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ぐーたらな龍少女と理を紡ぐ錬金術士の少女  作者: 雪野湯


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お色気回について

 アスカは綺麗なお目目をこすりながら小さく欠伸を上げています。

 一見、幼子の可愛さを漂わす姿ですが、ミュールにとっては木刀でド(たま)をかち割りたくなる姿……。

 

 ですが、彼女はとても冷静で聡明な子。

 自分の感情をしっかりとコントロールして、アスカに話しかけます。



「まだ、眠って10分程度ですからね。寝た気も何もないでしょう」

「なに~? まったく、ワシの眠りを妨げるとは何事なのじゃ?」

「イラッ……ごほん、実は、」

「あ、そうじゃ」


 アスカはミュールの声を遮り、何かを思い出したように手を打ちます。

 どうせ、くだらないことだろうと思いながらも、ミュールは尋ねます。


「どうしました?」

「ちょっとな、夢を見てな」

「夢? まさかと思いますけど、いま見ていた夢の話をするつもりじゃ……」

「うむ、そうじゃ」


「やめてくださいよ。人の見た夢の話なんて、聞きたくない話ランキング、堂々一位ですよ!」

「まぁ、そういうな。ちょっと、聞くがよい。夢の中でミニキャラとなった、かわゆ~いワシが四人で会議をしておったのじゃ」


「はい、憎らしい宿六が四人でたむろしてたんですね」

「ぐっ、辛辣じゃの。まぁ、よい。でな、」



 アスカはくだらない夢の話を語っていきます。

 夢の中の四人のアスカは、皆さん三頭身ほどの大きさで、学校の教室を模した場所で何やら話し合っていたそうです。

 四人の格好はアスカをちっちゃくまとめたような姿でしたが、少しずつ特徴があるようです。


 一人はいつものアスカ。彼女は議長を務めています。

 もう一人は眠そうなのんびりアスカ。あとの二人はサングラスをかけた不良アスカに、眼鏡をかけた委員長アスカです。


 四人はある議題を掲げて話し合っています。

 それは……物語におけるお色気回についてです。



 アスカはピンク色の髪を揺らして尋ねます。

「お色気について、どう思うかの?」


 委員長は眼鏡をくいっと上げてこう明言します。

「安易なお色気回は反感のもとだと思います。やめるべきです!」

 

 不良はサングラスを少しずらして、委員長を睨みつけます。

「何言ってんだよ。少年たちの希望を奪う気か? 委員長」

「そういうわけではありません。エロは偉大です。ですけど、安易に出すモノじゃないと言っているんです!」


「どういうことだよ?」

「お色気はそういった物語に任せておけばいいんです。シリアスなのに、突然女の子のえっちぃなシーンを挟んでくるのは駄目だと思います。そう思いませんか、のんびりさん」


 のんびりアスカは机にほっぺたを押し付けたまま、だらしなく声を出します。

「う~ん、でもぉ、お色気回をやるとアンケートの受けがいいそうだよぉ。漫画雑誌の話だけどねぇ」


 

 これを受けて、不良は鬼の首を取ったように声をはしゃぎたてます。

「そうだろそうだろ。パンツ出しときゃ、少年らは幸せなんだよっ。それなのに出さない必要性がどこにあんだ、委員長よ?」

「アンケートの受けを狙ったお色気に何の意味があるんです? 物語には雰囲気というものがあるんですよ。今まで硬派だった話に、人気欲しさでお色気が挟まれたら台無しです」


「いいじゃねぇか。いろんな方法で読者人気を獲得するやり方になんの文句があんだよ? 作者の努力を馬鹿にする気か?」

「そんなことは言ってません。作風に合わせて欲しい、と言っているだけです。だいたい、エッチなのを見たければ、誰かが同人なり、エッチな絵を上げたりしているでしょうからそれを見て満足、」



「それはちがうっ!」 

 ここでのんびりさんが机をドンと叩きました!


