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幻想駆ける雷獣の願いごと  作者: 倉里小悠
Starting the Fantasia
4/6

turning

「うーん……やっぱ着陸で死んだやつはいても絶海の孤島(笑)に落ちたやつは居ねえなあ」

 俺の中では世紀のクソゲーと化している【Fantasia of the Freedom World】だが、着陸で死ぬというのは実は事前に知っていたことだった。

 主要な街とかに落ちることができれば某有名監督有名スタジオのアニメ映画ばりの素敵な着地ができるが、メートル単位でランダムな座標設定をされるため大半は複雑骨折からゲームが始まるらしい。飛行石標準装備にしろよ。


 余談だが、粉砕骨折の直後にすぐ近くにいるNPCが介抱してくれて、そのNPCとフレンドになるところから物語が始まるんだそうだ。

 一部のプレイヤーにはこのNPCが美少女になるまでリセマラするなんていう猛者もいるそうな。


「……海に落ちたやつも居ないのな」

 wikiによると、このゲームの着陸はランダムな『陸の上』の座標を指定するらしい。

 つまるところ俺は、天文学的な確率であの小さな島とも言えないような小岩に座標が指定されてしまったと。ほぼ海の上だから介抱してくれるNPCもいないと!

「そんな悲しい確率引くくらいだったら宝くじ当たってくれよ……」

 以前魔が差してついつい買ってしまった宝くじを思い出し隈取りばりの深いシワを顔に刻みつつ、俺はもう一度VR装置を起動する。


「ま、まあ、俺の運が悪かっただけだ。うん、そうに違いない。じゃなかったら神ゲーなんて言われるわけがないからな!」


『生体認証完了。バイタルチェック、異常なし。VRプログラムチェック、異常なし。ゲーミングシステムスタート。【Fantasia of the Freedom World】起動します』


 『本当に神ゲーなら運が悪くてもこうはならないんだがな!』という心の声は胸の奥に押し込んでおいた。


□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆


「それで、この石は結局何なんだ?」

 この宙に浮かぶ発光する石がどういうものなのかは一切不明だ。

 この場所について、wikiもスレも手当たり次第に調べたが確固たる情報は全くゲットできなかった。

 まあ当たり前っちゃ当たり前だけどね。独占されてるだのなんだので未出の情報だってあるし、そもそも検索するときにこの場所をどう表現するのかも分からなかった。

 海上の小岩レベルの小さな島の洞窟についてなんて調べても出るわけがない。

「やっぱり、なんかアイテムとか拾ってフレーバーテキスト読まないと全然見当つかないなあ……」


 このゲームにおいて、アイテムには2つの情報が付加されている。

 1つは鑑定情報。プレイヤーやNPCが習得できるスキル<鑑定>を用いることで分かるアイテムの具体的かつ詳細な情報だ。見れば使い方からその効果まで様々なことが一気にわかる。

 もう1つはフレーバーテキスト。スキルも何も使わなくても見ることのできる、文字通り『香りづけ』程度の説明文だ。


 私は当然<鑑定>なんていう便利スキルは持っていない。さっき初ログインした正真正銘の初心者だからね!

 そんなわけで、フレーバーテキストを読む以外にこの状況で情報を得る手段は無い。


 しかし、フレーバーテキストだって読むのに条件がある。

 ……アイテムに直に触らなければいけないのだ。

 一見簡単そうで、誰にでもできそうな条件だ。しかし、思い出してほしい。

 この洞窟、アイテムっぽいのは私の目の前にある()()しかないことを……


 目の前にあるのは、行き止まりの洞窟に浮かび発光する石が1つ。

 バチバチとスパークすることで周囲に光をもたらす謎の石。

 それ以外に、アイテムらしきものは見当たらない。


 ……めっちゃ危険そうなイメージなんだけど。

 これ絶対ヤバいやつでしょ。雷とかでしか見ないあの青白い火花がめっちゃ見えるんだけど? え、ほんとこれ何なの?

 これ触ったら即死しちゃう感じじゃない?

 何? また私クソゲーかまされるわけ?

 いや待て、ここでクソゲーに屈してしまっては大衆の認める神ゲーを味わうことが叶わなくなってしまう! ていうか私の夢叶えられるのこのゲームしかないし!

 

 ……ま、まあね? ここで死んでもここでまたリスポーンするだけだし?

 諦めて触ってやらんこともなくはなくなくない……かも?

