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ぐーたらな龍少女と理を紡ぐ錬金術士の少女  作者: 雪野湯


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19/26

防犯シール

 勇者との一連の騒動が過ぎ去り、数日後。

 暖かな太陽がポワソの森に降り注いでいます。

 その光の下で、ミュールは今日も元気に洗濯に励んでいるようで、庭先で洗濯物を干していました。

 


「よしっ、これでおしまい。今日は暖かいですから、厚手のシーツも早く乾くでしょう。乾燥機もいいですが、お日様の光の方がなんとなく渇き心地が良い感じがしますからねぇ」


 最後の一枚を干し終えて、軽く背伸びをします。


「う~んっと、そろそろアスカさんが帰ってくる頃でしょうか? 地球に買い物に行くと言っていましたが、大丈夫でしょうかねぇ。魔力が回復してきて調子が良いらしいですけど……まぁ、あの人のことですから、大事ないでしょうが」



 ミュールは(から)になった洗濯籠を手にして家に戻ろうとしました…………噂をすれば影が射すとはよく言ったものです。

 庭先にぽっかりと空間の穴が生まれ、そこからアスカが戻ってきました。


「はぁ~、エライ目に遭ったのじゃ。じゃが、セ~フ」


 アスカは両手をクロスし、続いて左右に広げるポーズを決めます。

 何か馬鹿なことをしている彼女を、ミュールは呆れ声で尋ねました。


「帰ってきて早々、何を? 何かのギャグですか?」

「そう、ジャンガジャンガ、って違うのじゃ。古いじゃろ、もう若者は知らんぞ。ワシは無事に生還できたことを喜んでおるのじゃ」

「ん? 地球で手強い敵にでも会いましたか?」

「ああ、会ったのじゃ。親切心という巨大な敵にな……」

「はい?」


 ミュールは首を(かし)げます。

 すると、アスカは手にぶら下げていた茶色の袋を見せつけてきました。

 袋には無数の地球の言語がプリントされています。


「〇ッグカメラにある、〇フマップでちょいとPCゲームを二本買ってきたのじゃ。そして、帰りにポ〇リと〇イスBOXを買おうと思っての、近くにあったドラッグストアに寄ったのじゃが、そこであいつが鳴り響いたのじゃ」


「鳴り響く? 何がですか?」

「防犯ベルじゃ」

「ああ~」


 ミュールは片手で顔を覆い、残念そうに声を出します。


「やってしまったわけですね」

「どういう意味じゃっ! ワシは何も盗んどらんわっ! てか、店に訪れたばかりで何を盗める!?」

「では、どうして防犯ベルが?」

「こいつのせいじゃ」



 再び、茶色の袋を見せつけます。


「これの中身の商品には防犯シールが貼ってある。購入の際にしっかり無効化するシールを張ってもらったのじゃが、どうやらもう一枚余計に貼られていたらしくてな、店員もそれに気づかず、袋に詰めてしまったようなのじゃ」


「はぁ、なるほど。でも、お店を出る時には鳴らなかったんですか?」

「なぜか、鳴らんかった。たまに反応しないことがあるのじゃ」

「不具合ですかね?」


「さぁ、そこのところはようわからん。ま、とにかく、その無効化シールを貼り忘れた防犯シールがドラッグストアで牙を剥いたのじゃ」

「それで恥をかいたと。災難でしたね」

「それだけなら別に構わん。問題はブザーが鳴ったあとじゃ」

「店員さんに疑われたんですか?」


「いや、そんなことはない。ブーブー音が鳴ってしまったんで、ワシは出入り口で待っておった。するとすぐに女性店員がやってきて、袋を見せると納得したのじゃ」

「それで済んだなら、特に問題は……?」

「それがのぉ……その店員がとても親切じゃった。いや、親切すぎた」

「それは?」


「うむ。これは女性店員とワシのやり取りなのじゃが」



――ドラッグストアにて。



『他店の商品が反応したようですね』

『申し訳ないのじゃ』

『いえいえ。よろしければ、そちらの商品……』


 ワシはここからこのように言葉が続くと思ったのじゃ。


<お預かりしましょうか?>


――――――


「正直言うと、この言葉でも戦々恐々じゃったんじゃが」

「どうしてです? 預かってもらっても構わないのでは?」

「実は、ワシが手にしておる二本のPCゲームは……エロゲ―じゃったのじゃ」

「あ~、それは恥ずかしいですね」

「うむ。それでワシは会話の先を予測して、手早く袋を縛り、外からは見えないようにしたのじゃ。じゃが、店員が言い放った言葉は……」



――よろしければ、そちらの商品……の防犯を解除しましょうか?――



「ひひぃ~!! っと、ワシは心の中で叫び声を上げてしまったのじゃ」

「解除となると商品を見られてしまいますからね。というか、よく買えましたね。子どもの姿なのに?」

「エロゲー買う時は大人の姿をしとるからの」

「女性の姿で?」

「そうじゃ」


「〇フマップの店員さんビックリですね」

「そうでもなかろう、相手も客商売じゃろうし。まぁ、ワシのような可憐な乙女がエロゲ―を手にしているギャップには驚いたじゃろうが」


「可憐はともかく、そういった商品を取り扱っているから気にしていないのかもしれませんね」

「棘があるのぉ……話を戻すがお店の前で大ピンチなのじゃ。なにせ、中身はエロゲー。タイトルは人妻ものとロリもの。見られたら、社会的死を迎えてしまうのじゃ」


「また、両極端な商品を……」

「ワシは絵が好みであれば何でもよいからな」

「節操がないですね。それで、見られちゃったんですか?」

「いや、このように誤魔化した」



『え、えっと、いや、それには及ばないのじゃ。大したものではないから、自転車の籠に入れておくのじゃ』

『危ないですよ。解除ならすぐに終わりますから』

『お、お気遣いなくなのじゃ。それじゃ!』



「そう言って、ワシはありもしない自転車の籠を求めて、一度店外に出たのじゃ。そして、店の端にエロゲーを隠して、再び店内に戻ったのじゃ」

「なんだか、すっごく情けない話に聞こえますね」

「それはほっとくのじゃっ」


「ですが、わざわざ店に戻らなくても。そのまま帰っても良かったんじゃないんですか?」

「そんなことをすれば、店員に悪いじゃろうが。ともかく、急いで買い物を済ませ、すぐに店を出て、エロゲーの無事を確かめたのじゃ。ま、この通り、大事はなかったが」

「盗まれても、警察に届けは出しにくい商品ですからね」



「まぁの……そんなわけで、無事生還を果たしたワシは、エロゲーに没頭するのじゃ」

「はぁ、食事の時間はちゃんと出てきてくださいよ」

「も、もちろん、わかっておるのじゃ」

「信用に欠けますね」


「ひどいのぉ。まぁ、よい。ワシは癒されるためにエロゲーに向かうのじゃ。先ずは……人妻ものからやろうかの」

「それはまた、どうして?」

「女性店員の薬指に指輪があっての、おそらく彼女は人妻じゃ。彼女の親切心に心打たれて、ワシの情欲に火が付いたのじゃ。よって、人妻ものから盛り上がるのじゃ」

「うわ~、アスカさん、キモいです」


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