「の、のんびりさん?」

「いいんちょう~、作者本人が書いたものと別の人が書いたものじゃ、別物~」

「それは、そうでしょうが。書いた人は違うわけですし」

「そういうこと言ってんじゃな~い。みんなが書いた絵や話もいいけどぉ、作者様が直接産んだお色気シーンには情緒があるの!」

「情緒?」


 委員長はのんびりが言いたいことがわからず、首を捻っています。

 ですが、不良には理解できるらしく、うんうんと頷いています。


「わかるぜ、情緒。有志がいくらそっくりな絵を描こうと、もっとエロエロな絵を描こうと、作者が書いたエロには何とも言えないは味わいがあるからな……」


 

 不良とのんびりはがしりと固い握手を交わします。

 置いてけぼりの委員長は議長アスカに向かい、話のまとめをお願いしました。


「よくわかりませんが、議長。総括をお願いします」

 三人の話を黙って聞いていたアスカは、すっくと席を立ち、じっとりと語っていきます。


「たしかに委員長の言うとおり、安易のお色気回は避けた方がいいと思う。元々、お色気多めの作品であればさほど問題ないが、お色気とは作風が大きく異なる作品でそれやられると、雰囲気がぶち壊しになるからの。それに……」


 アスカは一拍溜めて、場の空気を重々しく変化させます。

 三人のアスカはゴクリ唾を飲んで、続きへ耳を傾けます。



「硬派だった作品がお色気に手を出し、それが思いのほか好評で、以後、お色気作品を突っ走ってしまう場合がある。硬派じゃった作品が好きだった者には、とてもつらいことなのじゃ。どうしても、お色気をやりたいなら別作品でやってほしかったのじゃ……」


 明らかに私的理由を混ぜ込むアスカ。

 彼女は尚も語ります。


「じゃがっ、不良やのんびりの言うとおり、作者の描くお色気はエロスとは違った興奮があるのじゃ。特に硬派な作品に挟みこまれるお色気は、そのギャップの差もあり、興奮の度合いが増すのじゃ!」


 大きく片手を振り出し、教室全体に声を広げます。

 その威風堂々とエロを語るアスカの姿に、委員長、不良、のんびりは涙を流します。


「はい、エロは偉大です」

「ああ、エロこそ少年たちの夢。そして、希望だぜ」

「エロはみんなを笑顔にするぅ~」

「うむうむ、そうじゃなっ。そうじゃな!」


 四人のアスカは円になり、互いの手を握り、ぐるぐると回り始めます。

 あんなにもいがみ合っていた四人がエロを通して、一つに……。

 この素晴らしい話に――





「そんなわけないでしょっ!」

 ミュールは怒鳴り声をあげて、アスカの夢を吹き飛ばしました。

 四人のミニアスカたちは壁に激突して、煙のように消えていきました。


 ミュールはアスカにピシリと指さし、声に怒りと呆れを乗せます。


「聞いて損しましたよ! 本当にくだらない!!」

「くだらないとはなんじゃ! お色気回は素晴らし、」

「くだらないです! いえ、お色気以前の問題です。何がいがみ合っていた四人が一つにですか? さほど、いがみ合ってなかったでしょ!!」


「それはあれじゃ。演出的な?」

「何が演出ですかっ? それに委員長の立場をしっかり明確にしなさい! お色気に対する反対的な立場を取りながら、結局、他の皆さんと同じじゃないですか!!」

「そ、そんなこと言われてものぉ。夢の中の人物は全てワシじゃし……」


「はぁ~。全く、時間の無駄でした」

「無駄とはなんじゃ、無駄とは!」

「無駄は無駄ですよ。他に言い様がありません!」



 二人は口喧嘩を始めてしまいました。

 でも、これはいつものこと。

 さりとて、珍しい光景ではありません。

 珍しい光景ではありませんが、今日は一人ゲストがいます。

 皆さん、覚えておいでですか?


 彼は激しく罵り合う二人にそ~っと話しかけます。


「あの~、すまぬが。よろしいか?」

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