と思うことがございました。あの世におけるいくさ、です」


「いくさ、か」


「信長様は、あの世のいくさは、面白い。そのいくさでは、もちろん、命のやりとりをする訳だが、殺されたものも、また直ぐ元の状態に戻る、あの世でのいくさは、純粋に遊戯として楽しめる、と」


「おう、確かにそうおっしゃった」


「純粋に遊戯として楽しめる、いくさ。

拙僧は、これは、この世でも通用するのではないかと思いました。

この世から、いくさは、なくなりません。人の心は、どうしても、いくさを始めてしまう。そのようになっているようでございます。

しかし、ここに、決まり、を設けてみては、どうでしょう。決まりとは、命のやりとりは、しない、ということです。

はっきりとした勝ち負けはつけるが命のやりとりはしない、いくさ。 

そして、そのいくさをひとびとにも見せる。そのいくさは、純粋な遊戯です。

そして、命のやりとりは、しない、という以外に、人びとが見て分かりやすい決まりも設けるのです。

このいくさ、技競べ、と言ってもよいでしょう。


ただ、拙僧は、そこまでは考えることか出来ても、どういう決まりを設ければ、人びとが見て、楽しい。あるいは、熱をもって叫びだしたくなるような技競べになるのか。

これは、拙僧よりも、殿下のもとにおられ、殿下がその才能を認められている、若い方に、お申し付けくださればと、思います。」


「そうか、そして、その技競べを」


「はい、この日の本が考案し、世界に広めます。

殿下、目的はお分かりでしょうか。

世界の人びとに、日の本とは、何と楽しく、面白い国なのだ、と思わせるのです。

そして、世界の人びとが、日の本に憧れ、日の本に行きたい、と思わせる。

日の本から、人がやってくれば、喜んでこれを迎え、日の本の話を聞きたがる。

そして、日の本から、日の本が考案した芸能の、そして、技競べの、その一流の者がやってくれば、誰もが観たいと思う。

そして、同じ芸能を、同じ技競べを、その国でも始めたいと思わせる。

殿下どうですか。この方策は。

そう、明るく楽しい世界征服です。」


「明るく楽しい世界征服か。その言葉、気に入った」


やっちゃいました。一日、三度の更新。 

この第九回は貯めておいて、明日、投稿しようかな、とも思ったのですが、書き終わると、直ぐに投稿したくなる性分なもので。

明日から、更新ペース、少し落ちるかもしれません。

三連休ですね。

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