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幻想駆ける雷獣の願いごと  作者: 倉里小悠
Starting the Fantasia
6/6

seeing

キリが悪くて長くなったうえに急ぎ足だったかからららら……

 広場での不思議な事件の後、わたしは自分の家に逃げるように帰っていました。


「誰にも、見えてなかった……! ああ、お母さんっ……わたしは、神様に選ばれてしまったの……? どうしよう……わたしには、役目があるのに……!」


 代々、わたしの家に生まれる娘には役目が与えられます。

 その役目は、海に眠っていると言われる【種石】とこの町を、守ること。

 ほんとうに戦うわけじゃなくて、【種石】を起点として作られている結界を維持するために、この町で生きて子孫を残すのが仕事です。

 結界は術者がいないとその存在を維持することができません。だから、ご先祖様は代替わりの秘術を使って、生まれてくる子供にその結界の力を継承してきました。

 そうすることで、【種石】とわたしという術者が無事であれば結界は永遠に町を守り続けます。


 でも神様のいたずらで、わたしはとある問題にぶつかってしまいました。

 それが、【(えにし)の祝福】。

 神様は、この世界に住むすべての人たちに、続々と現れる異世界人と縁を結ぶことで幸運を呼び込む祝福を与え始めたのです。

 祝福はある日突然に与えられ、空から現れる異世界人と出会うことで勝手に縁が結ばれます。奇特な人は何人もの異世界人に神様から頂いた試練を与えて自分から縁を結ぶそうですが、基本的にこの祝福は万人に等しく与えられます。

 しかしこの祝福は、わたしにとってとても都合が悪いものでした。


「祝福を与えられ、縁を結ばれし者は異世界の者との旅を得る……町から、出る定めになる……」

 もちろん対策はしてきました。普通なら、わたしと縁を結べる異世界人はいません。そう、ありえない。ありえないはずなのに……


「あの魔法陣と、降ってきた人影……異世界人、なの……? 怖い……怖いよ、お母さん……っ」

 わたししかいない家に、嗚咽が木霊していました。




 翌朝、わたしはいつものように時計塔へ向かいました。

 果物屋さんのおじさんからは具合が悪そうだと心配されて、リンゴをただでもらっちゃいました。なんだか、申し訳ない気持ちでいっぱいです。


 広場に出ると、屋台のおばあちゃんが優しく笑って手を振ってくれました。

 他に、人影はありません。

「良かった……異世界人はいないみたい……」

「おやユウちゃん、どうしたんだいそんなに顔色を悪くして」

「ううんっ、なんでもないよおばあちゃんっ」

「そうかい、それならいいんだけどねぇ……」

 異世界人はいない……ならやっぱり、あれは異世界人がやってきた光じゃなくて、何か別の……そう、町の魔術師の実験とかそういうのですよ! きっと!

 魔物は魔法陣なんて使わないし、絶対魔術師のせいです!

「だから、異世界人を怖がる必要なんて――」





「――異世界人って、もしかして私のこと?」




□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆


 学校(監獄)から無事帰還し、愛すべき母の熱烈な眼差し(ジト目)を華麗に躱して自室に戻って早速私は、このクソゲー疑惑のかかった神ゲーに再びログインしていた。

 今日は我が親愛なる友、タカからの有力な情報がある。今度こそこのエンカウント不可脱出不可のクソ状況を突破して見せる……!

「まずは、例のロリ探さないとだな!」

 名前は()()()らしい。金髪碧眼の元気ハツラツな美少女だそうだ。

 しかし、聞き込みは通用しないから張り込みで見つける他ない。

 なんでこんなクソゲーな状況なんだよ……本当に神ゲーなのか?


 ま、まあ、掲示板の情報通り自宅前で待ってればそのうち来るよな…………犯罪臭がプンプンするが、大丈夫だ……多分。

 ん? なんか黒髪のロリが出て来たぞ? コミスなるロリの友達かな?

 随分と怯えた様子だが大丈夫か……? まあ、どうせ話しかけても無反応だろうからどうしようもないが。

 さて、張り切って待ち伏せだ――とまあ張り切っても、お目当てのロリが来るまでは全くやることがないわけで。

「はあ……早く誰かと話したい……デカいフィールドで遊びたい。このクソ――」

 ――テロンッ

「にゅやっはあ!? クソゲーって言ってすみませんお願い許してえっ!!?」








 ……。







 ……ごほんごほんっ!

