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お話はダラダラと進んでいく……早くバトりてえ……
強制的に視覚がシャットダウンされて体のコントロールも切られたと思えば、また高所から落ちたみたいな衝撃が来た。
ふふふ……私に何回クソゲーかませば気が済むんですかねえ……?
【雷の種石】が使用されたとかなんとか言ってたけど結局あの石何だったんだ……? てか私の右目大丈夫なのか……?
そんなことを考えてどれくらい経っただろうか。
徐々に体のコントロールが戻ってきた。アイハブコントロール。
「う、うーん……ここはどこだ……?」
寝起きみたいに重い体を起こして見上げれば、頭上にはバカでかい時計が。
いわゆる時計塔ってやつですかね? いやーデカいデカい。
周囲を見渡せば、ここが時計塔前の広場であることが分かった。
そこそこいい雰囲気の広場だ。カップルが待ち合わせの場所に指定しそうな感じと言えば伝わるだろう。もちろん私は利用したことがないが。
ふと、なんだか怪しげな屋台を出しているばあちゃんが目に入った。
というか周りにばあちゃん以外の人影が見当たらなかった。
「ふむ、NPCとの邂逅はあのばあちゃんとなのかな?」
以前言ったように、このゲームは地上に落ちてから一番近い場所にいたNPCとフレンドになることからストーリーが始まる。
プレイヤーの操るキャラクターの名前も、この時NPCに名乗ることで決まるのだそうだ。
名乗った瞬間、自キャラのステータスボード――名前とレベル、各ステータスを表示するARウィンドウが目の前に現れる。これで自キャラの名前が確定したことが分かるというしかけらしい。
フレンドシステムもこの時に解放される仕組みらしいから、基本的にこの――いわゆる邂逅イベントをこなさなければゲームを進めることができない。
故に私はこのばあちゃんとフレンドにならざるを得ない訳だけど、まあ致し方のないことだ。不満は残るけど。大分残るけど。すごく残るけど! 美少女が良かったけど! 致し方のないことなのだ……
にしてもおかしいな? 着陸のときには一番近くにいるNPCが声をかけてくるはずだったんだけど……あのばあちゃんこっちを見てさえいないぞ?
まあ、ばあちゃんだし、気づいてないとかあるのかな?
とりあえず私は屋台のばあちゃんに近づいて声をかけた。
「あのー、すみません」
「……」
……ん? 無反応?
あれか、耳が遠いとかそいういう設定のあるNPCなのか?
クソゲー臭が漂う設定だがそれはいいのだろうか……?
まあいい。もうちょい声のボリュームを上げて……
「あのーっ、すみません!」
「……」
……無反応。
表情もピクリともしない。
どんだけ耳遠いんだこのBBA。
やばいぞ、そろそろ本格的にクソゲー認定せざるを得ないぞこれ。
「あのーーーーっ! すみませーーーーんっ! 聞こえてますかーーーーっ!?」
羞恥なんぞ知らぬ。本気の怒鳴り声でBBAの鼓膜をノックアウトさせにかかる。
その結果――――!
