エピローグ
「そんなこんなで本当に嫌気がさしたから、何が何でも特別待遇を利用してやると思って二年間頑張ったよ。で、選手生活に戻ろうって時に今の、この東京の会社の陸上部が声を掛けてくれたから、大学ではなくそっちに行って今に至るって感じだよ。一応機密事項だから、誰にも言うなよ?」
それにしても参考にならなかっただろ、と苦笑する剛志に息子は茫然としていた。息子から進路についての相談を受け、父さんの時はどうしたのかと聞かれたので渋々話しはしたが、無理もない、こんな非現実的な話など信じられないだろう。
息子が薄っすらと笑みを浮かべ、頬をひきつらせながら言い淀んだ。剛志が微笑んで息子に話すよう促すと、息子はたどたどしく話し出した。
「自衛隊から、誘いを受けたんだ。スカウトの人が言うには『仮に変形しなければならないような事態が起こったとしても、あの飯田剛志の息子である君ならば新たな英雄となってくれるだろうと期待している』って言われたんだけど、どう思う……?」
剛志は息を呑んで目を見開き、しばらくして開いていた目を細めて苦虫を噛み潰したような顔をした。
「……都市伝説じゃなくて本当だったから、訓練も一緒だったのか」
そして剛志は片手を額に宛てがうと、嗚呼と呻いてがくりと頭を垂れたのだった。
もちろんこのお話はフィクションですが、一部分、作者の実体験を元にしております。
どの部分がホンモノかは敢えて秘密ということで…。