 いやー、誰も見ていない(反応しない)とは言え、奇声をあげるなんて失態を犯すとは………………恥ずかしい……はっっっずかしぃぃぃいいい!

「ぬぐあああ恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいいぃぃ……っ」

 顔抑えてゴロゴロ転げまわりたい! このムズムズを何とかしたい!


 穴があったら入りたいが取りあえず顔から火が出そうなのを堪えつつ、ゲーム開始前のマニュアル通りにウィンドウを呼び出して通知画面を開く。

「う、運営からのメール……?」


『運営からのお詫び:

 近衛翔太様。

 【Fantasia of the Freedom World】をご利用いただきありがとうございます。

 この度着陸システムの仕ヨウにより、近衛翔太様に多大なるゴ不便をおかけして大変申し訳ございません。

 その対応といたしましては、本日ゲーム内時間12時を持ちまして問題ノ解決がカ能なNPCのすグ傍へと翔太サマのキャラクター【ラン】を転イさせていただキます。そのNPCト会話を行うことで、当問題はカイケツしますのでご安心ください。

 また、お詫びといたしまして、このメールに【最新セット装備☆7確定ガチャ引換券】を添付いたしました。お受け取りになられた後、インベントリよりご使用いただくことができます。


 この度はごフ便をおかけして申し訳ございませんでした。

 ――FFW運営チーム』


 なんか文字おかしくなってね? まあいい。お堅い文面を見てたら落ち着いた。よかったよかった。

「にしても、着陸システムの不具合だったのか……」

 MMOなら稼働中でのバグの発見はよくある話だけど、まさか自分がそれを体験することになるとはねえ。

 しかし、あと30分もしたら問題は解決か。これいいことを聞いたぜ!


「そういうことなら、ガチャを引かせてもらって時間をつぶしますかね~」

 このゲームにはガチャのシステムがある。

 MMOの定番たるアバターガチャ、便利で格安のアイテムガチャ、そして超強力な装備を一気に手に入れることができる――セット装備ガチャ。

 セット装備ガチャで手に入る武器、防具は、そこんじょそこらのボスドロップじゃ絶対に届かないほどの性能を持っており、鍛冶師の腕が良ければ、プレイヤーの改造を受けることで永遠に強くなっていけるロマンあふれる逸品だ!

 レイドイベントの報酬で引換券が配られ、他のガチャと違って課金ガチャでないことからとても高い人気を博している。

 まあ、最高レアである☆7装備は確率が鬼畜の極みらしいので、廃人かとびきりの幸運の持ち主でもない限り手に入れることは難しいが。


 ――しかし、今回私が手に入れたのは()()()()()()

 ソシャゲなら1周年とか年末とか限定でしかも課金でしか引けないような、超ゴージャスな代物!!

 最高レア確定とか運営太っ腹すぎる……素晴らしすぎるぜ……やっと神ゲー感出てきた…………


「では早速……ガチャを引かせてもらう、ぜ!」

 覚悟を決めると同時にインベントリのウィンドウを開き、受け取った引換券をタッチ。使用するかどうかの確認ウィンドウで迷わずYesを選択する!

 選択した瞬間、女神を模したかのような神々しい像が現れる。


 女神像が抱えているのは、大きく淡い虹色の宝石。

 その宝石が、強く輝いた!


『汝に、我が宝物を与えます……』

「お、おお……それっぽい演出だ……」

 女神様と思しき女性の声が響いたと同時に、俺の視界は虹色の光に埋め尽くされる。







 視界が晴れれば、先ほどまで女神像があった場所には、1つ――宝箱のようなものが置かれていた。

「こ、これが、私の☆7装備セット……ごくり」

 廃人しか手に入れることが無いと言われる最高の装備……む、胸の動悸がとまらん!


