12 先ずは日の本から
「殿下」
天海が、語り始めた。
「今、思ったのですが、この伏見舞踊十六人隊。伏見十六ですか。ひとつにとどめるのは勿体無いと思います。この京、伏見で、さらにいくつもの組を作ってもよいのですが、それよりも、この日の本の国中に、この十六人隊を作るのがよろしかろう。
殿下は、、この日の本を統一なされました。この日の本の戦国は終わり、今は太平の世。各地を治める領主たちを集め、この伏見十六の、舞踊を観せましょう。
そして、それぞれの領地から、選りすぐりの美少女、十六人を選ばせ、この伏見に連れてくる。むろん、その美少女たちの実家には充分な支度金を払います。
そして、阿国殿のもとで、舞踊を学び、またそれぞれの領地に戻り、その領地の民びとたちにこの舞踊を観せる。いかがでございますか。殿下。」
「それはよい、それはよいぞ。天海。今の話。阿国殿も異存はないな。」
「はい、願ってもないことでございます、殿下。そのお役目、喜んで勤めさせていただきます。」
「その、それぞれの領地の十六人隊には、伏見のところに、それぞれの領地の名を付ければよろしいでしょう。
例えば、今、この場におられる方、直江様の上杉殿の領土では、越後十六。石田様は、佐和山十六。真田様は、上田十六。」
「よいのう。じゃが、天海。それが、本来の目的であった世界征服とどう結びつく」
「この日の本で、数多く誕生するであろう十六人隊の中でも、阿国殿が観て、特に優秀と思われる隊。そして、民びとの中で、より人気の高い隊を、朝鮮、明、アユタヤ、そして南の海の向こうの国々に送り出し、そこの民びとたちに、舞踊を観せるのです。
どの国でも、大きな人気を得るのは間違いありますまい。
そして、それぞれの国にも、それぞれの国の十六人隊を作る。日の本で生まれた舞踊十六人隊が、世界の舞踊十六人隊になるのです。」
「あい、分かった。たしかに明るく楽しい世界征服じゃ」
「そして、今ひとつ、石田様たち御三人衆が、考案なされた、色々な技競べ。これもまた、日の本中に広めましょう。これまた、各領土それぞれで、その技競べを行う組を作らせましょう」
「その技競べを行う各領地の組を、ひとつところに集めて、大会を行い、勝ち負けを競う、というのも面白いのではないか」
「おお、殿下。それは、ご名案です。」
「と、同時に、その技競べを、世界に広め、教える者も養成せねばならぬのう。天海。これも、明るく楽しい世界征服の重要な柱じゃものなあ」
信長様が色々、おっしゃっておられたな。リーグ戦、強さによるランク分け。トーナメント、シード。
どういう意味なのか、酒肴の席で、もっと詳しく教えていただいておくのだった。
たが、進めていく内に、ああこういうことか、と、分かってくるような気はする。
「その各領地の組を、ひとつところに集めて行う大会のことですが、十六人隊も同様にいたしたく存じます。
その大会を、世界に送る隊の選抜の場としてみたく存じます」
「おお、阿国殿。それはよい。一体どのような大会になることか、今から楽しみじゃ。」
お読みいたただきありがとうございます。
小説「太閤秀吉」
この次の回が最終回です。
本日中に投稿します。




