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太閤秀吉  作者: 恵美乃海
6/13

6 信長の頼み

「秀吉」


「は」


「では、お前への儂の頼みを言おう。もっとも、これまでの話で見当はつくであろう」


「分かります」


「儂が、できなかったことをやってくれ。この日の本だけでなく、世界を、その膝下に収めよ」


「はい」


「お前は、光秀とともに、儂の夢をやぶった。お前には、儂の夢を受け継ぐ責任がある」


「はい、はい」


「なあ、秀吉。儂は、お前の何だ。」


「この身の全てをあげてお仕えする主君でございます」


「最後は、叛いたがな。それはまあいい。

儂は、お前の主君。

お前は、儂の家臣。

だがな秀吉。儂は、もうひとつ別の眼でもお前を見ておった。」


「はい」


「お前は、儂の弟子だ。一番のな」


「勿体ないお言葉で、ございます」


「儂は、天才だ。お前にも色々と天才的な部分はあるが、真の天才ではない。

だが、よくやったと思うぞ。儂が死してのち、よくぞ十年かそこらで、この日の本を統一した。お前はこの儂から、色々と学んだろう。」


「はい、上様であったら、どのようになされるか、折に触れ、私は、そのように考えておりました。

信長様は、私の憧れ。いくさや、まつりごとだけでは、ありませぬ。建築、絵画、衣装。私は、信長様のご趣味を真似させていただいております。派手に、豪華にと。」


「おい、一緒にするな。同じ派手でも、儂の趣味は、お前と違って、品がいいぞ。お前のは、ただ派手に、豪華にと。下品極まりない。」


「そ、そのようなことは」


「分からんか。見る眼がある奴が見れば、その違いは分かるのだがな。まあ、下品も極めれば、それが美になる、ということが無くもなかろう。ふん、まあ、その辺はどうでもいい。好きにやってくれ」


「信長様、ご期待に応えたく存じます。しかし、私も既に五十八歳。どれだけの時間が残されているのか」


「長生きせい。天才ではない者が、天才と同じことをしようと思えば、長生きするしかあるまい」


「分かりました」


「お前には、格好の参謀もおるしな。」


「参謀。官兵衛のことでございましょうか。」


「ああ、あやつもよく出来た男だ。だが、あやつにも負けない男がおるであろう。」


「官兵衛以上の参謀? はて」


「光秀よ」


「上様、光秀は、山崎の合戦のあと、小栗栖で・・・」


いや、この方には通用しない。


「ふん、気付いたか。当然だ。光秀は、あの世に来ていないのだからな。まだこの世にいるに決まっている。お前は光秀を生かしている」


「は、はい」


「天海か。また、恐ろしくスケールの大きい名を付けたものだな。あの弘法大師、空海をも凌ごうとするかのような名ではないか。あやつ、儂を亡きものとして、吹っ切れたのだろうな。一皮剥けたようだな」


「信長様、この秀吉、残る人生の全てを懸けて、信長様のご委託に添うよう、あい勤めまする」


「ああ、弟子であるお前が、儂が夢に描いていただけのことをしてくれたら、その師匠である儂であれば、どれだけのことができたか、となる。

もうアレクサンドロスだろうが、チンギス・ハンだろうが、気後れすることはない。頼んだぞ」


「かしこまりました」


「なあ、秀吉。儂は、天才。お前は真の天才ではない、とさっき言った。

だが、お前は、この儂も持っていないものを、持っておる。

儂は、家臣を恐怖で支配した。それが、最も効率がよいのでな。

だが、お前は、お前に仕えるものを、自らの意志で、なさねばならぬことに励まさせる、その術を知っている。

みな、明るく、楽しく、お前に仕えておる。これは大したものだと思う。


なあ、秀吉。儂に学ぶのはいい。だが、それにとらわれることはない。お前は、お前のやり方で、その膝下に世界を収めてみよ」


「は」


上様が、この儂を誉めてくださった。秀吉は、泣き出しそうになった。この方に仕えてから。この方にどれだけ叱られただろう。

だが、この方は、時に、猿、藤吉郎、でかした。よくやったぞ。と、誉めてくださった。

 そのことこそが、この儂の最大の悦びだったのだ。


「なあ、秀吉。思う存分、生きてみよ。励め。精一杯励め。儂は、あの世から見ておる。そして、その生を終えたら。儂のところへ来い。信長様、秀吉は、これだけのことをやりました、と儂に語れ。」


「はい、はい」


「そして、あの世で、戦ってみようではないか。お前がどれだけの男になったか、この儂に見せてみろ。お前のあの世でのデビュー戦は、この儂が相手をしてやる、楽しみにしておるぞ」


信長は、莞爾と笑った。


ああ、信長様は、もう、あの世に戻ろうとされている。


信長様が、次に、お口にされるのは、別れの言葉。


が、何とも感動的な別れではないか。


信長は、口を開いた。 

そこから、発せられたのは、別れの言葉ではなかった。

えーと。今の時点で、本日の PV 1400 を超えてます。 どうして? この話、面白いのでしょうか?  うーん。

私は、これまで、投稿してきた小説のほうが好きなのですが、と、ここで、さりげなく(露骨かな)宣伝しても、読んではもらえないでしょうし。


遊び半分で書き始めましたのに。今まで、経験のないPV 数 いただいているもので、嬉しくて、柄にもなく、一日に、朝、晩、二回更新なんて、やってしまっています。

疲れました。


何はともあれ、お読みいただいている方、ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

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