 手を触れてみれば、箱がひとりでに開き、中身とフレーバーテキストを放出した。

 私の最高装備が、宙に浮く。


『【幻黒爪牙】

 幻と言われた、純粋ながらも黒い金属を用いて鍛えられた籠手。

 オリハルコンの魔術的装飾がなされており、装備した者の生体武器の性能と防御力を著しく高める。

 獣人専用装備』

『【幻黒脚尾】

 幻と言われた、純粋ながらも黒い金属を用いて織られたブーツ。

 オリハルコンの魔術的装飾がなされており、装備した者の瞬発力と防御力を著しく高める。

 獣人専用装備』

『【幻黒髭毛】

 幻と言われた、純粋ながらも黒い金属を用いて織られたスカーフ。

 錆びた魔鉄で一部が着色されており、装備した者の魔法耐性と防御力を著しく高める。

 獣人専用装備』


 お、おお……カッコいいな……!

 基本的な配色は艶のない黒で、籠手とブーツはところごころに金色で光沢のある装飾がされている。しかしそれは慎ましく、上品さを感じさせる。

 スカーフも基本は黒だが、先の方は赤茶けた色になっており、連想するのは、血。まるで歴戦の戦士――いや、永く生きた獣のような荒々しい力強さを表している。


「すげぇ……さ、早速装備装備、っと!」

 テキストとともに出てきた収得するかを尋ねるウィンドウにYesを入力し、インベントリに入った幻黒セット(私命名)を装備する。

 ガチャ装備のいいところは装備するのにレベル制限が無いってのもあるよな!

「ふおぉぉ……カッコいい……」


 光が私に貼り付いたかと思うと、すぐに弾けて、さっき見た幻黒セットが姿を現した。

 ぴったりと吸い付くように私の手足を覆う籠手とブーツは私の意のままに動き、スカーフは私から離れず風になびく。


 服とズボンが初期装備なのはいただけないが、この夜闇のような黒と、ズッシリとした確かな重さが私に大きな期待を与えてくれている。


「そうだ! 確かオプションの操作に全身鏡を呼び出すってやつがあったはず……お、あったあった」

 メイン画面をスイスイと動かし、目の前に大きな一枚鏡を出現させる。


 おお……やっぱ実際に纏ってる姿を見ると違、う…………な?



 漆黒の装備を纏った矢のように鋭い少女。


 しかし、見覚えのない特徴が……ある。




 薄紫色だった頭髪は、右目の上部分の一房と毛先が真っ白に変わり――

 ――右目に、青白い紋章が浮かんでいる……








「……は? え? いやいやいや。え? え? えぇっ?」

 おかしいおかしいおかしい。

 俺が見たときはこんな髪色じゃなかったしギャルみたいなメッシュもしてなかったしそもそも変な紋章なんてなかったぞ!?


 いや、落ち着くんだ私。びーくーる、びーくーるみー。

 異変があったのは右目が中心だ。右目と言えば何があった?


「あの石か……」

 確か……【(いかづち)種石(たねいし)】、だっけ。

 あの石ころが私の綺麗なオメメをスナイプしたのは記憶に新しい。

 痛みがなかったうえに意味わかんない状況になったから忘れてたけどな!

 つまるところあれが原因で……なんかアナウンスもあった気がするな? ていうかフレーバーテキストも出てたな!? うおぉぉぉおおぉぉ……全っ然覚えてねぇ…………検索すんのも忘れてたぞおい……


「なんだったっけ……確かスキルがうんたらって感じだったような……?」

 うぬぬ……ログアウトしちゃったからログ(記録)が見れない……ステータスボードも運営の対応待ちだしな……


 うーん、このゲーム異世界転生ものっぽいところあるらしいし、リアルさ求めすぎてバグってません? なぜこんな私がクソゲな状況になってるのやら……

 もしかして異世界転生ものなのは、運営が実は異世界人で、こんなバグった状況を許容しちゃってるとかそういうこともあるんじゃない?

 だからこんな状況も起こりえると! あー怖いわー異世界人怖いわー。でも対応は良かった。装備バンザイ! ありがとう運営!


「異世界人を怖がる必要なんて――」

 そうそう、異世界人だからって怖がる必要は…………ん?



「――異世界人って、もしかして私のこと?」

運営サイドのお話書きたい気がする!

でもいつ書こうかな!?

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