 いやでもまたクソゲーに殺されるのは…………


「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ…………ぬぬぬぇええええいっ!! 南無三! いいよ! やってやるよ! 触ってやればいいんだろこのクソゲーめ!」

 覚悟を決めて、いざ――


「――タァァアアッチ!!」




 ピロン

『【(いかずち)の種石】

 雷の力を内包する石。発芽すれば雷が汝を味方する』




 石に触れた手と、その石のフレーバーテキスト、そして私自身の状態を確認。

 ……無事にフレーバーテキストを出すことに成功した模様。






「……勝ったああああ!! うおおおお死んでない! 私死んでなあああい!」

 神はまだ私を見捨てていなかったぞっ!

 ただアイテムのテキスト出すためだけになんで命の覚悟してたのか知らないけど勝ったぞ! 勝ってやったぞ! 何に勝ったのか知らないけど!


「バンザアアアアアアアアアイ!!」

 己の生の喜び。それは私に両手を振り上げさせ、バンザイをさせた。

 ――手の先に、まだバチバチ言ってる【雷の種石】があったというのに。


 周囲に満ちていた光の方向が傾き、私の影が急速に後方から縮んでいく。

 そして――


 キンッ

「あ、」


 ――甲高い音と共に種石が私めがけて飛んできた。

 バンザイの勢いでカッと見開いた目は、高速で飛んできた石に反応できず、私の右目は()で種石と衝突することとなった。


 端的に言えば、振り上げた石がすっぽ抜けて天井で反射して私の右目をスナイプした。







 青白い光を伴い、洞窟は塗りつぶされた。














『【雷の種石】が使用されました。使用者に、ユニークスキル〈雷(発芽前)〉が付与されました』

『条件式の起動を確認。比較を開始――条件合致、魔法陣を起動します』









□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆□◆



 わたしの名前はユウって言います。

 ここニフタ公爵領海岸部にある時計塔の街、エルザに住む元気な女の子です!

 趣味は読書で、図書館でもある時計塔に通うのがわたしの1番の楽しみです。

 ちっちゃい背丈と幼い顔立ちからいじめられちゃって、友達はあんまりいないけど本があればわたしはいつでも幸せです!


「お、ユウちゃんじゃねえか。どうだ、リンゴ買うか? 採れたてだから瑞々しくてうまいぞう」

「わぁっ、真っ赤で美味しそうっ。いくらですか?」

「ユウちゃんはお得意様だからな。特別に2J(ジュエル)にまけてやるよ!」

「おじさんありがとう! それじゃあこれ1つください!」

「まいどあり!」

 時計塔に行く途中にある果物屋さんのおじさんはいつもわたしに優しいです。優しくしてくれるお礼にリンゴとか果物を買っていたら、いつの間にか常連さんになってしまいました。

 わたしはいつも、ここで果物を買って、時計塔に着いたら広場でベンチに座って買った果物を食べます。時計塔の中は飲食禁止なので悪くなる前に食べちゃうのです。



 おじさんにお礼を言った後、わたしは時計塔前の広場でいつものベンチに座りました。

「うーんっ、いいお天気! こんな日は、お外で本を読んでもいいよね。お外で読むならどんな本がいいかな……」

 今日読む本は何にしようか、とか。あの本はとっても面白かったな、とか。いろいろ考えながらぼーっと時計塔を見上げるのも、わたしの習慣です。

 いつもなら、時計の長針がXII(12)を指したらリンゴを食べて時計塔の中に入ります。

 でも、今日はとても不思議なことが起こりました。


「あれ? 針が、歪んでる……?」

 ちょうど長針がXIIを指したとき、長針がぐにゃぐにゃと波打ち始めたのです。

 歪みの中心からは、雷みたいな青白い光が沢山、出ては消えていきます。

「! 針じゃなくて、空間が歪んでる……の?」

 どこかで読んだことがあります。魔法には、空間に作用する魔法もあるって――



 バチバチバチバチィッ!

「――う、嘘……雷の、魔法陣…………!?」

 大きな音とともに、青白い火花で形作られた魔法陣が、空中に描かれました。



 しばらくすると、魔法陣の中心から、1つの影が落ちました。

 影を落とした魔法陣は、仕事を終えたかのように、わたしの夢だったかのように、薄れていきながら消えてしまいました。


「な、何だったの……?」

 ふと、周りを見渡すと、古本屋の屋台のおばあさんと目が合いました。

 おばあさんは優しく笑うと、手を振ってくれました。

「! 気づいて、ないの……?」

 わたしだけにしか、見えなかった……?


 わたしは怖くなって、その場から駆け出してしまいました。

倉里小悠「目ん玉スナイプとかどんだけ腕がいいスナイパー雇ったんすか」

種石先輩「……」

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