「……」
ただひたすらに、BBAは無反応だった。
「……こんのクソゲーがぁぁぁああああっ!!」
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クールな頭で考えた後、BBAは捨て置き私は聴きこみ、もといナンパ大作戦に踏み込んだ。なんでゲーム内でこんなことしてるんだ私。
内容は至極単純。町で見かけたキャラに片っ端から声をかけるだけだ。
その結果……
「なんだこのクソゲー状態は……」
街の人々にはことごとく無視され、いない筈のないプレイヤーが全く見当たらないという始末。しかも町の外に出ることすら叶わなかった。
あれですか、つまるところこの辺一帯がイベントフィールドになってるわけで、NPCとフレンドにならないと通常のプレイヤーと出会うことも無ければ外に出ることすら許されないと。
その肝心のフレンドは特定のNPCじゃないとダメだと。それ以外は完全に無視される状態になると。特定のってのはおそらく落下地点に一番近かったやつってことだ。
んで、時計塔前で目覚めたとき、あの場にはあのばあちゃんしかNPCはいなかった。
しかし、そのばあちゃんは対象のNPCじゃなかったと。
「……マジで詰んでるんだけどこれどうしたらいいの?」
「話聞く限り、そこは時計塔の町だな」
翌日の学校の昼休みにて開催される新コーナー、教えてタカせんせー。
俺の信条を曲げることになるが、さすがにこの状況はどうしようもない。
リアルとゲームを混同するのは嫌なんだけどなぁ……
「時計塔の町はその名の通りデカい時計塔があるので有名な港町なんだが、一部のプレイヤーに大人気で有名なNPCが住んでる町なんだよ」
「ほうほう?」
一部のプレイヤーに大人気。すなわちそれが意味するところは……
「まあいわばロリっ娘だな」
「やっぱりかー」
「今のだと誤解するかもしれんが、人気なのはロリコンにだけじゃないぞ?」
ロリがロリコン以外にも人気……だと? なんだろう、凄い犯罪臭がするんだが。
いや、ロリコンの時点で犯罪か。
「時計塔の中は図書館になってるらしいんだが、プレイヤーもNPCも蔵書がほとんど読めないらしいんだよ。話によると、文字がかすれちまって読めないんだとさ」
「へーまじか、張りぼてってことか? でも、それとロリがどうつながってるんだ?」
「張りぼてじゃねーんだよ、その本」
「……どゆこと?」
ゲームにおいて、本とかそういう記憶媒体が登場する際、それらは単なる物語の香りづけとして用いられるのみで、大半はただの飾り――張りぼてだ。
中には読める物があったりするが、読めない本なんてそれはただのアイテムだ。
でも、それが張りぼてじゃない……一体どういうことだ?
「おいおい、そんなんでRPGプレイできんのかよ」
「うっせぇ、俺は速く走れればそれでいいんだよ!」
「お前、それでRPG楽しめると本気で思ってんのか?」
む、タカの顔がマジだ。でもゲームなんてそんなもんじゃないのか?
「はあ……まあいい。答えを言うとだな」
「その本、さっき言ってたロリっ娘だけが読めるんだよ」
なん……だと……?
「つまり? 他に人気な層って……」
「考察厨だな。あそこにある本全部が『読める本』ってことなら、FFWの世界観がより深く知れるってことに他ならないしな」
なるほど……つまりそのロリとフレンドになれば本の内容を知ることができるようになると。
「……あれ? でもなんでそんな大事なことがwikiに書いてないんだ?」
「んなもん、フレになれたやつがいないからに決まってるだろ」
「はいぃ?」
フレンドに……なれない?
「なんだ、調べてなかったのか。最初にフレンドになる以外NPCとフレンドになるには、クエストをこなして好感度を上げてかないといけねーんだよ。
んで、そのロリっ娘は好感度上げのクエスト自体が存在してないってわけ。
それに、ロリっ娘は基本時計塔の中か自宅にいるから、着陸場所が時計塔の真上でもない限り広場のばあさんにフレンドのターゲットが移っちまう。
自宅も海岸の端っこにあるから、陸地内だと他の家の住人に引っかかるから海の上にでも落ちない限り反応しないってことさ」
「な、なるほど…………して、なぜその話を俺にしたわけですかタカさん?」
取りあえずギャルゲーの超高難易度隠し攻略対象だってことは分かった。攻略した瞬間ブタ箱行きなのも分かってるけど。
しかし、これと俺のクソゲー問題がどうしても結びつかないんだが……?
「バカ。お前最初、海の上に落ちたって言ってたよな? 時計塔前の広場じゃなくて海の上に落ちたんだよな?」
「お、おう。言ったけど……?」
「はあ……俺言ったよな? 『海の上にでも落ちない限り反応しない』って」
「……!? タ、タカ……それって……」
「ま、仮説どころか推測の域を出ねーが、お前はアンラッキーでクソゲーをやってたんじゃなくて、ラッキーで神ゲーをやってたってことよ」
「おぉ、おお……っ」
「……ほんとに神ゲーなのか?」
「しつこいなお前!」
未だ名無しの主人公キャラ「もっと速く走りてえ……」
未だストック無し倉里小悠「もっと速く書きてえ……」




